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没後50年・大回顧 板谷波山の夢みたもの ―〈至福〉の近代日本陶芸

2014-01-30 21:30:00 | 美術
見てきました

出光美術館

会期は2014年1月7日から2014年3月23日。

今回は板谷波山(1872-1963)
近代日本を代表する陶芸家です。
激動の時代を生き、比類なく美しい、精妙な陶芸を残しました。
出光コレクションは日本最大の板谷波山コレクション。
約280件を所蔵しているそうですが、今回は厳選された代表作約180件の展示となります。

東京美術学校(今の東京藝術大学)の彫刻科で学んだ波山。
1つ上には観山、2つ上には大観がいました。
明治時代末期から大正時代にかけて頭角を表します。
彫刻の技を生かした「薄肉彫」で文様を精緻に浮彫し、そのうえに色を与え、きらめく釉薬をかけた「彩磁」や、光を柔らかく包む艶消し釉をかけた「葆光彩(ほうこうさい)」など、独創的な陶芸世界をつくりあげました。 
その功績は高く讃えられ、昭和9(1934)年に帝室技芸員に任命され、昭和28(1953)年には陶芸家として初の文化勲章を受章します。
昭和35(1960)年には重要無形文化財、いわゆる人間国宝の候補となりますがこれを辞退。
伝統の技法に与えられる指定に対し、自らの制作は芸術的創造である、ということがその理由。
日本の陶芸は縄文時代から、と考えると長い歴史を持ちますが、瀬戸焼、美濃焼、伊賀焼などの茶器、朝鮮半島の影響を受けて始まった伊万里焼、鍋島焼の磁器など、芸術的に高い評価を得ている作品さえも、ほとんどが無名の陶工によるもの。
野々村仁清のように個人名の残る陶工もいますが、芸術家としての「陶芸家」が登場するのは近世になってから。
波山は正規の美術教育を受けた「芸術家としての陶芸家」としてはもっとも初期の人となります。
陶芸家の社会的地位を高め、日本近代陶芸の発達を促した先覚者とされています。

《序章 <波山>誕生 -生命主義の時代と夢見る力》
波山芸術の〈原型〉
それは明治時代末期から大正時代に誕生しました。
ここでは初期の代表作が並んでいました。

1「彩磁アマリリス文花瓶」
美しく輝く白に赤紫の花が妖艶に咲き広がる作品。
艶やかな表に対し、裏は2つのつぼみのみとシンプル。
残された空間も余韻を漂わせ雰囲気がありとても素敵です。

2「彩磁桔梗文水差」
丸く優しいフォルムに優しい色の作品。
蓮の花が立ち上がり広がりながら薄紫の花を包んでいきます。
花の美しさ、輝きが溢れんばかりかのよう。
とにかく美しい。

3「葆光彩磁鸚鵡唐草彫篏模様花瓶」
濃い青がベースの大きな壷。
そこに鸚鵡と薄紅色の花がぎっしりと。
鳥は歌い、花は踊る、、そんな印象を与える作品です。

5「葆光彩磁葡萄文香爐」
6「彩磁葡萄文香爐」
これが素晴らしいのです。
5は光を包むといった意味の葆光彩(ほこうさい)。
6はきらめく光沢の彩磁。
どちらも白磁がしずくとなり垂れたかのような足がついています。
なめらかで美しい。
そして、どちらも形、施されている花はそっくりなのですが、まったく見え方が違います。
5は霞がかかったかのような景色で幻想的。
6はラメでも入っているかのゆな輝き。
どちらがいいか。。
どちらも素敵すぎて選べません。

《第1章 <眼>と<手> -陶芸を彫る、陶芸を染める》
波山の代表的な技法の一つ、〈薄肉彫(うすにくぼり)〉
これは、文様を浮彫するといったもの。
この彫刻文が、文様に"光"など様々なものをもたらします。
ここでは初期の作品から薄肉彫に至るまでの作品が展示されています。

7「彩磁牡丹文花瓶」
美術学校卒業後、石川県工業学校赴任時代の作。
釉薬の下に柔らかな筆遣いで花と蝶が描かれています。
といってもかなり見にくい。。
状態があんまりよろしくないのかな。。
ただ、色の鮮やかさは伺えます。
このころはまだ薄肉彫ではなく、筆で描いています。

9「彩磁紅葉雀文カップ」
初期には経済的理由から食器も手がけていた波山。
このコップは白くスリムなもの。
筆で紅葉に止まる雀が描かれています。
シンプルながら情緒感じる作品です。

11「葆光彩梅花文瓢形花瓶」
どっぷりとした形の壷。
濃い青に薄い青で梅を筆の面を使い描いたもの。
最も古い葆光彩の作品の一つです。
この作品は琳派的要素が高いのですが、波山は琳派や狩野派を模写し、それらは初期の作品に見られるそう。

12「れんげ草一輪生」
白地に描かれているのは赤紫の儚げな蓮華草。
淡い色合いが優しく、手元に置いておきたい可愛らしさのある作品です。

14「葆光彩磁波千鳥文壺」
青地に描かれるのは波と竹。
空飛ぶ千鳥。
日本画的情緒のある作品です。

19「彩磁蕪小花瓶」
丸く膨らんだ蕪をモチーフにしたもの。
上部はうすく赤みが差し、根もあり、本物そっくり。
こうゆうアイデアは楽しくていいですね。
つややかな丸みもかわいらしい。
このあたりから彫刻的造形となっていきます。

20「彩磁玉葱形花瓶」
波山はアール・ヌーヴォー様式の西洋陶芸を研究していたそうですが、この作品は今回の展示品のなかで一番強くその色が出ていたと思います。
形はたまねぎですが、緑、ピンク、白の交じり合った色彩が不思議な景色を作り出しています。
ガラスの光沢も美しいのですが、たまねぎの皮がめくれ翻る様子まで表現されているところに波山の技術と心を感じます。

16「鉄釉帆立貝水指」17「蝶貝名刺皿」
どちらも貝をモチーフとしたもの。
16は大きな帆立貝が包み込むかのような作品。
17は大きな貝の形をしたお皿。
17は貝に揺らめく海草も施されています。
アール・ヌーヴォーでは貝などはよく使われている印象。
これもその影響でしょうか。
神秘的な雰囲気があります。

21「八ツ手葉花瓶」
このあたりから薄肉彫になっていきます。
こちらはそれでもまだ彫刻的。

23「彩磁八ツ手葉鉢」
幻想的な色彩が目を引く作品。
器は葆光彩によって表現された、淡い光につつまれています。
21よりも大胆です。

25「棕櫚葉彫文花瓶」
大きな壷です。
色彩はなく、白一色。
そこを覆いつくさんばかりの棕櫚の葉。
葉の隙間には雷文が入れられ空白はありません。
彫りだけで葉の重なりを表現した作品。
技術の高さを見せられました。

24「葆光彩磁瑞花鳳凰紋様花瓶」
青い唐草文に覆われた壷に、えんじ色の羽根が美しい鳳凰が掘り出された作品。
細かいところまで掘り出されています。
色も細工も美しい。

28「唐花文花瓶(工程品)」
制作途中のもの。
彩色し、釉薬をかけ、焼成する前のものです。
完成品ではそこまで彫りの深さが分かりませんでしたが、けっこう深めに彫られています。
これがあの美しい景色を生み出すんですね。

《第2章 波山の夢みたものⅠ -色彩と白、そして光》
白、青、紅、黒、茶。
ここには様々な色の作品が並んでいました。
波山が色彩や光の表現を研究したようすがわかる作品が並べられています。

序章と1章でだいぶ時間をかけてしまった感じがします。
メモが簡潔になっていきました。笑

39「紫金磁葡萄文花瓶」
釉薬がとろりとかかった作品。
とても厚く、ぶどうの彫りも見え隠れしているほど。

41「鋼耀磁唐花文花瓶」
赤銅色です。
つや消し釉がかけられ、まるで金属のよう。
陶器とは思えない色と風合いです。

50「窯変磁花瓶」
リンゴみたいな色をしています。
丸みを帯びた部分が真っ赤なところ、底と首が白くなっているところが。
スタイリッシュです。

57「青磁鎬文鳳耳花瓶」
青磁です。
中国青磁の古典を土台とし、本歌にはない連弁や彫文が。
古典に対し、波山なりの解釈をつけた、とのこと。
すっきりとした青磁の美しさが際立つ作品です。

59「青磁蓮花口耳付花瓶」
これも57と同じく。
すっきりと美しいフォルムに花が開いたかのような口。
素敵です。

70「白磁紫陽花彫篏紋様花瓶」
ここからは白磁が続きます。
波山は白磁に「氷華磁(ひょうかじ)」「葆光白磁(ほこうはくじ)」「凝霜磁(ぎょうそうじ)」など、白のちがいを呼びわける美しい名をつけていました。
そしてその名を自然のものからとる優しさを感じます。
この作品につけられた名前は「白磁」のみ。
輝くような白さです。
薄肉彫ですが、花が一番高くなるようにされています。
そして、一番濃い。
華やかさがより際立ちます。

73「葡萄文水差」
こちらは「氷華磁」
字の如く氷のような白。
少し青みがあります。
私が見たところでは流氷のような氷かな。
冷たい海にある氷。
彫りがくっきりと見えます。

85「蛋殻磁香爐」
こちらは乳白色の「蛋殻磁」
赤紫色の貫入が入ります。
淡い色彩で優しい印象です。

91「凝霜磁鯉耳水差」
こちらは「凝霜磁」
その名の通り、霜をイメージした白。
薄肉彫の彫線の周りに釉が青灰色に溜まり、それが細かい凝りとなって霜のように見えることから。
美しいです。
全てが。

98「葆光白磁牡丹文花瓶」
上にのみ文様が入れられ、下はすっきりとしています。
清らかな美しさです。

102「葆光彩磁紅禽唐草小花瓶」
これは素晴らしいです。
唐草と小花に囲まれ鳥が施されているのですが、鳥が下から光を受けているかのようになっています。
そして鳥の見つめる先も白い空間。
そこから光と奥行きを感じます。
小さい器から大きな世界が広がっていました。

《第3章 波山の夢みたものⅡ -鉱物・天体・植物・動物》
波山の意匠は、同時代の芸術や科学がもたらした新しい美と共に育ちました。
ここでは鉱物などへの美的感心が見て取れる作品が並んでいます。

さて。
ここで大変なこと気付きました。
"あと50分で閉館時間!!!!!"
14時半ごろから入ってたのに。。
のんびりしすぎたー!!!!!
ここから急いで見たため、メモはさらに簡潔になっていきます。。。

104「曜変磁鶴首花瓶」
不思議な色彩です。
なんと表現したらいいのか。。
そこには六角形の意匠が。
これは結晶だそう。
科学の美を取り入れた珍しい作品です。

106「朝陽磁鶴首花瓶」
まさに、朝。
赤から黄色、紫、青、、、だんだんと変化していく色は空模様。
橙色と紺色の窯変に金の星。
宇宙的な美しさです。

109「曜変天目茶椀 銘 天の川」
110「天目茶椀 銘 黎明」
111「曜変天目茶椀 銘 星月夜」
この3点も天体をイメージしたもの。
まさに星の如く、天目が輝いています。
銘もすばらしい。

121「彩磁笹文花瓶」
淡いブルーグリーンに笹を大胆に配した作品。
勢いを感じる作品です。

124「笹水指」
こちらも笹。
ですが、121とは違い静かな印象です。
葉の付け根や小さな笹の葉にはうすい桃色が施され、細部まで美しい。

130「葆光彩磁草花文花瓶」
施されているのはチューリップ。
珍しい印象です。
たおやかな花は淡い色彩で弱さを感じつつも、自立し、美しさをみせています。

131「葆光彩磁牡丹文様花瓶」
葆光彩白磁に赤紫色で牡丹。
柔らかく踊るような牡丹と唐草が印象的です。

143「彩磁紫陽花香爐」
ピンクと紫の紫陽花の花が美しい作品。
優しく輝くような色彩です。

145「彩磁印旬亜文花瓶」
鹿、水牛、鳥、、、
切り絵のように施された動物たち。
白磁に緑と変わっています。
エキゾチックというか民族的な印象です。

147「葆光彩磁磁呉洲模様鉢」
見つめあう2羽の鳥、2羽のウサギ、2匹の魚。
花は淡い紅色、外側は白く溶け込むようです。
童話の世界を表現したかのような可愛らしい作品。

《第4章 あふれる、夢の痕跡 -図案と写生》
ここでは図案やスケッチが並べられていました。
何度も書き直したあとなどが見られます。
また、展示品にあったもののスケッチも。
美しい世界を作り出すための苦悩が見えました。

《終章 至福の陶芸》
時代が変化しても、変わらぬ姿勢で美しいもの無垢なものを夢見続けた波山。
それらは見るものを至福の世界に連れて行きます。
ここではまさに今までの集大成といった作品が並んでいました。

167「淡黄磁扶桑延壽文花瓶」
大きく花開く芙蓉。
柔らかく揺れるつぼみと2匹の犬。
全体的に暖かい印象の作品です。

171「葆光彩磁桃文花瓶」
やわらかな光の桃。
葉と枝は絡むようにし、模様を作り上げています。

181「天目茶碗 銘 命乞い」
赤から黄色へ、夕闇の空色のグラデーションが美しい作品。
目を引くのは銘、命乞い。
波山は小さなキズも許さず、窯出しの際にキズのあるものは全て壊していたそうです。
これもキズがあり、波山は壊そうとしたのですが、出光佐三がその美しさを惜しみ頼み込んで貰いうけたのだそう。
だから「命乞い」
壊されなくて良かった。

184、185「椿文茶碗」
これは亡くなった年に作られた作品。
いわば91歳での絶作です。
まさにこれから花開こうかという大きなつぼみ。
なんというか、、希望に満ち溢れた作品です。

時間ぎりぎり。。。
というか、むりやり見たよ。
美術館では時間配分がかなり重要だね!!!!!
最後、展示室には他の方が1人しか残っていませんでした。
あぁ、、なんかもったいないことしてしまった。。。
というか、こんなに鑑賞に時間かかると思わなかった。
じっくりじっくり見てしまいました。
「波山の前に波山無く、波山のあとに波山なし」と中島誠之助は言ったそうです。
なんと的を射る言葉。
いや、波山のあとに波山を越える人を見たいものですが。。。
初期から晩年までを網羅する今回の展示。
戦争や震災を乗り越え、91歳で亡くなるまで。
ひたすら美しいものを求めた波山。
理解しやすく、見やすい展示でした。
楽しかったです。
ファンになりました。
美しく清らかな世界は、どれだけ見ても飽きません。



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