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どうやって作られたのか? 天王星の細い環は小さなチリが見当たらない少し変わった存在

2019年07月19日 | 天王星・海王星の観測
アルマ望遠鏡と超大型望遠鏡VLTを用いた観測から、天王星の環の詳しい性質が明らかになってきました。

最も幅が広いε(イプシロン)環はゴルフボールより大きい粒子で構成されていて、どのようにして環が作られたのか、興味をかきたてられる観測結果になっているようです。


太陽系で3番目の大きさを持つ天王星には13本も環がある

現在、おひつじ座の位置に6等級の明るさで見えている天王星。
双眼鏡で見えるほど明るく、太陽系の惑星の中で木星、土星に次いで3番目の大きさを誇っているんですねー

天王星の環が初めて発見されたのは1977年と比較的最近のこと。
1978年までに9つの環が確認され、1986年には“ボイジャー2号”の写真から2つの環が見つかります。
さらに、2003年から2005年にハッブル宇宙望遠鏡の写真から見つかったのは、外側にある2つの環。
これまでに計13本の環の存在が確認されているんですねー

環の特徴として挙げられるのは、可視光線の反射率が極めて低く木炭のように暗いことや、幅は土星の環と比べると非常に狭く、最も幅の広いε環でも20キロから100キロほどしかないこと。

1986年にNASAの“ボイジャー2号”が行った探査では、主な環にチリサイズの粒子が無いらしいことが分かったぐらい… 温度など詳しい測定は行われませんでした。
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2017年12月にアルマ望遠鏡で撮影された天王星とその環。
天王星の大気に見える黒い部分には電波を吸収する硫化水素が広がっている。


他の惑星の環とは異なる性質を持っている天王星のε環

今回、天王星の環について観測を行ったのは2つの研究チームです。
アメリカ・カリフォルニア大学バークレー校のチームはアルマ望遠鏡を用いた電波観測、英・レスター大学のチームはヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTでの赤外線観測を行っています。

観測の結果、天王星の環の温度が液体窒素の沸点と同じマイナス196度であることが初めて確認されました。

さらに、明らかになったのは、最も明るく密度の高いε環が他の惑星の環とは異なる性質を持っていて、ゴルフボールサイズかそれより大きい岩で構成されていることでした。
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アルマ望遠鏡と超大型望遠鏡VLTによって異なる波長で観測された天王星の環。
天王星自体は環よりも明るいので隠されている。
土星の環の幅は数百キロから数万キロにも及んでいて、主成分が氷なので明るく見えています。
また、土星の環を構成する粒子のサイズは様々で、最も内側のD環にはマイクロメートルサイズの小さな粒子があり、一方で他の環では数十メートルのものもあるようです。

他に環を持つ惑星を見てみると、木星の環は主にマイクロメートルサイズの小さなチリで、海王星の環も大部分がチリで構成されています。

そう、天王星のε環は小さなチリが見当たらない少し変わった存在なんですねー

何かが小さなチリを一掃しているのか? あるいはチリ同士がくっついてしまっているのか?
残念ながら理由はまだ分かっていません。

天王星の環は比較的若く、6億歳を超えないと考えられています。
今回の観測は、すべての環が同じ源から来たのか、それぞれの環で異なるのかなど、環の構成を理解するための最初のステップと言えます。

天王星の環の由来として考えられているのは、かつて天王星の周りにあった衛星の衝突によってできた砕けた破片です。
衝突後、衛星は無数の破片に分かれ、最も安定している軌道に密集して公転していると考えられています。

他にも、かつて重力によってとらえられた小惑星や、45億年前の惑星形成時から残った破片ではないかという考え方もあります。

今後、様々な観測によって天王星の環のより詳しい様子が明らかになるといいですね。


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