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「あの日、マーラーが」藤谷 治(2015朝日新聞社版)

2019-08-28 12:38:58 | 音楽夜話(クラシック)
2011年3月11日14:46分 東日本大震災は起こった。

「あの日、マーラーが」藤谷 治(2015朝日新聞社版)

仮名になっているが、新日本フィルハーモニー交響楽団と、
指揮はダニエル・ハーディング。墨田トリフォニー・ホール。
演目:マーラー 交響曲第5番嬰ハ短調

この日、演奏会は開かれ105人の聴衆はこの演奏を聴いた。
当日の事が、読み進んでいくと、作品とは別に頭に浮かんでくる。
記憶のふちをたどって浮かび上がってくる。

鮮烈なのは、夜間の3桁国道を、自衛隊の車が何台も列を作って、
現地に災害派遣で繰り出しているところを今でも鮮明に思い出してくる。
作品のイメージと、現実に起こったであろうイメージがダブルで
浮かび上がり、そこにいる105人の聴衆の方がたの気持ちとは別に、
そこに行かなければならなかった理由が何かあると思った。

シノーポリのマーラーの5番は、以前自分の中ではマストな1枚だった。
作品の中で八木雪乃という女性も、シノーポリのマーラーを聴いていた。
小説であっても親近感が湧いたりする。他の演奏家ではだめなのだ。

NHKのドキュメンタリーで3.11の事を扱ったものがあった。
たぶん翌年再放送されたが、それ以降されたかどうか不明で、オンデマンドで
見られるのか、NHKのライブラリーならみられるのか不明。
トリフォニ―ホールも何度か行ったことあるし、なにか他人事とは思えないものが
有ったりする。不思議な環境に置かれた中での読書だった。

出てくる登場人物は個人的な背景を持ち、この会場に集まり別れていく。
その中で、音楽が演奏されそれを享受してまた昨日と違う日常に帰っていく。
淡々とした語り口に、物語の奥深さを感じる。氷山の一角なのだろう。
考えなければならないこと。行動しなくてはいけないこと。
改めて考えさせられることもあった。事実と登場人物のフィクションと
混ざりあって進む。中々な力作だと思うが、テーマだテーマだけに、
はっぴーえんどというわけにはいかないので、混とんとした気持ちで
本を置いた。

震災はまだ終わってはいない。


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