がんばらないでおこう日本

「がんばろう日本」って合言葉がはやってる、体育館でバレーボールチームを応援するような感じで…。

家を失くして、家族を亡くして、避難所生活や仮設住宅に入った人たちのたぶん過半数は「がんばろう日本」に励まされているのだろう。でも、喪失感にへたり込んでいる人が少なからずいるということも忘れないでおくべきじゃないかな。仮設住宅に当たっても避難所から引っ越さない人がかなりいたというニュースを聞いたとき、たぶん引っ越さない人の何割かはもう動く気力もない人たちなんだろうなぁって思った。すでに「３食昼寝付き」の避難所生活に依存してしまった人たちだとも言えるけど、それを非難することが、果たして、ずっと「３食仕事付き」で生活している人に許されることなのか。税金を投入している復興事業だし、町には失職してホームレスになった人があふれていることを考えると、理屈としては非難する権利はなくはないが、被災者たちの深い喪失感は、たぶん「３食仕事付き」の人たちの想像力が届かないところにある。

津波は何十万人というひとの生活を一瞬にして奪って、人々を絶望のどん底に落としこんだ。そしていま、喪失感が人々からとても大事な力を奪い始めているような気がする。プロを引退後、子ども野球教室を積極的に開いていた伊良部が、東北の震災復興支援のためのチャリティ試合を計画していたらしく、最近はそのための練習をロスでしていたようだ。で、その野球仲間がさっきテレビでこんなことを言っていた。「最後となった練習で、『たま、スピードでないよ、もう投げられないかもしれないな』って、人生の弱音を吐くことはあっても、野球で弱音吐くことは初めて聞いたので、これはなんかおかしいなって感じました」。