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『アイ・アム・タレント』

2018年08月29日 | 映画(あ行)
『アイ・アム・タレント』(原題:I Am Thalente)
監督:ナタリー・ジョンズ

後述の映画目当てにシネマート心斎橋に行くことにしたら、
ちょうどシネマートデーで鑑賞料金は1,000円。
ならばあちこちへ行かずに同劇場で3本観ましょう。

1本目はアメリカのドキュメンタリー作品。

南アフリカで路上生活を送る少年タレント・ビエラ。
両親がいるにもかかわらず、10歳にも満たないときに家を飛び出しました。
虐待を受けていたものと思われます。
以降、同様の仲間たちとスケートパークで暮らし始めます。

彼のスケートボーディングの才能は並外れたもの。
その動画を見たアメリカのプロスケーター、ケニー・アンダーソンが、
もしも彼がアメリカに来るならば援助を惜しまないと申し出ます。

それまでサポートを申し出る人がいても、
人のために滑るのは嫌だ、誰かの期待に応えるために滑るなんて、
僕にはできないと拒絶していたタレントですが、
ドラッグに手を出してしまった自分をどうにかしなければならないと思っていた頃。
彼のことを親身になって考える人たちの助言もあり、アメリカに行く決意をします。

アメリカに渡って出場してみた大会では散々な結果。
南アの大会では素晴らしい成績を残していたのに。
アメリカとのレベルの差を目の当たりにしたようで愕然とします。

スケートボードファッションを主としたブランドのLRGと契約を結べたら。
自立してきちんと収入を得られるよう、プロスケートボーダーになりたい。
しかし、プロに求められるのはパークでの滑りではなく、
ストリートでいかにトリックを用いて滑ることができるか。
人の目を惹きつけ、もっと見たいと思わせるようなボーディング。

パークでずっと滑ってきたタレントは、ストリートで上手く滑ることができません。
失敗を繰り返し、弱音を吐きながらも、決して止めないタレント。

家を飛び出したときに学校も辞めている彼は、
9歳程度の識字能力しか持っていませんでした。
サポートの一環として個人教師をつけて読み書きの勉強も始めたものの、
生きるうえで勉強が必要だと思えないから進まない。
集中力を欠いた態度だった彼が、車の免許を取るという目標を見つけ、
何度か落ちながらも試験に合格したときの嬉しそうな顔といったら。

タレントの出身地はダーバン。
ダーバンといえば、2010年のワールドカップの会場のひとつにもなった高級リゾート地として有名。
その目の前にこうして路上生活を余儀なくされる子どもたちがいる。
フィクションながら『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』もそうでした。
富裕層の隣には必ず極貧層がある。

世の中は偽善者ばかりと話していたタレントだけど、
偽善的であったとしても、こうして手を貸してくれる人がいれば。
伊坂幸太郎の『砂漠』の一節をまた思い出しました。

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