夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『緑の牢獄』

2021年05月10日 | 映画(ま行)
『緑の牢獄』(原題:Green Jail)
監督:黄インイク
 
ほかに開いている劇場がないんですもの、行きますよね、十三
ナナゲイは阪急電車で行くのも便利ですが、
休日のガラガラの新御を通れば30分かからないうえに、駐車場が安い。
日中の最大料金が500円だから、電車で行くより安いんです。
そんなわけで、第七藝術劇場にて。
 
日本/台湾/フランスのドキュメンタリー作品。
 
台湾出身で沖縄在住の黄インイク監督。
『海の彼方』(2016)に続き、越境者たちの歴史に焦点を当てています。
 
橋間良子さん、90歳。
10歳のとき、父親に連れられて植民地時代の台湾から西表島に移住。
以来、ひとりになってもずっとこの島に住み続けています。
 
炭鉱に出稼ぎにやって来た父親。
そんな台湾人が少なくはなかったけれど、学校に行けば日本人からいじめられる。
台湾には親日家が多いという認識があったため、この事実がもう辛い。
どこかでいい話が出て来ますようにと願っていたのに、
日本に来てよかったと思えることなんてひとつも出て来ません。
 
優秀だったはずの長男は注射を受けた後にポリオになった。
炭鉱で働く台湾人はモルヒネの虜になり、一旦故郷へ帰ることがあっても、
台湾ではモルヒネが手に入らないからまた日本に戻って来る。
幸せだった頃なんて、まったくなかったのではないでしょうか。
 
沖縄。青い空が広がり、濃い緑に包まれた島でしょうに。
確かに美しい緑あふれるけれど、それはまさに緑の牢獄。
出て行く機会はあったはずなのに出ていかなった良子さん。
その気持ちは観終わった今もわかりません。
ひたすら悲しい。

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