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モバライダー mobarider

材料を持って行かれて星の形成を止めてしまった銀河、原因は合体というゆっくりとしたプロセスだった

2022年09月28日 | 銀河・銀河団
70億光年彼方に、内部で新たな星の誕生が止まった銀河があります。
この銀河をアルマ望遠鏡で観測してみると、別の銀河と衝突合体したことが分かったんですねー
どうやら、この衝突合体で星の材料となるガスが放り出されてしまったようです。

星の材料となる材料がなくなってしまった銀河

私たちの天の川銀河では、今でも新しい恒星が生まれています。

でも、星の形成が止まってしまった銀河もあるんですねー

原因として考えられるのは、星の材料となるガスが無くってしまったこと。
どうして星の材料は無くなってしまったのでしょうか?
このことについては様々な議論があります。

“うしかい座”の方向約70億光年の彼方に位置する大質量銀河“SDSS J1448+1010”も、燃料切れとなってしまった銀河の1つです。

“SDSS J1448+1010”は別の銀河との衝突合体を経たばかりで、その際に重力によって引っ張り出されたガスや星が尾を形成していました。
その尾の長さは64kpc(約21万光年)にもなります。

今回の研究では、テキサスA&M大学の研究チームがハッブル宇宙望遠鏡とアルマ望遠鏡を使って“SDSS J1448+1010”を観測。
すると、この尾に大量のガスを持って行かれたことが分かってきます。
“うしかい座”の方向約70億光年の彼方に位置する大質量銀河“SDSS J1448+1010”。ハッブル宇宙望遠鏡観測データ(青と白)と、アマル望遠鏡観測データ(赤とオレンジ)を合成している。(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), J. Spilker et al. (Texas A&M), S. Dagnello (NRAO/AUI/NSF))
“うしかい座”の方向約70億光年の彼方に位置する大質量銀河“SDSS J1448+1010”。ハッブル宇宙望遠鏡観測データ(青と白)と、アマル望遠鏡観測データ(赤とオレンジ)を合成している。(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), J. Spilker et al. (Texas A&M), S. Dagnello (NRAO/AUI/NSF))

銀河が星形成を止める理由

大質量銀河“SDSS J1448+1010”には興味深い点がありました。

それは、どういうわけか爆発的な星形成の直後約7000万年前に突然星形成を停止したことでした。
ほとんどの銀河は、そのまま星形成を続けるにもかかわらずです。

アルマ望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡による観測から明らかになったのは、この銀河が星形成をやめた本当の理由は、合体の過程で星形成に必要なガスの約半分が銀河間空間に放出されたためであることでした。

燃料が無くなったため、銀河は星を作り続けることが出来なくなったわけです。
ハッブル宇宙望遠鏡による“SDSS J1448+1010”の近赤外線画像(左)とアルマ望遠鏡による一酸化炭素分子(星の材料となる冷たいガス)の分布。点線内が中心銀河に属するとみられる放射、それ以外は尾を構成している部分。(Credit: Justin S. Spilker et al. 2022 ApJL 936 L11)
ハッブル宇宙望遠鏡による“SDSS J1448+1010”の近赤外線画像(左)とアルマ望遠鏡による一酸化炭素分子(星の材料となる冷たいガス)の分布。点線内が中心銀河に属するとみられる放射、それ以外は尾を構成している部分。(Credit: Justin S. Spilker et al. 2022 ApJL 936 L11)
今回の発見は、星形成がどのように停止し、銀河がどのように死滅するかについての長年の理論を覆すものと言えます。

ただ今回の成果は、たった1つの観測から得られた結果なんですねー
なので、銀河同士の相互作用の結果として、星形成が止まることがどの程度一般的であるかは、今のところ不明です。

これまで、天文学者が想定していた銀河の星形成を止める唯一の方法は、猛烈で速いプロセスでした。

例えば、銀河の中でたくさんの超新星爆発が起こって、ガスの大半を外に吹き飛ばして、残りのガスを加熱してしまうことです。

そう、今回の観測から分かったのは、派手なプロセスでなくても星形成を止められること。
合体という、もっとゆっくりなプロセスでも、星形成と銀河に終止符を打つことができるのですね。
休眠状態にある“SDSS J1448+1010”のイメージ図。他の銀河と合体した際に放出されたガスと星からなる巨大な尾が近くにみられる。(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), S.Dagnello (NRAO/AUI/NSF))
休眠状態にある“SDSS J1448+1010”のイメージ図。他の銀河と合体した際に放出されたガスと星からなる巨大な尾が近くにみられる。(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), S.Dagnello (NRAO/AUI/NSF))


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