もく窓

~良い映画と究極の手抜き料理を探して~  

荒地の恋

2008年02月25日 | 

         ねじめ正一  文藝春秋社刊 2007年

『荒地』は1947年に鮎川信夫、田村隆一、中桐雅夫、北村太郎らによって刊行された雑誌で、T・S・エリオットの詩にちなんで名付けられたものだそうです。
荒地の恋、荒涼とした嵐が丘の舞台を連想するような魅惑的な題ですね。

 この作品は、『荒地』のメンバーの一人、北村太郎の後半生を描いています。
普通に生きてきた人が、50歳を超えてから人妻と恋に落ち、妻子を捨てます。
それも相手は親友(田村隆一)の妻です。あ~、それでその後は末長く幸せに暮らしたというならまだしも、、、。人生を大きく狂わせてゆくんです。
先日観た映画コープスブライドのような若い人の恋愛ならば三角関係も哀しくも美しく感じますが、いろいろなものを背負いこんでいる年代の三角関係はやっかいなうえに見苦しいことこのうえないです。周りに深刻な波紋を広げます。読んで気が重くなりました。亭主を惚れ直すならともかく、この年になって恋なぞしたくないものだと、つくづく思わせる力作でした

* 北村太郎(1922~92年) 旧制府立三商時代に詩を始め、東大仏文科卒。29歳の時、最初の妻と息子を海難事故で亡くし、その詩には死の影が漂う作品が多い。詩集に『犬の時代』『笑いの成功』など。

* 田村隆一(1923~98年) 明治大卒。三商時代は北村と同級生だった。詩集に『四千の日と夜』『言葉のない世界』など。エッセーの名手で、生涯5度の結婚も経験した。

* T・S・エリオット 1888年ミズーリ州で生まれる。27歳で結婚。58歳の時、妻が精神病院で衰弱死。68歳で38才年下の女性と再婚。1965年、77歳で逝去。
1922年、代表作・長詩『荒地』(The Waste Land)発表。1948年、ノーベル賞受賞。
ミュージカル「キャッツ」の原作はエリオットの「Old Possum's Book of Practical Cats」だそうです。

     
          77才時の北村太郎(左)と田村隆一
           ↑ 70才で亡くなってますので、67才の間違いでした m(__)m


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   『うたの言葉』  北村太郎
 秋の夜の商店街では、水菓子をあきなう店が格別うつくしい。ナシ、ブドウ、モモ、リンゴなどが山と積まれた店先は、人工光線のせいもあろうが、豊かな色彩にあふれ、道行く人の目をひかないではいない。
 下の部屋に往む一家の奥さんから、先だってイチジクの実をいただいた。庭の片隅に植わっている木になったのである。少し冷蔵庫に入れておいてから食べたが、たいそう甘くておいしかった。子どものころ郊外に住んでいた家にもイチジクがあって、そのとき以来だったから、なんというか、この青にがいところもある果肉に、一瞬、時間を味わう思いがした。

    「心のなかで」  野村英夫
   陽を受けた果実が熟されてゆくやうに
   心のなかで人生が熟されてくれるといい。
   そうして街かどをゆく人達の
   花のやうな姿が
   それぞれの屋根の下に折り込まれる
   人生のからくりと祝福とが
   一つ残らず正しく読み取れてくれるといい。
   さうして今まで微かだったものの形が
   教会の塔のやうに
   空を切ってはっきり見えてくれるといい。
   さうして淀んでゐた繰り言が
   歌のやうに明るく
   金のやうに重たくなってくれるといい。

 四季派の詩人の中で最年少の野村は一九四八年(昭和二十三年)、持病の肺結核で死んだ。行年三十一歳。二十六歳のとき、カトリックの洗礼を受けている。
 ここにうたわれているのは四つの願いである。それにしてもなんという控えめな口調だろう。「・・・くれるといい」の繰り返しに、わたくしは願いよりも諦めを感じてしまうくらいだ。しかし、この青年詩人が願いや諦めの彼方を見ていたのは終わりの三行で分かる。「歌のやうに明るく」「金のやうに重たく」と、野村英夫は言葉自体の実相をつかんでしまったのである。

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私はこの本を読むまで北村太郎が詩人であることを知らなくて、文学者か批評家なのかと思っていました。
上記↑は新聞の古い切り抜きです。『うたの言葉』と題して、北村太郎が野村英夫の詩「心のなかで」を解説したものです。
北村太郎の「願いよりも諦めを感じる」という解説が好きでした。詩の透明感が増すように感じられて何度も繰り返し読んでいました。あ~、まさか北村太郎がこういう方だったとは、、、
北村太郎の人生を知ってから読み直すと、野村の詩の透明感の奥にある生への願いと死への恐れとを解説していたのですね。




コープスブライド

2008年02月18日 | 映画 TV・DVD
 お気に入り度:金 TIM BURTON'S CORPSE BRIDE   2005年
映像が美しいです。主人公ビクターが画帳を広げ羽ペンを使って蝶の写生をするシーンから映画は始まります。部屋の壁にはビクターが幼い時の写真が飾ってあり犬のスクラップスと一緒に写っています。ビクターは蝶の脚と頭部を別個に拡大して描いています。描き終わるとガラスの覆いを開けて蝶を逃がしてあげます。蝶は窓から外へ飛び立ち、沈んだ青色の静まり返った街の中を彷徨います。このお話の時代設定や登場人物をわずかな時間の中で上手く紹介してゆきます。
この作品はCGではなく人形をコマ撮りして出来ているのだそうです。特典映像によると、主役のビクターとエミリーは14体ずつ作ったそうです。非常に精巧に出来ていて隠れたところのネジを回すと口元が微笑んだり眉を寄せたりしていました。エミリーのベールやドレスの裾が風になびく部分もCGではなく、ワイヤーで釣ったり風を当てたりして撮影したものだそうです。 また、人形だけでなく、この作品は声優陣がジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム=カーター、エミリー・ワトソン、クリストファー・リー等々、とても豪華ですし、役にピッタリと合っていて楽しめますヨ~。
ちょっと不気味ですが楽しく美しいお話に音楽も良かったです。ラストの美しい映像とエミリーの潔さに泣きました

この映画は映画館で観たかったですネ。たしか、娘に誘われたのに断ったんだっけ、、、ガイコツが出るアニメなんてと言って、、、

マーラー交響曲第1番

2008年02月15日 | 音楽
ここしばらく何だか映画を楽しむ気力がありませんでした。でも音楽は良いですね~。それも歌曲よりも器楽曲が良いですネ。元気な時は歌詞の内容も楽しめますが、気力が無いときは歌詞が煩わしく感じられてしまいました。
マーラーの交響曲1番はとても気に入って何度も聴きました。朝の散歩を思わせる第1楽章、爽やかですね~。夜明けの空が白み始めるころに散歩に出て朝露の道を辿ると、早起きの小鳥が鳴き始め、やがて太陽が上ります。朝一番の光が射す瞬間を金管が奏でると世界は生き生きと輝き始め、、、あ~、いいですネ~、元気が出てきます~♪ また、民族的な感じのする3楽章も大好きです。家にある一枚では飽き足らず図書館やTUTAYAで借りてみました。一つの曲が指揮者によって本当に味わいが変わるんですね~。オーケストラの音も録音にもよるのでしょうが色々あって楽しめました。

聴いた順に、
☆ベルナルド・ハイティンク指揮/ベルリンフィル 1987年録音
録音がとても良く、緊張感漂う澄んだ美しい演奏だと思いました。

☆ブルーノ・ワルター指揮/コロンビア交響楽団 1961年録音
歴史を感じさせるような厚みのある演奏というのでしょうか。古いのでデジタル録音ではないですが、とても迫力のある演奏でした。

☆レナード・バーンスタイン指揮/ニューヨークフィルハーモニック 1966年録音
微妙な間というか1/f揺らぎのような演奏に最初は戸惑いましたが、この揺らぐような感じが3楽章ではとても良かったです。屋根のうえのバイオリン弾きの黒い衣装のユダヤ人が踊りだしそうな感じです。

☆クルト・マズア指揮/ニューヨークフィルハーモニック 1992年録音
ライブ録音なので音はちょっと落ちますが、ライブの雰囲気は楽しめます。マーラーの歌曲も入っていました。

☆エリノフ・インバル指揮/フィルハーモニアオーケストラ  2007年 東京芸術劇場(NHK放送)
そつなく無難にまとめた演奏でした。などと、5曲目ともなると生意気な感想です


ところで、マーラーの交響曲6番を昨日ダニエル・ハーディングが東京フィルで振ったそうです。あのしつこい6番もダニエル君なら聴きたかったな、、。

当たりました♪

2008年02月11日 | 雑記
さきほど、私宛の小さな宅急便の箱が届きました。
開けてみたら懸賞で柚子セットが当たりでした~
柚子セット目当てに懸賞に応募した覚えはないので、これは3等賞くらいでしょうか。
特賞はきっと温泉旅行だったのかなと思います。
ともかく柚子は大好きですし、当たるって嬉しいです。
ビン類が割れないようにクッション材の代わりに柚子のイラスト付きのタオルが入っていました♪

3年くらい前にハガキを40枚買いました。
旅行や美味しそうなケーキが目につくとハガキを時々出して、先日最後の一枚を使いした。今まで何も当たらなかったから、葉書40枚で2千円損しちゃったなぁとボヤいていたところへ、この柚子セットです♪♪ ちょうど葉書代の元が取れたというところでしょうか。
現金なもので、またハガキを買ってこようと思ってます
年賀葉書も切手しか当たったことのない私が懸賞に時々応募するのは、、、一度大当たりが出たことがあるんです。
ン十年前、くじ運は全くないので懸賞に応募したことはなかったのですが、夕刊に載っていた「キャリー」という映画の懸賞「フランスワイン街道の旅8日間」がたまたま目に止まり、手元に葉書があったので相方と私の名前で1枚ずつ出したのです。
出したことさえ忘れていた頃、に当選の知らせの電話があり驚きました~。電話から2日後に大きな封筒が届くまで信じられない気持でした。と言っても、私が当たったわけではなく、相方が当たったのですが。ハガキは2枚とも私が書いて出したのに。
「キャリー」のこの懸賞は応募者がとても少なかったようで、私にも3等賞の小さな包みが届きました。中身はカセットテープで、早速聴いてみると、、、ヒタヒタという足音と悲鳴が入っておりました。すぐに捨てました。
「キャリー」という映画は観たことがありませんが、ブライアン・デ・パルマ監督の恐怖映画の古典のような作品らしいです。カセットテープは捨てずに取っておけば価値が出たかも、と今さら惜しんでいます。
ン十年に一度、三等賞しか当たらない私です。

絵日記

2008年02月06日 | 日記

今日、「母べえ」を観に行きました。
時間ギリギリに着いたので、予告が始まっていました。
最前列の通路を身をかがめてサササッと通り抜けようとした途端!!!
見事にバッタリ倒れました。 まさか、段差があったとは、、、
こんなに派手にバッタンと倒れたのは子供の時以来かも。
しかも衆目集まるところで
暗かったのがせめてもの慰めです。
予告編も映画ファンには楽しみなものです。
他の人のお邪魔にならないように、これからは映画館へはゆとりを持って出掛けよう。
忘れないようにPCペイントでお絵かきしました。
40分もかけて描いたので下手っぴだけどUPしとこう。
スクリーンにC・ブランシェットを描きたかったのですが、何回書き直しても美しい眼とノーブルな鼻と意志の強そうな口元を描くことが出来ず、直線と楕円で画ける王冠にしました。マウスで画くのは難しいことが良~く分かりました。スクリーンのC・ブランシェットに見惚れたのが転ぶ一因でしたので、魅力的な彼女を描きたかったのですが、、。


映画「母べえ」は、
身体のあちこちの痛みも手伝って泣き通しでした。
丁寧に作られたユーモアもあるとても良い作品でした。
息子や娘に見せたいと思いました。
凛とした小百合さん、とても素敵でした。
足元にもおよばない、足元もおぼつかない私でした。