音２

７月末らしからぬ涼しい夜は、
家中の窓を開け放って
テレビも消して、机に向かう。

蝉の鳴き声もやみ、
遠くを走るバイクの音や、
公園で奇声を発する夏休み中の若者たちに交じって
近所のマンションからお皿やグラスが重なる音や、
テレビを見て談笑する声なんかが聞こえてくる。

考えてみれば、
そもそもワタシの記憶にはそのような「サザエさん的な家族団欒な風景」はない。

それをさみしい、と言えない環境だったし、
実際、それがあまりにも当然なことだったので、
気づいていなかったのかもしれない。

いゃ、気づいてはいたが、
子供心に気付かない振りをしてしていたのかも…。
それもまたさみしいことだとは思うが。

なんにせよ、どこからともなく風に乗って聞こえてくる団欒の音は、
ワタシにとって手の届かない憧れのような照れくさいシーンで、
そのシーンにきっと自分は馴染まないのだろうなぁー、と
テレビをつけてごまかしてみたりする。