夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『タッチ・オブ・スパイス』

2005年09月23日 | 映画(た行)
『タッチ・オブ・スパイス』(英題:A Touch of Spice)
監督:タソス・ブルメティス
出演:ジョージ・コラフェイス,タソス・バンディス,マルコス・オッセ他

2003年のギリシャの作品。
日本では今年に入ってから公開されました。

ギリシャのアテネに暮らす中年のファニスは
少年時代をトルコのイスタンブールで過ごしたが、
両国がキプロス島の帰属問題で対立していた1960年代初め、
ギリシャ人だった父がトルコ国外への退去を命じられ、
家族とともにギリシャへ渡る。

それ以来、会う機会に恵まれなかった祖父が、アテネへやってくると言う。
祖父はイスタンブールで長年スパイス店を営み、
幼い頃、店に入り浸りだったファニスは自然と料理を覚えた。
ファニスは大好きな祖父とその友人たちをもてなすため、
得意の料理を用意して待つが、祖父が倒れたとの連絡が。

ここからファニスの過去を回想する形で物語は進みます。
ストーリーよりも、出てくるスパイスや料理の楽しさに
私はぐいぐい引き込まれました。
スパイスを通じて、祖父から人生を学ぶファニス。
その例えのおもしろさ。

祖父は、美食家の中には天文学者が潜むと言い、胡椒を太陽に例えます。
世界のすべてを見つめる太陽は、すべての料理に必要。
金星はシナモン。ヴィーナスのごとく、苦くて甘い。
地球は生命。その生命を保つには食事が欠かせない。
人生も食事も味気ないと惨めだから、味付けには塩。

縁談の相手にふるまう料理を作るため、
肉団子用のクミンを買おうとやってきた女性に
「想いを伝えるには意外なものを使え。
縁談に乗り気なら、クミンではなくシナモンを。
クミンは人を充足させて内にこもらせる。
シナモンは人を近づけ、互いを見させる」と祖父。
本作ではシナモンが常に大事なスパイスとして挙げられています。

わが家ではクミンは常備しているものの、使い道に悩むスパイスでした。
ところが、大好きなお店で、とてもいい感じにクミンの効いたお料理を出してくださるので、
こうして使えばいいのかと真似ているうち、
いつのまにか使用頻度No.1のスパイスとなりました。
本作を観た直後、それならとお肉系のパスタにシナモンを使用。
しかし、映画のようにドバドバと入れる勇気はなく、
味見したらやっぱりクミンを入れないと物足りない。
結局クミンに頼ることに。けれど、楽しい試みでした。

茄子の「音」まで吟味する彼らが印象的な、
ちょっと寂しい、初秋を思わせる作品です。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『アイス・プリンセス』 | トップ | 『ウィンブルドン』 »

映画(た行)」カテゴリの最新記事