近年の系外惑星探査で関心が集まっているのは、地球のような温暖な岩石惑星… いわゆるハビタブル惑星の発見なんですねー
こうした惑星の探査の多くは、見つけ易さから太陽系の近傍に多数存在する“赤色矮星”または“M型星”と呼ばれる、太陽よりも低温の星をターゲットとしています。
さらに、惑星が温暖な気候を維持するためには、適度な日射量だけでなく、適量な海水が必要なことが知られています。
でも、これまでの惑星形成モデルで予測されていたのは、“M型星”の周りにそのような条件を満たす惑星が存在する確率は非常に小さいことでした。
そこで、今回の研究で着目しているのは、惑星の形成場である原始惑星系円盤のガス成分の獲得によって形成される大気とマグマオーシャンとの反応で生成される水でした。
すると、“M型星”の周りにおいても、地球程度の半径と日射量を持つ惑星のうち数%が適度な海水量を持っていると見積もられたんですねー
このことが示唆していること、それは今後十年以内の探査で温暖な気候を持つ惑星の発見が十分期待できることでした。
こうした多数の系外惑星の検出によって分かってきたのは、惑星系が宇宙に普遍的に存在すること。
一方、その大きさや成分、中心星からの距離、日射量について、系外惑星が実に多様であることも明らかになりました。
これまでに検出された惑星には、地球に近い大きさの惑星も多数存在しています。
それらの中に地球のような温暖な気候を持つ惑星“ハビタブルな惑星”はあるのでしょうか?
このことは、大きな関心ごとのひとつになっているんですねー
地球の生命体には水が必要ですが、実は気候にも水は重要な役割を果たしています。
恒星から受ける日射量が適度であることに加えて、惑星が温暖な気候を維持するために必要なのが、適度な水量の海洋であることが知られています。
現在の地球は、プレートテクトニクスと大陸風化を伴う炭素循環が機能することで、温暖な気候を維持できています。
でも、海水量が地球よりも数十倍以上多くなると、炭素循環が制限されてしまい、極端に熱い、もしくは寒冷な気候になると考えられています。
この考えを“M型星”を公転する惑星に適用した過去の研究では、適度な水量を持つ惑星は非常に稀であることが予測されていました。
今後のハビタブル惑星探査の主な対象となっている“M型星”ですが、地球のような温暖な気候を持つ惑星が発見される可能性は極めて低い っという、いわばネガティブな示唆が得られていました。
一方、別の水獲得過程として、惑星の形成期に惑星内部で水を生成する過程と条件が生駒大学の研究で提案されていました。
一般に惑星は原始惑星系円盤の中で成長するので、その円盤のガスを重力的に獲得し、水素を主成分とする大気“原始大気”を形成します。
また、形成途中の惑星の地表面は天体の衝突による熱などによって、溶融したマグマの状態“マグマオーシャン”にあります。
この時、水素ガスとマグマに含まれる酸化物が化学反応することによって生成されるのが水です。
この水生成反応の効果を考慮すると、これまでの理論モデルよりも水に富んだ惑星を形成できる可能性は上がることになります。
そこで、今回の研究では、太陽系外の海惑星の存在頻度を改めて求めるために“惑星種族モデル”を開発。
このモデルでは、最新の惑星形成理論に基づいて惑星の質量成長や軌道進化を追い、その過程で獲得した水の量を計算することができます。
さらに、これまで考えられていた含水岩石の獲得に加えて、原始大気中の水生成の効果も新たに取り入れています。
そして、このモデルを用いた数値シミュレーションで分かってきたのが、様々な位置に大きさや大気量の異なる多彩な惑星が生成されることでした。
その中から、ハビタブルゾーンに存在する惑星を取り出して、獲得した海水量を調べた結果が下の図です。
その中には、地球と同程度の海水量を持つ惑星も形成されています。
これらの惑星の海水は、ほとんどが大気中の水生成によって得られたものでした。
計算データの解析結果から得られたのは、惑星半径が地球の0.7倍~1.3倍の惑星の数%が温暖な気候を維持するために適切な水量(地球海水量の0.1~100倍)を保持しているという予測だったんですねー
国立天文台すばる望遠鏡の赤外線ドップラー装置“IRD”を用いた惑星探査計画や現在稼働中のNASAのトランジット惑星探査衛星“TESS”、打ち上げが予定されているヨーロッパ宇宙機関の宇宙望遠鏡“PLATO”などによる探査から試算されているのは、“M型星”周辺のハビタブルゾーンの中に地球程度のサイズの惑星が100個程度発見されるということ。
また、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡や2026年に打ち上げが予定されているヨーロッパ宇宙機関の宇宙望遠鏡“ARIEL”による系外惑星の大気スペクトルの観測から、大気中の水分子などの存在についても明らかになってくるはずです。
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こうした惑星の探査の多くは、見つけ易さから太陽系の近傍に多数存在する“赤色矮星”または“M型星”と呼ばれる、太陽よりも低温の星をターゲットとしています。
さらに、惑星が温暖な気候を維持するためには、適度な日射量だけでなく、適量な海水が必要なことが知られています。
でも、これまでの惑星形成モデルで予測されていたのは、“M型星”の周りにそのような条件を満たす惑星が存在する確率は非常に小さいことでした。
そこで、今回の研究で着目しているのは、惑星の形成場である原始惑星系円盤のガス成分の獲得によって形成される大気とマグマオーシャンとの反応で生成される水でした。
原始惑星系円盤とは、誕生したばかりの恒星の周りに広がる水素を主成分とするガスやチリからなる円盤状の構造。恒星の形成や、円盤の中で誕生する惑星の研究対象とされている。
形成期の惑星には、材料となる岩石が頻繁に衝突するため、地表面はその衝突の際の過熱で溶融した状態になる。さらに、この時期の大気の主成分である水素ガスは強い保温効果を持っているため、溶けた岩石は冷えず、全球がマグマに覆われた状態にあると考えられ、これをマグマオーシャンという。
さらに、新しい惑星形成モデルを独自に開発し、改めて系外惑星の持つ海水量を理論的に予測していきます。形成期の惑星には、材料となる岩石が頻繁に衝突するため、地表面はその衝突の際の過熱で溶融した状態になる。さらに、この時期の大気の主成分である水素ガスは強い保温効果を持っているため、溶けた岩石は冷えず、全球がマグマに覆われた状態にあると考えられ、これをマグマオーシャンという。
すると、“M型星”の周りにおいても、地球程度の半径と日射量を持つ惑星のうち数%が適度な海水量を持っていると見積もられたんですねー
このことが示唆していること、それは今後十年以内の探査で温暖な気候を持つ惑星の発見が十分期待できることでした。
水は気候に重要な役割を果たしている
1995年の初検出以降、太陽以外の星を周回する惑星“系外惑星”は、すでに5000個以上検出されています。こうした多数の系外惑星の検出によって分かってきたのは、惑星系が宇宙に普遍的に存在すること。
一方、その大きさや成分、中心星からの距離、日射量について、系外惑星が実に多様であることも明らかになりました。
これまでに検出された惑星には、地球に近い大きさの惑星も多数存在しています。
それらの中に地球のような温暖な気候を持つ惑星“ハビタブルな惑星”はあるのでしょうか?
このことは、大きな関心ごとのひとつになっているんですねー
地球の生命体には水が必要ですが、実は気候にも水は重要な役割を果たしています。
恒星から受ける日射量が適度であることに加えて、惑星が温暖な気候を維持するために必要なのが、適度な水量の海洋であることが知られています。
現在の地球は、プレートテクトニクスと大陸風化を伴う炭素循環が機能することで、温暖な気候を維持できています。
でも、海水量が地球よりも数十倍以上多くなると、炭素循環が制限されてしまい、極端に熱い、もしくは寒冷な気候になると考えられています。
惑星が水を獲得する方法
太陽系では、水を含む岩石または氷天体の飛来によって、地球は現在の海を獲得できたとする考えが有力視されています。この考えを“M型星”を公転する惑星に適用した過去の研究では、適度な水量を持つ惑星は非常に稀であることが予測されていました。
今後のハビタブル惑星探査の主な対象となっている“M型星”ですが、地球のような温暖な気候を持つ惑星が発見される可能性は極めて低い っという、いわばネガティブな示唆が得られていました。
一方、別の水獲得過程として、惑星の形成期に惑星内部で水を生成する過程と条件が生駒大学の研究で提案されていました。
一般に惑星は原始惑星系円盤の中で成長するので、その円盤のガスを重力的に獲得し、水素を主成分とする大気“原始大気”を形成します。
また、形成途中の惑星の地表面は天体の衝突による熱などによって、溶融したマグマの状態“マグマオーシャン”にあります。
形成期の岩石惑星において、原始大気とマグマオーシャンとの反応で水(水蒸気)が生成される状態(イメージ図)。(Credit: 木村真博) |
この水生成反応の効果を考慮すると、これまでの理論モデルよりも水に富んだ惑星を形成できる可能性は上がることになります。
太陽系外の海惑星の存在頻度
惑星が獲得する含水岩石の量や水生成反応から得られる水量は、惑星形成過程に大きく左右されることになります。そこで、今回の研究では、太陽系外の海惑星の存在頻度を改めて求めるために“惑星種族モデル”を開発。
このモデルでは、最新の惑星形成理論に基づいて惑星の質量成長や軌道進化を追い、その過程で獲得した水の量を計算することができます。
さらに、これまで考えられていた含水岩石の獲得に加えて、原始大気中の水生成の効果も新たに取り入れています。
そして、このモデルを用いた数値シミュレーションで分かってきたのが、様々な位置に大きさや大気量の異なる多彩な惑星が生成されることでした。
1万個の“M型星(0.3太陽質量)”の周りで形成された惑星の軌道長半径と質量の分布。各点の色は惑星の原始大気の質量分率を表す。破線の枠はハビタブルゾーンにある地球に近い質量の惑星の領域を示している。(Credit: 木村真博) |
“ハビタブルゾーン”とは、主星(恒星)からの距離が程良く、惑星の表面に液体の水が安定的に存在できる領域。この領域にある惑星では生命が居住可能だと考えられている。太陽系の場合は地球から火星軌道が“ハビタブルゾーン”にあたる。
図のように、原始大気中の水生成が働く場合には、“M型星”を公転する系外惑星は非常に多様な水量を保持できることが分かりました。その中には、地球と同程度の海水量を持つ惑星も形成されています。
これらの惑星の海水は、ほとんどが大気中の水生成によって得られたものでした。
計算データの解析結果から得られたのは、惑星半径が地球の0.7倍~1.3倍の惑星の数%が温暖な気候を維持するために適切な水量(地球海水量の0.1~100倍)を保持しているという予測だったんですねー
“M型星(0.3太陽質量)”の周りのハビタブルゾーンに位置する地球程度の質量(0.3-3倍の地球質量)の惑星の海水量分率の頻度分布。緑色がこれまでのモデルに従い含水岩石の獲得のみを考慮した計算の結果。橙色が今回の研究のモデルを用い原始大気中の水生成の効果を考慮した場合の結果。点線は現在の地球の海水量分率。(Credit: 木村真博) |
“PLATO”は、ハビタブルゾーン内にある地球型惑星の検出を目指し、2026年に打ち上げが予定されているヨーロッパ宇宙機関の宇宙望遠鏡。
その中の数個が、地球のような温暖な気候を持つ海惑星であると、今回の研究結果は予測しています。また、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡や2026年に打ち上げが予定されているヨーロッパ宇宙機関の宇宙望遠鏡“ARIEL”による系外惑星の大気スペクトルの観測から、大気中の水分子などの存在についても明らかになってくるはずです。
“ARIEL”は、既知の系外惑星の大気の化学組成や熱構造を観測することを目指し、2028年に打ち上げが予定されているヨーロッパ宇宙機関の宇宙望遠鏡。
こうした観測によって今回の研究の理論予測が検証され、地球のような海惑星の形成過程の解明につながっていくといいですね。こちらの記事もどうぞ
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