宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

絶海の孤島のように離れた銀河“DDO 190”

2012年08月22日 | 宇宙 space
数十億個以下の恒星からなる小さな銀河を矮小銀河といいます。

“DDO 190”は、
渦巻銀河や楕円銀河などのように明確な構造を持っていないので、
矮小不規則銀河に分類されています。
NASAのハッブル宇宙望遠鏡がとらえた矮小銀河“DDO 190”

不規則銀河はガスやチリを非常に多く含み、
HII領域が数多く存在するなど、星形成が活発に行われている場合が多いんですねー

HII領域とは、電離された水素が光を放っている天体のことで、
直径数百光年に達する大きさを持っていて、内部で星の形成が行われています。

このガス雲の中で生れた若く高温の青い星が、大量の紫外線を放出して、
周囲にある星雲を電離することで光っているんですねー

DDO 190”の周辺部には赤みがかった年老いた星が多いのですが、
中心部には青く輝く若い星が密集していて、
画像の下寄りには多くの若い星が見ることができます。

太陽系から約900万光年の位置にある“DDO 190”は、
結びつきのゆるいM94銀河群の一部と考えられていて、
天の川銀河が属する局部銀河群ともそれほど離れていないんですねー

ただ銀河群に属すると言っても、
一番近い銀河“DDO 187”とは300万光年も離れているんだとか。

局部銀河群では、太陽系から大マゼラン雲までが16万光年、小マゼラン雲までは20万光年、
そして巨大なアンドロメダ銀河まででも254万光年なんですねー

“DDO 190”はM94銀河群のなかで“絶海の孤島”のような銀河といえますね。

“キュリオシティ”を上空から見た

2012年08月20日 | 火星の探査
2006年から火星軌道を周回しているNASAの探査機“マーズ・リコナサンス・オービーター”が、上空から火星の地表を撮影しました。

ただ、地表を撮影したのではなくて、この画像には8月6日に着陸した探査車“キュリオシティ”が写っているんですねー
左下の青い箇所に“キュリオシティ”が写っていて、青く見えるのは着陸時の噴射痕みたいです。
色調整されているので目立っているのですが、実際は灰色に近いそうです。

この画像は地表から60度傾いた角度から撮影されていて、
数日中に撮影される真上に近い角度からのものと合わせれば、地形の立体画像を得ることができるようです。

この着陸地周辺は直径154キロの“ゲール・クレーター”の中なんですねー
観測カメラのテストや探査モードへの移行など一連の準備が終われば、移動や回転などのドライブ機能のテストが行われる予定です。
その後“キュリオシティ”はここから南東方向にある、クレーター中央の“マウント・シャープ”を目指すことになります。
いよいよ探査の始まりですね。

史上最速のコロナ

2012年08月19日 | 宇宙 space
NASAの太陽観測衛星“STEREO”が、
史上最速レベルの速さで太陽から飛び出す“コロナ質量放出”をとらえました。
太陽観測衛星“STEREO”がとらえた“コロナ質量放出”の瞬間。
右側に見えるのが史上最高速の“コロナ質量放出”。

秒速2900~3500キロという速さは、“STEREO”が2006年に観測を始めて以来最速。
このような稀な宇宙天気の急変は、その原因と影響を調べる絶好チャンスになります。

“STEREO”ミッションは、地球とは異なった角度から太陽をとらえるため、
特別な軌道を回る2機の観測衛星で構成されています。

“コロナ質量放出”はその速度でランク付けされ、今回は最速レベルなのでER。
つまり非常にまれ(Extremely Rare)なものとして分類されるようです。

太陽から約1億4000万キロ離れた“STEREO-A”は、
“コロナ質量放出”の直撃を受けたので速度を測定することが出来たようです。

そして約17時間後には“コロナ質量放出”の勢いが、秒速約1000キロに落ちほぼ消えました。

“STEREO”の測定から、
この“コロナ質量放出”は通常の約4倍もの強い磁場を持っていたことが分かっています。

強力な磁場を伴う“コロナ質量放出”が地球の近くを通ると“地磁気嵐”と呼ばれる現象が起き、
地球の磁場が撹乱され、人工衛星にトラブルが発生する可能性が高まるんですねー
深刻な場合は地上の電力供給システムにも問題が生じるようです。

磁場はテスラという単位で測定されます。
今回の“コロナ質量放出”の場合は約80ナノテスラで、
“ハロウィーン嵐”と呼ばれる2003年10月の巨大磁気嵐を起こした“コロナ質量放出”よりも、
強かったんですねー

でも、1859年の“キャリントン・イバント”に比べればまだ弱いそうです。

このときは電報局で火災が発生したとか、
新聞が読めるほど明るいオーロラが発生したなどエピソードが残っていて、
史上最大の磁場嵐とされています。

さらに“STEREO”は“コロナ質量放出”の磁場の向きを検知することもできるんですねー

地球磁場と逆の南向きの磁場は地磁気嵐を起こしやすいので、
これは地球にとっても重要な情報となります。
今回の“コロナ質量放出”では、
南向きの磁場が40ナノテスラという強力な磁気を数時間維持していたようです。

また今回の“コロナ質量放出”は、太陽から“高速陽子放出”も引き起こしています。
“コロナ質量放出”が始まってから1時間後には、
大量の荷電粒子が“STEREO”にぶつかっているんですねー

このような太陽からのエネルギー粒子が、地球にたどり着いたものが“太陽放射嵐”と呼ばれ、
航空機の通信などに使われる高周波数通信に障害を引き起こしたります。

“コロナ質量放出”と同様に、今回発生した“高速陽子放出”もSTEREO観測史上最も強いものでした。
“コロナ質量放出”は地球からあさっての方向に向かったのですが、
“高速陽子放出”は弱まっていたものの地球に向かって来たんですねー

NASAでは今回の太陽活動が発生する3週間前から、発生元となった活動領域に注目していました。

AR-1520と呼ばれる活動領域で、
以前の観測では太陽の右縁から見えなくなる直前に4回もの“コロナ質量放出”が発生しています。
すでに何回も“コロナ質量放出”が発生している場所なのに、
強度が増し続けて今回の巨大爆発が起こったんですねー
この領域に何かあるのか? とても興味深い研究対象になりますね。

STEREOは太陽を常時観測している数々の衛星の1つです。
観測では活発な太陽だけでなく、静かな太陽からも興味深いデータが得られています。

太陽の11年周期の活動サイクルのうち、次の太陽極大期と考えられている2013年までに、
様々な宇宙天気の変化が起こると予想されているんですねー
それらを研究することで、太陽が太陽系全体及ぼす影響について新しい発見があるかもしれません。

これまでになく大量の星が作られる場所

2012年08月18日 | 宇宙 space
地球から57億年離れた場所に、非常に明るい銀河団が発見されました。

南天の“ほうおう座(英名Phoenix)”にあるので“フェニックス銀河団”と名付けられました。

銀河団とは、数百の銀河が重力によって結びついている集団のことです。
今回発見された“フェニックス銀河団”は、これまで知られている銀河団の中では最も質量が大きいんですねー
銀河系を含む銀河群の総質量も、“フェニックス銀河団”の0.1%程度にしかならないそうです。

まぁー 銀河系が属する集団は銀河が30ほどしかなく規模が違いすぎますね。 
(銀河系は銀河団ではなく、銀河群と呼ばれる集団に属しています。)

そして、もう1つの特徴がこの銀河団から、史上最も明るいX線が観測されていることです。

これは、“フェニックス銀河団”の中心にある銀河が、活発に恒星を生み出す“スターバースト期”にあるからで、通常の1000倍近いペースで恒星を生み出しているようです。

NASAのX線観測衛星“チャンドラ”や、アメリカ国立科学財団の“南極点望遠鏡”、その他に地上と軌道上を合わせて、8つの望遠鏡からデータを得て分析したところ、この中心にある銀河が年に740個以上もの恒星を生み出していることが分かりました。
これまで銀河団の中心銀河による、恒星を生み出すペースの記録は年に約150個なので驚異的な数です。

銀河団の中心にある銀河は、ふつうその銀河団の中で最も古いんですねー
(特徴的な赤い光を放っているのが古い証拠になります。)
これは恒星を生み出す年齢を、はるかに過ぎていることを意味します。
なので今回の発見は、これまでの有力な説と合わない予想外のものになってしまいます。

恒星の爆発により放出されたガスは、時とともに自然に冷え迅速に固体化します。
そして星を形成するのに十分な低温のガスの流れが生み出されるはずです。

でも、これまでそのような現象が観測されていないんですねー
なぜかと言うと、たいていの場合には銀河の中心にある超大質量ブラックフォールから放出される物質のジェットが周囲のガスを加熱し、大量の恒星が誕生できる温度にまで冷えることを妨げているからなんです。





“フェニックス銀河団”の
中心にある銀河(想像図)
枠内はX線・可視光・紫外線で
見た“フェニックス銀河団”



でも“フェニックス銀河団”では何らかの理由でガスが加熱されないので、たくさんの恒星が生み出されています。

ひょっとすると、ブラックホールが十分な熱をもたらすほど強力になる前の段階なのかもしれません。
この段階が、ほんの1億年ほどの短い期間しか続かないとしたら…
“フェニックス銀河団”が特殊というより、短い“スターバースト期”にある銀河団を発見できたことに過ぎないんですよねー

今の“フェニックス銀河団”は通常の銀河の進化の中で、これまで知られていなかった重要な段階のひとコマなのかもしれません。

この説が正しいのかはまだ分かりませんが、
“フェニックス銀河団”は、いろいろな銀河団の進化を解明する手掛かりになるのは間違いないようです。

“活動銀河核”に違ったタイプ

2012年08月15日 | 宇宙 space
天の川銀河を含めて、ほとんどの銀河の中心には大質量ブラックホールが存在します。

物質がブラックホールに落下するとき、物質は角運動量を持つため降着円盤と呼ばれる扁平な円盤をブラックホールの周囲に作るんですねー

そして降着円盤内のガスの摩擦熱によって、落下するガスは電離してプラズマへ
この電離したガスは回転することで強力な磁場が作られ、降着円盤からは荷電粒子のジェット噴射がしばしば観測されます。

こうした“活動銀河核”は、観測のうえで2つのタイプに分けることができます。
チリの放射を伴い明るく高速・高温ガスが見られるタイプと、ほどほどの勢いの(あるいは全く勢いがない)ガスを持つチリ吸収が見られるタイプです。

“活動銀河核”の統一モデルでは、この2種類の見かけ上の違いは、地球から見た銀河の角度によるものとされています。

1つ目のタイプは、銀河が正面を向いていて高速ガスがはっきり見える場合で、
2つ目のタイプは、横向の銀河で銀河中心部からの光がその周囲の物質ごしに見える場合です。

でも、こうした違いは全てのケースに当てはまるのか?

ハーバード・スミソニアン天体物理学研究所では、赤外線吸収の要因となる中心核周囲の物質が、
全体に均一で高密度の小さい環状構造なのか、希薄な物質が大きく広がっているのか、それとも高密度な塊が散らばっているのかを詳しく探ることにしたんですねー

NASAの赤外線天文衛星“スピッツァー”の赤外線分光装置のデータから、比較的近くにある20個の“活動銀河”の星生成とチリ吸収を調べられました。
中心に活動的な大質量ブラックホールを持つ銀河“NGC 1068”


すると、そのうちの一部で、光の吸収の要因となるチリが環状構造よりも大きく広がった分布をしていることが分かりました。

これは統一モデルに当てはまらないケースが存在することを意味するんですねー
でも、これらの“活動銀河核”では非常に活発な星生成が行われています。

まぁー このような“活動銀河核”は見過ごされやすいのと、まだサンプル数が少ないので何とも言えないのですが…

とにかく中心核の放射を遮る物質(チリ)の分布が、
これまでの考えと異なっている“活動銀河核”が存在することが分かったということです。
さらに調査を行い、サンプルを集める必要がありますね。