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モバライダー mobarider

大きな銀河が小さな銀河の星々や星の材料を取り込むことで成長・進化するプロセスのワンシーンを撮影

2023年08月07日 | 銀河・銀河団
エリダヌス座の方向約5500万光年彼方に位置する渦巻銀河“NGC 1532”。

“NGC 1532”は地球に対して真横を向けた位置関係にある、いわゆるエッジオン銀河のひとつです。

奥の方に見える渦巻腕(渦状腕)は反り返るように歪んでいますが、これは中心部のすぐ上に写っている矮小銀河“NGC 1531”との重力を介した相互作用の影響によるものです。
渦巻銀河“NGC 1532”に取り込まれつつある矮小銀河“NGC 1531”。(Credit: CTIO/NOIRLab/DOE/NSF/AURA; R. Colombari, M. Zamani & D. de Martin (NSF’s NOIRLab))
渦巻銀河“NGC 1532”に取り込まれつつある矮小銀河“NGC 1531”。(Credit: CTIO/NOIRLab/DOE/NSF/AURA; R. Colombari, M. Zamani & D. de Martin (NSF’s NOIRLab))
この画像を公開したアメリカ科学財団(NSF)の国立工学・赤外天文学研究所(NOIRLab)によると、“NGC 1531”はやがて“NGC 1532”に取り込まれると考えられています。

両銀河の相互作用が促してきたのは双方での爆発的な星形成活動。
また、2つの銀河からはガスとチリが流出していて、まるで銀河と銀河をつなぐ橋のようにも見えます。

“NGC 1531”と“NGC 1532”は、大きな銀河が小さな銀河の星々や星の材料を取り込むことで成長・進化するプロセスのワンシーンを示したスナップショットとも言えます。

実は、同じようなプロセスは天の川銀河でも過去に6回も起きたと考えられています。
その痕跡は、銀河円盤を球状に取り囲むハロー(銀河ハロー)と呼ばれる領域に、恒星ストリームなどの形で残されています。
矮小銀河が天の川銀河の近くにやってくると、天の川銀河の重力によって矮小銀河内の星が引き出され、それが恒星流(恒星ストリーム)となって宇宙空間に広がる。このような天の川銀河と矮小銀河が作用した際に形成された星の流れが、星が他の銀河から移動してきた証拠になる。
このような大小の銀河同士の相互作用は、似たようなサイズの銀河同士の相互作用とは異なっています。

サイズが同程度の渦巻銀河2つが衝突すると大変動が起こり、全く別の銀河として生まれ変わると考えられています。

天の川銀河も約40億年後にはアンドロメダ銀河(M31)と衝突・合体して、最終的に1つの楕円銀河が誕生すると予測されています。

冒頭の画像は南米チリのセロ・トロロ汎米天文台にあるブランコ4メートル望遠鏡に設置された観測装置“ダークエネルギーカメラ(DECam)”の観測データ(可視光線と近赤外線のフィルターを使用)をもとに作成されたもの(国立工学・赤外天文学研究所から2023年7月25日付で公開)。

ダークエネルギーカメラは、その名が示すようにダークエネルギー(暗黒エネルギー)の研究を主な目的として開発された観測装置で、画素数は約520メガピクセル、満月約14個分の広さ(3平方度)を一度に撮影することができます。

当初の目的であるダークエネルギー研究のための観測は2013年から2019年にかけて実施されました。


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