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ゆめと心理と占いのはなし
Por donde, amor, he de ir?
 Rosalia de Castro

無意識と退院促進

2012-04-28 00:17:19 | 日記
「愛することと働くこと」というフロイトの言葉がある。人間にとってもっとも大事なことは?と問われたときの、彼の答えであった。人間が過去の抑圧経験から明るく前に一歩踏み出すことへの彼なりの真摯なエールだったのだと思う。口唇期、肛門期、男根期といった発達段階のなかで、失敗を重ね、愛着対象を獲得し、もがきながら築かれた自己が、愛する人を見つけ、働くことで社会に居場所を見つけていく。ある意味、この言葉はフロイトにおいて、エリクソンの自己同一性の獲得、さらに成人期後半のその再獲得に通ずる概念だったように感じる。

一方、ユングは思春期や発達段階の区分にあまり意味を認めず、「人生の午後」という言葉を使って、成人期における自己同一性の揺らぎに前向きな解釈を与え、それを再構築しようとする人の背中を押した。人はおよそ35歳から40歳で人生の正午を迎え、フロイトのいう幼児期の抑圧や、遺伝子に組み込まれたとしか言いようのない集合的無意識や元型の発現と折り合いをつけて、個別的な豊かさを大事にして生きていくことにエールを送った。

無意識の存在を認めようとしない人たちもいる。行動の修正で人が心に抱える障害を取り除くことができると主張する人たちもいる。ぼくは基本的にフロイト派だけど、どの考えにも一理があって、魅力を感じるので、反発しない。ただ、精神科病棟の慢性期患者さんが人生を折り返していく意味合いを持つ、地域移行に関しては、適応できていない無意識に何らかの支援の手を差し伸べていくことが必要なのではないかと感じている。発病までの経緯に全く無関心なままの退院促進事業は、どうしても回転ドア状況を生み出すだけで医療費の無駄遣いだと感じてしまう。

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