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『BLUE/ブルー』

2021年04月16日 | 映画(は行)
『BLUE/ブルー』
監督:吉田恵輔
出演:松山ケンイチ,木村文乃,柄本時生,東出昌大,守谷周徒,吉永アユリ,
   長瀬絹也,松浦慎一郎,松木大輔,竹原ピストル,よこやまよしひろ他
 
日曜日の晩、109シネマズ箕面にて。
 
好きなんです、吉田恵輔監督。
ハッピーエンドじゃない作品も多いけど、忘れがたいものばかり。
本作もそんな1本となりました。
 
ボクシングの話です。
吉田監督自身、中学生の頃から30年以上、ボクシングジムに通い続けているそうです。
 
プロボクサーの瓜田(松山ケンイチ)は、ボクシングを愛してやまない男。
試合に出れば負けるから、彼のことを揶揄する者も多いが、
黙々とトレーニングに励み、後輩たちの面倒もよく見ている。

同じジムに所属する小川(東出昌大)は、瓜田の後輩でありながら、
いまや日本チャンピオン目前の連戦連勝の男。
同棲中の千佳(木村文乃)との結婚もまもなくだろう。

ジムにひょっこり現れたのは、ゲーム店に勤める楢崎(柄本時生)。
同僚女性の気を惹きたくて、「ボクシングしてる風」を目指す。
そんな楢崎の練習メニューを組むのが瓜田。

ありがちなボクシングの映画とはずいぶん趣を異にしています。
ボクシングとの向き合い方は三者三様。

瓜田の初恋の相手は千佳で、瓜田は実は千佳に勧められてボクシングを始めました。
でも自分が勧めたことを千佳は全然覚えていない。
その瓜田が後輩の小川をボクシングに誘い、
小川はみるみるうちに強くなったうえに、千佳の恋人に。

嫉妬しても不思議はないのに、瓜田はいつも穏やか。
ふたりに同様に優しく接し、僻む気持ちなどつゆほども見せない。
本当はどろどろした感情があるのではなんてことも思わせない。
それ以上に、彼が純粋にボクシングを愛していることを感じます。
松山ケンイチの見せる表情に引き込まれました。
小雪って、見る目あったんだなぁと今さらながら思う(笑)。

面白いのは柄本時生演じる楢崎。
ジムを最初に訪れた日、まず縄跳びをさせようとする瓜田に、
自分はしんどい思いなどしたくない、
あくまで「ボクシングしてる風」でいいのだと言い張ります。
なのにいつのまにかボクシングにハマってしまう。
 
東出昌大演じる小川はものすごく強いけれども、
パンチドランカーゆえの症状が出て、このままでは危ない。
勝つことに執着してやめないのかと思ったけど、
そういうことではないのだと最後は感じます。

ボクシング映画といえば、勝った負けたで熱くなるもの。
本作にはそういうところはほとんどありません。
なのに観終わってからの余韻が強く、
ボクシングから離れられない彼らの気持ちに寄り添いたくなります。

とても切ない。
エンドロール直前の瓜田の動きが忘れられない。
青コーナーを定位置としていた彼。
すごく良いタイトルだと思います。

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