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カイユボット展 -都市の印象派- その2

2013-11-23 21:30:00 | 美術
見てきました

ブリヂストン美術館

会期は2013年10月10日から2013年12月29日。

都市を描いた印象派、ギュスターブ・カイユボット。
昨日「その1」を書いたので、今日は「その2」
Ⅲからギュスターブ・カイユボットの弟マルシャルの写真が展示されているⅥまでです。

《Ⅲ.近代都市パリの風景》
19世紀後半のパリは近代化により目まぐるしく変わっていきました。
1853年にセーヌ県知事に任命したジョルジュ=ウジェーヌ・オスマン男爵は、狭い路地に建物が密集していたパリを近代化させます。
カイユボットはパリ8区を拠点にし、変わりゆく都市パリを描きました。

ギュスターヴ・カイユボット「ヨーロッパ橋」
今回のチラシにも使われている作品です。
ヨーロッパ橋はサン=ラザール駅構内の上にかかる陸橋。
この橋を中心に放射状に伸びる6本の街路にヨーロッパの主要都市名が付けられていたそうです。
鉄でできた橋の旅情では欄干に頬杖をついて下を眺める労働者風の男性。
近くを犬が歩き、向こうからはシルクハットの男性と日傘をさした女性が歩いてきます。
奥に上がる白いもやもやは汽車の蒸気。
労働者風の男性と裕福そうな2人組みの組み合わせが意味ありげでおもしろい。
また作品にも広さや奥行きが感じられます。
色の組み合わせなどもすごく綺麗です。
カイユボットの作品は上品さがあります。
でも駅なのに音がなく静かな印象。
これは第3回の印象派展に出されました。

ギュスターヴ・カイユボット「オスマン大通り、雪景色」
オスマン大通り、、セーヌ県知事のジョルジュ=ウジェーヌ・オスマン男爵の名を冠した通りです。
暗い冬の日、建物の下、3分の2が影になる薄暗い大通りが描かれています。
大きめの筆致で描かれ、寂しげな冬という感じが伝わってきます。

ギュスターヴ・カイユボット「パリの通り、雨」
大きな通りを傘を差した男性と女性がこちらに向かって歩いてきています。
雨で濡れた石畳の路面に反射する光の表現などは驚きです。
印象派といいつつとても写実的。
背景には新しいパリの街並み。
奥行きを感じます。
構図もおもしろく、日常の一瞬を切り取ったといった感じ。
人の配置もちょっと離れていて、人は多いのに寂しいというか孤独感があります。
都会の景色ならではといった感じでしょうか。
カイユボットのパリを見つめる目って素晴らしい。
第3回印象派展に出品されたこちらの作品は、モネに贈られたそうです。

ギュスターヴ・カイユボット「見下ろした大通り」
こちらも構図がおもしろい作品。
自宅から見下ろしたとおりを描いた作品だそうで、ほぼ真上から見下ろしています。
街路樹に歩道を歩く人などが窓の外の光景そのままです。
カイユボットは本当に構図がかっこいい。
こちらは第7回印象派展に出品しています。

ギュスターヴ・カイユボット「建物のペンキ塗り」
カイユボットは労働者にも興味があったようです。
はしごをたて、ペンキを塗る人とそれを見る人が描かれています。
街中のある日の光景、といった感じです。
労働者を描いているのですが、洗練された感じがします。

ここには印象派展のカタログも展示されていました。
第2回、第4回、第7回のものでそれぞれカイユボットの名前が記されています。
第2回にはドガ、7回にはゴーギャンの名前もありました。
カイユボットは印象派展の開催に尽力しましたが、だんだんと距離を置くようになります。
そこにはドガとの対立のほか、印象派内の不仲など色々あったそうです。

《Ⅳ.イエール、ノルマンディー、プティ・ジュヌヴィリエ》
カイユボットはパリより南東18キロのイエールの別邸で夏を過ごしていたそうです。
そこには11ヘクタールもの広大なイギリス庭園があったそうです。
このイギリス庭園、イギリスのピクチャレスの影響を受けたものだったそうです。
ピクチャレスといえばターナーですね。
(ターナー展の記事はこちら→「その1」「その2」)
またその別邸の敷地内にはイエール川が流れ、そこで舟遊びをしていたとか。
金持ちっぷりが半端じゃないです。。
また1880年代にはその舟遊びの趣味が高じてレガッタ競技に参加。
夏をノルマンディーで過ごすようになります。
さらにその後の印象派展での活動に一区切りついたころにはセーヌ川の下流で、かつてモネが制作の血としていたアンジャントゥイユの反対側、プティ・ジュヌヴィリエに移住。
舟遊びやガーデニングなど趣味をしながら絵を描いたそうです。
あれ、この場合、絵も趣味なのかな。。
ここではそういった風景を描いた作品が展示されていました。

ギュスターヴ・カイユボット「イエールの庭園の樹木の下の小径」
これはイエールで描かれた比較的早い時期のものだそうです。
小路を木漏れ日がところどころ明るく照らし、奥には建物も見えます。
余分なものは一切なく静かな印象です。

ギュスターヴ・カイユボット「ペリソワール」
こちらチラシにも使われている作品。
ペリソワールとは一人乗りのカヌーだそうで、カイユボットは主題として度々描いているそうです。
1877年にボートを始めたカイユボットですが、とてもはまり後に船の設計までしています。
この作品は緑の中を流れるイエール川でカヌーに乗る人々が描かれています。
正面の帽子をかぶってこちらに向いている男性の表情は分かりませんが、全体的に爽やかです。
オールで掻き分けられる水の流れ、広がる波紋、水面に映る影、、、
鮮やかな色で描かれていてとても美しい。
明るい印象で軽いのかな、とよく見るとけっこう厚塗りです。

ギュスターヴ・カイユボット「シルクハットの漕手」
シルクハットに蝶ネクタイ、ベストを着た男性がボートを漕いでいます。
脇には上着が置かれています。
青と白のストライプのシャツがおしゃれ。
上流階級の遊び、といった雰囲気がたっぷりでした。

ギュスターヴ・カイユボット「イエールの菜園」
柔らかで明るい日差しが菜園を照らしています。
これは自宅の菜園を描いたものだそうです。
この地に今でも残っていて公園になっているそう。。
行かなきゃ!!

ギュスターヴ・カイユボット「イエールの平原」
これはイエールの庭の全景が描かれています。
カイユボットは部分部分では描くものの庭の全体を描いた作品が少なかったとか。
左には大きく高い木があり手前には草地。
かなり広い様子が伺えます。
パステルで描かれ優しい印象です。

ギュスターヴ・カイユボット「ジュヌヴィリエの平原、ポプラの樹」「ジュヌヴィリエの平原、ポプラの樹」
平原が広がっている景色が描かれたもの。
平原は区分けされ緑やオレンジ、黄色となっていました。
筆の使い方が大胆で明るい色彩で埋められています。
普通の景色なのですが、ここは現在、工業都市で面影がないそうです。。
絵の中は明るくのどかな景色なのに。。

ギュスターヴ・カイユボット「サン=クレールからエトルタへの道を行くマグロワール親父」
坂道を登る帽子をかぶった青い服の男性を描いた作品。
この男性、マグロワール親父と呼ばれている人ですが、この地の庭師さんだそうです。
日差しが暑いのか日陰にいるのですが、かなり暗く描かれているため、日の当たるところがかなり強い光なんだな、と考えられます。
エトルタは印象派の画家がよく描いた海岸。
この作品では、海が背景に描かれていました。

ギュスターヴ・カイユボット「向日葵、プティ・ジュヌヴィリエの庭」
夏の日差しのもと咲き乱れる大きな向日葵が描かれています。
向日葵はちょっとうねるように描かれていて、暑さにだれているような印象もあります。
その後ろには家。
もちろんカイユボットの家です。
カイユボットはここで家庭菜園をしたり温室で植物を育てたりもしていたそう。
か、金持ち過ぎ。。

ギュスターヴ・カイユボット「花咲く林檎の樹」
明るい日差しの中、薄いピンク色の花咲く林檎の樹。
畑の中にぽつんと1本。
背後に赤い屋根の建物が見えるのですが、向日葵にも描かれていた建物かな、、少し似ています。

ギュスターヴ・カイユボット「セーヌのプティ・ブラ、アルジャントゥイユ近く」
川と木々を描いた風景画なのですが、驚くべきはその技法。
点描で筆をおくように描かれています。
モネみたい。
川の流れには景色と光が反射し、左の木々には光が当たり黄色く描かれています。
空も赤みが入り、全体的に色鮮やか。

ギュスターヴ・カイユボット「セーヌのプティ・ブラ、秋」
雲で薄暗い空、その隙間から洩れる陽光。
木々は荒い筆致で描かれています。
川に反射する光も秋の物憂げな印象に変わります。

《Ⅴ.静物画》
静物画は展示数が少なめでしたが、これまた視点が面白いものでした。
肉や果物なんかは散歩をしていて通りすがりに目にした光景のように表されているとか。
また、花の静物を描くようになったのは1880年代前半で、この時期にプティ・ジュヌヴィリエでガーデニングに没頭していたそうです。

ギュスターヴ・カイユボット「鶏と猟鳥の陳列」
黒い背景に吊るされた鳥や並べられた鳥などが描かれた作品。
しっかり並べられているようすから確かに店先にも見えます。
物事を客観的に見ているという感じです。
これは「ジビエ」とよばれる狩りで捕まえた鳥たち。
猟の獲物を描いた絵は持主の地位を示す画題ですが、ここからはそういったものは感じません。

ギュスターヴ・カイユボット「猟鳥とレモン」
こちらも鳥が描かれていますが、無造作に大理石の机の上に置かれています。
先ほどの鳥はきれいに並べられ、店先みたいと感じましたが、こちらはまだ血のにおいがしそうです。
レモンはさながら清涼剤。
羽などは大きめの筆致で大胆に描かれています。

ギュスターヴ・カイユボット「ひな菊の花壇」
4枚セットの作品です。
濃い緑の葉のなかに白く繊細な雛菊が描かれています。
装飾的です。

《Ⅵ.マルシャル・カイユボットの写真》
最後に弟マルシャルの撮った写真が展示されていました。
「その1」でも書きましたがマルシャルはパリ官立高等音楽院を卒業。
長男のアルフレッドが司祭を務めるノートル=ダム=ド=ロレット教会にオルガン曲を作曲するなどもします。
ですが、音楽を専業とはしませんでした。
兄のギュスターヴと仲が良く、ボートの趣味もともにしていますし、お互いの芸術の才能を認め合ってもいました。
今回、マルシャルの撮った写真100枚が展示されています。
パリの様子や家族、庭園、ヨットなど画題と重なるものも多く、一緒に見ていてより理解を深められるようになっています。
「森の中を歩くマリー・カイユボット」が目を引きました。

とてもステキな展示でした。
今一押しで、年末の美術展大賞には確実にノミネートしてくるでしょう。
カイユボットの作品をこれだけまとめて見られる機会は今後そうそうないと思います。
印象派を支えた印象派
パトロンとしても画家としても印象派を支えたカイユボット。
カイユボットがいなければルノワールらの作品も残っていなかったかもしれません。
その審美眼と画家としての実力に感嘆です。
ぜひぜひ観に行って欲しい展示です。



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