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『少年の君』

2021年08月02日 | 映画(さ行)
『少年の君』(原題:少年的你)
監督:デレク・ツァン
出演:チョウ・ドンユイ,ジャクソン・イー,イン・ファン,ホアン・ジュエ,
   ウー・ユエ,チョウ・イェ,チャン・ヤオ,チャン・イーファン他
 
シネ・リーブル梅田にて。
 
第93回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた中国/香港作品。
青春映画のジャンルでは中国歴代第1位を記録したそうです。
冒頭で、本作がいじめに遭っている人の一助になればとのテロップ。
私の中では今までの中国映画のイメージがひっくり返りました。
 
少女チェン・ニェンは名門進学校でトップ10に入る成績を収める優等生。
母親と二人暮らしだが、その母親は妙な商売にばかり手を出し、家計は火の車。
借金取りがやって来るから自分はいないほうが安全だと、家に居ようとしない。
扉を叩く音に耳を塞ぎながら受験勉強に集中するニェン。
 
ある日、いじめに遭っていた同級生が校舎から飛び降りて自殺する。
そこら中の生徒が遺体にスマホを向けて撮影するなか、
ニェンは遺体に近づき、自分の上着をふわりとかける。
 
取り調べに来た刑事から呼び出されたニェンは、
同級生に何があったか知っているのだろうと詰め寄られるが、何も答えない。
しかしニェンが何か告げ口したに違いないと考えるいじめっ子たちは、
今度は標的をニェンに変え、執拗にいじめを繰り返すように。
 
そんなとき、下校途中に集団リンチの現場に遭遇。
暴行を受けていた少年シャオベイを助けるため、ニェンは通報しようとする。
それがきっかけでニェンはチンピラのシャオベイにボディガードをしてもらうようになるのだが……。
 
貧困層から脱出するには学歴がすべて。
何が何でも一流大学に入らねばならないと、皆が全国統一入学試験(通称:高考)に臨む姿は異様。
そんなに勉強せなあかんのやったら、人をいじめてるヒマはないやろと思うのですが、
毎日が面白くないからか何なのか、そのいじめの凄まじさに背筋が凍ります。
 
私がいじめられっ子だったのは幼稚園の2年間だけでしたが、
いじめっ子に挟まれて過ごす1日の長いことと言ったら。
幼心にも親に心配はかけたくないから、家では絶対に言えない。
 
いじめっ子って、ひとりじゃ何もできないのですよね。必ずつるんでいる。
私をいじめていたふたりは小学校が異なったおかげで、
ひとりになってからは何もしないどころか、なりを潜めておとなしくしていましたが、
あのふたりがあのまま私と同じ小学校に上がっていたらと思うと今でもぞっとします。
 
小山田圭吾のいじめ発言等、オリンピック開催まぎわにとんだことになりました。
小山田さんは本当に反省しているのかもしれないけれど、
私は基本的に、心の底から反省しているいじめっ子など存在しないと思っています。
話題にされて、事の重大さに気づいて、保身で謝ってみせているだけ。
本作のいじめっ子のリーダー、ウェイ・ライもそう。
ニェンに謝罪に来たのは、付近の住民に通報されて困っただけのこと。
その後、彼女の身に起きたことは、私はいい気味だとしか思えません。
 
私が一生許せないと思っているいじめっ子、
でも向こうは私のことなど覚えてもいないでしょう。
いじめって、そういうものなのかなと思います。
 
と、自分のことばかり書いて、ほとんど感想ではなくなってしまいましたが、
私のように少なからずいじめを受けたことのある人間にとって、この映画は救いになる。
 
「君のことは俺が守る。君は世界を守れ」。
似た台詞があったなぁと思ったら『ワンダーウーマン』(2017)でした。
こんなにも違う映画だけど、目指す先は同じなのかも。

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