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夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

今年観た映画50音順〈た行〉

2022年12月28日 | 映画(た行)
《た》
『タール 因縁の荒野』(原題:Thar)
2022年のインド作品。Netflixにて配信。
タール砂漠が広がるラージャスターン州パキスタンとの国境近くの町ムナバオ。
ある夜、ひそかに麻薬の倉庫となっている民家に強盗団が押し入り、住人が殺される。
結婚間近でありながら別の男と外出先で浮気していた住人の娘は無事だったが、
捜査に訪れた警部補スレーカとその部下に正直に話そうとしない。
また、耳を掻き切られた男性の遺体が発見され、続いて悪名高き数名の男が次々と行方不明に。
これも麻薬絡みの犯罪かとスレーカは考えるが、
どうも後者の犯人は正義のために悪人を罰しているように思えてきて……。
デリーからやってきたという骨董商シッダールトが後者の犯人であることは早いうちにわかります。
ただ、耳を切ったり指を折ったり、捕らえた男たちをすぐには殺さずに、
吊して拷問にかけてからじわじわ殺そうとするのはなぜなのか。
その理由が凄絶で、今までに観たインド作品のなかでいちばん怖かったかも。
妻をいたぶり殺されたシッダールトには同情すべきものがあります。
が、はたして強盗団の話は必要だったのかどうか疑問。
 
《ち》
『TUBE チューブ 死の脱出』(原題:Meandre)
2020年のフランス作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
愛娘を亡くした悲しみから立ち直れずに自らも死ぬことを考えていた女性リザ。
なのに死ねずにいたところ、通りすがりの車に拾われる。
運転手に襲われて気を失った彼女が目覚めると、暗くて狭い檻のような部屋の中。
手首にはカウントダウンの表示が光るブレスレットが取り付けられており、
開いた扉から外に出てみると、そこにはチューブ状の通路が迷路のように広がっていた。
邦題から想像できるとおり、設定が『CUBE』(1997)そのまま(笑)。パクリです。
目覚めたときに彼女が着せられている服が凄いんです。どういうコスプレ!?
いきなり通路の幅が狭くなったり、天井が下がってきたり、火炎が噴き出したり。
化け物に追いかけられるシーンなんて怖い怖い。でもなんか雑でワラける。
臍に管が直結されてかつて幸せだった映像を見せられ癒やされるところは斬新か(笑)。
無事脱出して終わりかと思いきや、死ぬんかい。いや、死んでない!?
 
《つ》
『ツイン・ミュータント』(原題:Transference: Escape the Dark)
2020年のカナダ作品。劇場未公開。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
幼い頃に事故で親を亡くした兄妹ジョシュアとエマ。
エマはある能力が持っているが、もしもそれが悪用されるととんでもないことになる。
ジョシュアはエマを守ろうと、隔離された部屋に彼女を閉じ込め、
親しい病院関係者に彼女の能力を抑える薬の投与を頼むが効果なし。
あるとき、エマを探しているらしい怪しい人影にジョシュアは気づき……。
邦題から想像していたのはミュータントが生まれてウギャーとなるようなB級作品。
ところがミュータントっぽさは全然なくて、詐欺みたいなタイトル。
エマの隠された能力とは、ジョシュアが痛めつけられるとそれがエマに伝わり、
怒りに駆られて人を殺すほどの力を発揮するらしい。
そもそも英語作品ではないと思っていたので、始まってみてびっくり。
 
《て》
『テーラー 人生の仕立て屋』(原題:Raftis)
2020年のギリシャ/ドイツ/ベルギー作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
少年の頃からスーツを着て仕立て屋になるべく育てられたニコス、50歳、独身。
このところ経営不振が続き、銀行から差し押さえを宣告される。
ショックで入院した父親の留守中、ニコスはなんとか事態を立て直そうと、
生地や仕立て道具を詰めた屋台を単車で引っ張って、移動式の仕立て屋を始める。
しかし屋台でスーツを作ろうという客などいるはずもなく困っていたところ、
ウェディングドレスを作ってほしいという注文が舞い込む。
戸惑いながらも手探りで婦人服の仕立てに着手。すると思いのほか人気を呼び……。
ディミトリス・イメロス演じるニコスはどうみても変人で、台詞もほとんどなし。
几帳面で毎日ルーティンの行動しかできない彼ですが、どうにも憎めない。
隣家の少女ヴィクトリアだけは最初からニコスに好意的だったのに、
自分の母親オルガがニコスとあまりに親しくなると不機嫌になる。
父親に密告はせずとも、ニコスに意地悪な態度を取りはじめるのは、
思春期の少女の複雑な思いが表れていて苦い気持ちになりました。
ラストの風を切って走る“ウェディングドレス屋 ニコス”のシーンがとても良い。
ふだんあまり映画を観ない人にはお薦めしづらい作品だけど、私は好き。
 
《と》
『Togo/トーゴー』(原題:Togo)
2022年のウルグアイ作品。Netflixにて配信。
モンテビデオの通りの1区画で駐車場の誘導係をしながら路上生活を送る男性トーゴー。
すぐ隣の区画ではコカインの取引が横行しているが、
自分の区画には決してそんなものを持ち込ませたくない。
ある日、富裕な家庭に育ちながら両親に反抗して家を飛び出してきた少女メルセデスが、
自分も路上生活を送りたいと言ってトーゴーを頼ろうとする。
最初は取り合おうとしないトーゴーだったが、放っておけずに面倒を見ることに。
しかし、トーゴーの区画を狙う組織が従うように脅しをかけてきて……。
ウルグアイってスペイン語が公用語なんですね。それすら知りませんでした。(^^;
これほど怖い国だとは知らず、ビビるビビる。警察はまったく当てにならないし。
足をひきずり杖を突きながら歩くトーゴーはどうみても弱そうな爺さんなのに、
もとはプロボクサーで結構強かったらしい。
事故に遭ってこんな体になってしまったけれど、絶対悪には屈しません。
過去に荒んだ時期はあっても、誠実に生きてきた彼に優しい町の人もいる。
実際にはむずかしいことでしょうが、ハッピーエンドが嬉しい物語。
メルセデスのTシャツの字“悪兆候”には目が釘付けになりました。これかなぁ。

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今年観た映画50音順〈さ行〉

2022年12月28日 | 映画(さ行)
《さ》
『殺人鬼から逃げる夜』(英題:Midnight)
2021年の韓国作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
通販会社のお客様対応を手話で務めるギョンミ。
生まれつきの聴覚障害者であり、彼女の母親も同じ障害を持っている。
ある日の帰宅途中、路地裏で負傷して倒れている女性ソジュンを発見。
ギョンミは助けようとするが、ソジュンは実は連続殺人鬼ドシクのターゲット。
ドシクは目撃者となったギョンミを追いかけることに。
警察に逃げ込んだギョンミは、後からやってきたドシクの犯行を伝えようとするが、
とても殺人鬼には見えないサラリーマン姿のドシクのことを警察官は信用。
この危険な状況を上手く伝えられないことをもどかしく思うギョンミ。
そこへソジュンの兄ジョンタクが帰らぬ妹を探しにやってくるのだが……。
ギョンミ役にチン・ギジュ、ドシク役にウィ・ハジュン。怖い怖い。
ナイフを手にした聴覚障害の女性が健常者の男性に追いかけられていたら、
「錯乱状態にある妹」だと男性が周囲に話すと、皆それを信じてしまうのですね。
そして男性に手を貸そうとする。なんと理不尽なことか。
最後はギョンミの頭脳戦勝ち。スッキリいい気味です。
ジョンタクとの関係も予感させられてハッピーエンディング。
 
《し》
『しあわせのマスカット』
2020年の日本作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
北海道出身の相馬春奈(福本莉子)は、高校の修学旅行で岡山を訪れたさい、
病床の祖母が切望するマスカット・オブ・アレキサンドリアをお土産にしたかったのに、
財布を落としたせいで叶わず、代わりにその葡萄を使った和菓子を買って帰る。
祖母が美味しいと言って食べるのを見て、この和菓子を作っている会社に就職を志望。
面接に遅刻したにもかかわらず、社長のお眼鏡に適って採用される。
しかし、ドジな春奈は研修期間中に失敗三昧。
配属先に困った人事部は、春奈を商品部社員という扱いにして、
マスカット・オブ・アレキサンドリアを作っている葡萄農園へと送り込む。
農園主の秋吉伸介(竹中直人)は気難しく、これまで誰も長続きした試しがなく……。
岡山のご当地映画だと思っていたら、源吉兆庵の宣伝映画でした(笑)。
私たち、こんなに良い会社なんですよ~と言われているようでドン引き。
ま、悪くはないです。頑張る女子の姿を見るのは。
田中要次がお店のガードマン役で出演しています。ほぼ台詞なしで笑った。
 
《す》
『スターフィッシュ』(原題:Starfish)
2018年のイギリス/アメリカ作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
知名度ゼロに等しいキャストゆえ未公開になりそうだったところ、
出来のあまりの良さにもったいないと、“未体験ゾーンの映画たち 2022”で上映。
オーブリーは急死した親友グレイスの葬儀に参列。
その折、グレイスが自分に手紙を出そうとしていたことを知る。
グレイスの部屋にこっそりと侵入して物思いにふけっている間に外で異変が起こり、
人々が町から忽然と消え、不気味な怪物が徘徊するようになっていた。
グレイスが残したミックステープをもとに、オーブリーは町を救おうとするが……。
冒頭に「実話に基づく」と表示されます。
そんなアホなと笑ってしまったのですが、途中で気づく。
これは、大切な誰かを亡くした人が現実と向き合えるようになるまでの話だと。
怪物こそが現実。ミックステープの隠し場所を辿ることが気持ちの整理
人が死ぬのは運命。でも物語が喪われるのは悲しい。泣いてしまった。
 
《せ》
『世界で一番美しい少年』(原題:The Most Beautiful Boy in the World)
2021年のスウェーデン作品。TSUTAYA DISCASにてDVDレンタル。
何十年かぶりに『ミッドサマー』(2019)でその姿を見せて話題になったビョルン・アンドレセン。
1970年、15歳のときに『ベニスに死す』(1971)のオーディションで巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督に見いだされ、
その完璧な美貌が“世界で一番美しい少年”と称賛された俳優。
『ベニスに死す』に出演したせいで世界中の美少年好きから性的な目で見られるようになり、
ゲイを公言するヴィスコンティ監督は、撮影後には彼を「もう歳を取り過ぎだ。
1年前は美しかったけど」のようなことを言ってこきおろす。
そのくせ、ほかの作品には今後3年間出演させないという契約を彼の祖母と取り交わし、
アンドレセン本人の望まない形で彼の人生は進んで行く。
父親は誰かわからず、母親は森で首吊り自殺、祖母に無理やり芸能界入りさせられた彼。
もう悲しくて切なくて、やるせない気持ちになりました。
 
《そ》
『ソウルメイト/七月と安生』(原題:七月與安生)
2016年の中国/香港作品。TSUTAYA DISCASにてレンタル。
デレク・ツァン監督の『少年の君』(2019)の高評価を受けて昨年初公開された模様。
プロデューサーをピーター・チャンが務めています。
ネットで人気の小説『七月(チーユエ)と安生(アンシェン)』を映像化しようと、
映画会社が作者の林七月を探すが見つからない。
実話を基にした物語のようだからと、李安生を探し当てて交渉する。
ところが安生は七月なんて人は知らないと言い張り……。
実は作者は安生で、物語は幼なじみだった七月と安生の激動の人生を描いています。
優等生の七月と自由気ままな安生は蘇家明という男性を愛し、ぶつかりあう。
ふたりの間に何があったのかがすべてわかるときはかなり衝撃的。
家明と婚約した七月は挙式当日に家明に逃げられ、地元には居づらくなって脱出。
でも実はこれは七月が家明に頼んだこと。そうでもしなければ地元から出られないから。
しかし七月はその後、家明との間にできていた子どもを出産。
その子どもを安生が育てていました。しかもそれだけじゃないのです。
魂の結びつきに圧倒されました。

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