宇宙にある質量の大半を占めている暗黒物質“ダークマター”。
残念なことに、ダークマターは光では直接見ることができない物質です。
でも、ダークマターは質量を持っているので、その質量が生み出す重力によって光の経路を曲げることがあります。
なので、光が曲げられている箇所を調べていくと、重力源になったダークマターの3次元分布図を作ることができるんですねー
今回の研究では、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ“HSC”を用いて、これまでで最も深く広いダークマターの3次元分布図を作成。
そして、この分布図から宇宙の構造の形成度合いを示す物理量が精密に測定されます。
さらに今回の研究成果からは、加速膨張を引き起こすダークエネルギーの謎にも迫ることができそうですよ。
銀河の形状から“重力レンズ”の影響が見えてくる
遠方銀河からの光は地球に届くまでの間に、途中にある銀河や銀河団に含まれる膨大な質量が生み出す重力によって、曲げられたり明るくなったりします
アインシュタインの相対性理論が予言する、
重力が光の経路を曲げる“重力レンズ”と呼ばれる現象。
この“重力レンズ”の度合いを調べると、レンズ源となった物質の3次元分布を復元することができます。
とくに、電磁波で直接観測ができないダークマターの分布を知ることができることが、大きな利点と言えるんですねー
ダークマターは、質量を持っているけど光学的に直接観測できないとされる仮設上の物質。
今回、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究所のチームが行ったのは、満月約3000個分に相当する天域を観測して銀河の形状を測定すること。
すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ“HSC(ハイパー・シュプリーム・カム)”を使って、約1000万個の銀河が測定されました。
次に研究チームが行ったのは、作成した銀河の形状から“重力レンズ”を詳しく調べること。
そして作成されたのが、これまでで最も深く(過去の宇宙までさかのぼった)、広い天域をカバーした、過去に例がないほど高解像度のダークマターの3次元分布図でした。
“HSC”のデータにより標準的な宇宙モデルが分かってくる
“重力レンズ”の観測結果からは、宇宙の構造形成の進行度合いを表す物理量“S8”を測定することができます。
“S8”が大きい宇宙では、宇宙の構造がより進化し、より多くの銀河が存在することになります。
遠くの暗い銀河まで観測し、高解像度のダークマター地図を作成したことで、研究チームは高精度で“S8”の値を測定することに成功。
“重力レンズ”を用いた他のプロジェクトよりも遠い(過去の)宇宙の“S8”を得ることができました。
この測定結果は、より近傍の宇宙にある銀河を用いたアメリカ中心の“DES”と、ヨーロッパ中心の“KiDS”の重力レンズ効果による測定結果とも一致することになります。
ただ、“重力レンズ”の観測から測定された“S8”は、ヨーロッパ宇宙機関の赤外線天文衛星“プランク”の観測から予想される値よりもわずかに小さいものなんですねー
この違いは、測定の統計的誤差による見かけ上のことなのでしょうか?
それとも、現在の標準的宇宙モデルに何か綻びがあるのでしょうか?
さらに、宇宙のエネルギーの大半を占めていると考えられていても正体不明の存在“ダークエネルギー”の謎も存在しています。
今回の“HSC”の結果は、全計画のたった約10%のデータを用いたものなので、今後得られる“HSC”データにより標準的な宇宙モデルへの理解がさらに深まれば謎が解明でき、ダークエネルギーの正体も解明できる可能性がありそうです。
今回の研究成果は、これらの謎の解明に向けた“HSC”による精密宇宙論の最初の第一歩といえますね。
こちらの記事もどうぞ
すばる望遠鏡“HSC”が描き出した最初のダークマター地図
残念なことに、ダークマターは光では直接見ることができない物質です。
でも、ダークマターは質量を持っているので、その質量が生み出す重力によって光の経路を曲げることがあります。
なので、光が曲げられている箇所を調べていくと、重力源になったダークマターの3次元分布図を作ることができるんですねー
今回の研究では、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ“HSC”を用いて、これまでで最も深く広いダークマターの3次元分布図を作成。
そして、この分布図から宇宙の構造の形成度合いを示す物理量が精密に測定されます。
さらに今回の研究成果からは、加速膨張を引き起こすダークエネルギーの謎にも迫ることができそうですよ。
銀河の形状から“重力レンズ”の影響が見えてくる
遠方銀河からの光は地球に届くまでの間に、途中にある銀河や銀河団に含まれる膨大な質量が生み出す重力によって、曲げられたり明るくなったりします
アインシュタインの相対性理論が予言する、
重力が光の経路を曲げる“重力レンズ”と呼ばれる現象。
この“重力レンズ”の度合いを調べると、レンズ源となった物質の3次元分布を復元することができます。
とくに、電磁波で直接観測ができないダークマターの分布を知ることができることが、大きな利点と言えるんですねー
ダークマターは、質量を持っているけど光学的に直接観測できないとされる仮設上の物質。
今回、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究所のチームが行ったのは、満月約3000個分に相当する天域を観測して銀河の形状を測定すること。
すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ“HSC(ハイパー・シュプリーム・カム)”を使って、約1000万個の銀河が測定されました。
次に研究チームが行ったのは、作成した銀河の形状から“重力レンズ”を詳しく調べること。
そして作成されたのが、これまでで最も深く(過去の宇宙までさかのぼった)、広い天域をカバーした、過去に例がないほど高解像度のダークマターの3次元分布図でした。
ダークマターの分布図(青)。明るい領域ほどダークマターがより多く存在する。 年代別に測定することで異なる距離を調べることができ、3次元分布図が得られる。 白い部分は重力レンズ効果による、銀河の平均的な歪み方向。 |
“HSC”のデータにより標準的な宇宙モデルが分かってくる
“重力レンズ”の観測結果からは、宇宙の構造形成の進行度合いを表す物理量“S8”を測定することができます。
“S8”が大きい宇宙では、宇宙の構造がより進化し、より多くの銀河が存在することになります。
遠くの暗い銀河まで観測し、高解像度のダークマター地図を作成したことで、研究チームは高精度で“S8”の値を測定することに成功。
“重力レンズ”を用いた他のプロジェクトよりも遠い(過去の)宇宙の“S8”を得ることができました。
異なる年代の宇宙の観測から得られた宇宙の構造の進行度合い“S8”の測定結果。 |
この測定結果は、より近傍の宇宙にある銀河を用いたアメリカ中心の“DES”と、ヨーロッパ中心の“KiDS”の重力レンズ効果による測定結果とも一致することになります。
ただ、“重力レンズ”の観測から測定された“S8”は、ヨーロッパ宇宙機関の赤外線天文衛星“プランク”の観測から予想される値よりもわずかに小さいものなんですねー
この違いは、測定の統計的誤差による見かけ上のことなのでしょうか?
それとも、現在の標準的宇宙モデルに何か綻びがあるのでしょうか?
左は今回の“HSC”など重力レンズの観測が支持する宇宙モデルに基づくシミュレーション結果、 右は“プランク”の観測が支持する宇宙モデルに基づくシミュレーション結果。 “S8”がわずかに大きい“プランク”の支持する宇宙では、“HSC”の宇宙に比べより構造が進化している。 |
さらに、宇宙のエネルギーの大半を占めていると考えられていても正体不明の存在“ダークエネルギー”の謎も存在しています。
今回の“HSC”の結果は、全計画のたった約10%のデータを用いたものなので、今後得られる“HSC”データにより標準的な宇宙モデルへの理解がさらに深まれば謎が解明でき、ダークエネルギーの正体も解明できる可能性がありそうです。
今回の研究成果は、これらの謎の解明に向けた“HSC”による精密宇宙論の最初の第一歩といえますね。
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すばる望遠鏡“HSC”が描き出した最初のダークマター地図
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