夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『夏時間』

2021年05月13日 | 映画(な行)
『夏時間』(英題:Moving On)
監督:ユン・ダンビ
出演:チェ・ジョンウン,ヤン・フンジュ,パク・スンジュン,
   パク・ヒョニョン,キム・サンドン他
 
九条はなんとなく行きづらくて、たぶん20年ぐらいご無沙汰しているのですが、
緊急事態宣言発令下、大阪で開いている劇場は十三と九条だけ。
十三で観るものがなくなったら、九条まで行くしかありませんわね。
というわけで、超ひさしぶりのシネ・ヌーヴォーで3本ハシゴ。
 
テアトル梅田で観損ねた作品です。
韓国期待の新鋭、ユン・ダンビ監督による長編デビュー作。
第24回釜山国際映画祭で4冠に輝いたそうです。
 
父親が事業に失敗し、母親は家を出て行ってしまう。
長女で中学生のオクジュと長男で小学生のドンジュは父親と暮らしていたが、
家賃も払えなくなったのか、父親は突然祖父の家へ引っ越すと決める。
 
祖父が暮らすのは、今まで住んでいた家よりもずっと大きな一軒家。
ドンジュははしゃぐが、オクジュはなかなか馴染めない。
祖父もあまり元気がなく、無口だから、どう接してよいのかわからない。
 
ある日、祖父が倒れたのを機会に、父親の妹であるミジョンも家にやって来る。
明るく話しのわかる叔母が来てくれて、オクジュもドンジュも嬉しい。
しかしどうやらミジョンは夫と離婚寸前らしい。
 
こんな状況下で過ごすひと夏が描かれています。
雰囲気としては『はちどり』(2018)と似た感じ。
あれほど父親は高圧的ではないし、むしろどちらかといえば良い父親。
でも頼りなく、仕事もスニーカーの偽物を売っていたりして、
これじゃあ妻に逃げられるのも仕方ないなぁと思ってしまう。
 
何事も上手く行きそうにない家庭の中で、救いとなっているのはドンジュの存在。
祖父にも臆することなく声をかけ、家族みんなに目一杯の愛情を表現します。
だけどオクジュはそんな弟が鬱陶しい。
自分たちを見捨てて出て行った母親にも弟が連絡を取っていると知り、激怒します。
あんたにはプライドというものがないのかと。
ないよねぇ。まだまだお母さんのことが恋しい年齢だから、当たり前。
 
感情をあまり表さなかったオクジュが声を上げて泣くとき。
どこが良かったと説明しづらい作品ではありますが、好きでした。
こうしてみんな大人になって行くんだね。

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