RuN RiOt -marukoのお菓子な美術室-

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休日に全力で生きるOLの日記(笑)

木島櫻谷 -京都日本画の俊英-

2014-01-24 21:30:00 | 美術
見てきました

泉屋博古館分館

会期は2014年1月11日から2014年2月16日。

チラシからして惹かれます。
美しい日本画の世界が見れるのだろうと期待して行ってきました。

木島櫻谷(1877-1938)
今年が没後75年。
明治から昭和の京都画壇の第一人者とされました。
いち早く才能を開花させましたが、50歳頃からは画壇と距離をとるように。
郊外の自邸で書物に過去まれだ生活の中、制作していきます。
今回は各時期の代表作とともに、公益財団法人櫻谷文庫の未公開資料なども合わせて、その画業を振り返る展示となっています。

「奔馬図」
まず最初に目に付く作品。
墨の濃淡をうまく使い分け描かれたもの。
少ない筆数で走り抜けていく馬は躍動感あります。
27、8歳の作品。
午年に相応しい作品です。

《青年期 - 一気阿成の筆裁き》
幼いころから絵が好きだった櫻谷は16歳で父の知己であった今尾景年の門をたたきます。
景年は四条円山派の流れを汲み、花鳥画、山水画を得意としました。
櫻谷は歴史画を入塾前から志し、師風を忠実になぞる当時の風潮に飽き足らず、写生に出かけることが多かったそう。
ですが、師の景年は見守ったそうです。
理解のある師だったんですね。
そして櫻谷は20歳過ぎから頭角を表していきます。

「剣の舞」
太平記の逸話から着想を得た作品。
譲良親王と鎌倉幕府軍との戦で吉野城陥落前、最後の宴の場面です。
押し寄せた幕府軍に搦手から攻められた譲良親王は、もはやこれまでと観念。
自害を覚悟します。
最後の宴を開く譲良親王と兵士達。
譲良親王は刺さった矢を抜くことなく、酒を飲みます。
手前では血の付いた刀をに敵将の首を刺し、踊る兵士。
背景には散り始めた桜。
太平記ではこの場面は正月の16日となっていますから、桜が咲くこと、ましてや散ることはないのですが。
舞台が桜の名所の吉野山ということと、滅び行く者たちの運命を演出しているのかな。。
胸に迫る作品ですが、なんと24歳のときの作品。
この表現力の高さにびっくりです。

「咆哮」
六曲一双の屏風です。
左隻には逃げる鹿。
右隻には3頭の虎。
鹿は我先にと必死に逃げる様子に躍動感があります。
虎は太い筆で形作り、そこに毛を描きこんでいます。
素早く勢いを感じる筆使いで、虎の力強い声が聞こえてきそう。

「一夜の夢」
櫻谷には"桃村"の号で画家を志していた弟がいました。
が、23歳で夭折。
これは、病中の桃村の草稿をもとに描かれたもの。
武田勝頼一族の滅亡の場面のようです。
勝頼が居城に放火し逃亡する場面。
描かれているのは女性たち。
なぎなたを持ち立つのは北条夫人かと。
その周りには泣く女性たち。
右上からは煙が迫り、緊迫した様子が伝わってきます。

「寒月」
今回のチラシにも使われ、私も一番見たかった作品。
六曲一双の屏風です。
第6回の文展に出品され2等賞となりました。
私はたまらなく好きなのですが、これを酷評した人物がいました。

木島櫻谷氏は去年沢山の鹿を並べて二等賞を取った人である。
あの鹿は色といい眼付といい、今思い出しても気持ち悪くなる鹿である。
今年の「寒月」も不愉快な点に於いては決してあの鹿に劣るまいと思う。
屏風に月と竹と夫から狐だかなんだかの動物が一匹いる。
其月は寒いでしょうと云っている。
竹は夜でしょうと云っている。
所が動物はいえ昼間ですと答えている。
兎に角屏風にするよりも写真屋の背景にした方が適当な絵である。

なんて酷いことを言うんだろう。
さぞかし立派な作品を作るのでしょう。

夏目漱石です。

昨年、藝術大学大学美術館で「夏目漱石の美術世界展」で漱石の描いた作品を見たけれど。。。
"あんた、そんなこと言えるんかーい!!!!!"
となります。笑

描かれているのは雪の積もった竹林。
一匹、ぽつんと歩く狐。
モノクロの世界に月明かりが沁みます。
右隻は竹林と月。
左隻は竹林を歩く狐と左側はかすみの中。
まっすぐな竹にバランスよく配された広葉樹。
狐の毛並みや足跡までも丁寧に描かれ、静けさ漂う作品。

漱石としては西洋画のような写実的な表現を日本画に持ち込んだことが気に食わなかったそう。
そして「写真屋の背景」という評価になったのでしょう。
西洋画的写実を取り入れることにより、日本画らしさが欠如したことが気になったと。
当時の漱石は、絵でも書でも作為や企みが感じられるものを嫌悪する傾向がみられ、それがたまたま櫻谷の作品となってしまった。
しかし、日本画の世界としては、その10年程前に洋行から帰った竹内栖鳳が西洋画の技法を取り入れた作品を発表。
櫻谷は時代の変化に適応しただけの気がします。

私は好きです。
目当たらしさが気に食わなかったのか分かりませんが、今、見てもかっこいい作品かと思います。

《壮年期 - 写生画の新境地》
大正2年以降、文展の審査員も務めた櫻谷。
自らの画塾のみならず、京都市立絵画専門学校でも教えるようになります。

「老杉杜鵑」
墨で描かれた世界。
木に止まり、月夜に鳴く杜鵑。
木の描き方は大胆ですが鳥は詳細まで丁寧に描かれています。
上部は霞み、静寂を感じます。

「月下老狸」
櫻谷は"狸の櫻谷"と呼ばれるほど、狸の作品を描いたそうです。
晩秋の茂みからひょこっと顔を出したふわふわの狸。
とぼけた表情が可愛らしい。
空にはするどい三日月。
なんだか和む作品です。

「行路難」
二曲一双の屏風。
櫻谷には珍しい当世都市風俗を描いたもの。
右隻は木の柵と生い茂る柳。
これは唐詩「行路難五音」で「門前の柳」というつかの間の繁栄を意とするもの。
左隻は道端で荷を降ろして休む疲れきった親子。
この疲れきった表情からはつかの間の繁栄さえも感じられません。。
ピンク色のコスモスが頼りなげに風に揺れているのが印象的です。

「葡萄栗鼠」
画面を覆いつくさんばかりのぶどうの葉。
ふわふわのリスは顔料を重ね塗りして質感を描き分けています。
ぶどうもリスも増えていくということで子孫繁栄の吉祥画とのこと。
淡い色使いと構図がこれまで見てきたものとは少し違い、新鮮な印象です。

「画三昧」
質素な着物に袴の老人が描かれてます。
目の前にある画架を眺め、のけぞっています。
その傍らには山水画の巻物。
「三昧」は禅的観念で"雑念を取り払い、没入することで真の姿が捉えられる"というもの。
この姿は櫻谷で、自画像的なものになるのでしょう。

「峡中の秋」
甲州西部、昇仙峡の様子。
32歳のときに写生旅行で訪問しているそうです。
"胸中の山水"を描いたものでそのとき57歳。最後の帝展出品作。
山間を流れる川、霞かかる山頂。
色づく木々。
静かな作品です。

「青竹詩画賛」
自作の七言絶句。
一時的な虚名にこだわらず、草庵暮らしが一番。
毎日香を焚き、古人の書を眺めている。
といった内容。
そして描かれた2本の竹。
シンプルながら心打つものです。

《四季の金屏風 - 住友家のための屏風》
展示室2へ。
ここには住友家のために描かれた屏風が展示されていました。

「雪中梅花」
住友家のために描かれた四季連作屏風の冬。
金地に雪の積もる梅の大木。
つぼみの紅梅が雪の隙間から見え美しい。
雪の白も眩しく、冬なのに明るい印象の作品。

「柳桜図」
右には芽吹きの柳。
左には満開の桜。
桜が猛烈に降り注いでいます。
色彩も明るく生い茂る様子が春らしい作品です。

「燕子花図」
金地に燕子花。
琳派っぽい。
というか、琳派です。。
華やかです。

「菊花図」
満開の白い菊。
ところどころに赤い菊が見られますが、それもいい感じのアクセントに。
右上から左下へと咲き誇っています。

「白羽二重地金銀彩梅樹模様打掛」
孫娘もも子のための婚礼衣装。
身に付けたときのバランスなども考え、櫻谷がデザインしたもの。
白地に金の梅が描かれた華やかなもの。
とっても素敵です。
孫娘をかなり可愛がっていたそうですが、実際に着用されたのは櫻谷没後9年経ってから。
そして、この打掛、昨年、60数年ぶりに見つかったそう。
この春には玄孫の方が晴れの日に着用されるとか。
素晴らしい話です。
そしてこのようなものが伝えられていることがうらやましい。

以上になります。
とっても楽しい展示でした。
作品は素晴らしいし、早くから画壇で活躍していたのに、現在の知名度の低さに納得いかない気も。
もっとたくさんの人が知って、展示が開催されたら嬉しいな。
おすすめです。



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