MELANCOLICO∠メランコリコ!

ゆめと心理と占いのはなし
Por donde, amor, he de ir?
 Rosalia de Castro

アサーション

2012-04-29 15:36:10 | 日記
「上に行きますか?」と20代とおぼしき女性がパソコンで本の返却処理をしながらカウンター越しに言った。ぼくは少し間をおいて「え? 駐車場が上だから上に行きますよ」と答えた。「でしたら、青い本は上で返却してほしいんですが」。

ぼくは図書館の女性の言っていることを理解するのに約10秒かかった。要は、赤いシールの本(児童書)があってそれは下の階で管理し、シールが青い本(一般書)は上の階の本なので上で返却してほしいということだった。ぼくは、どちらの階のカウンターで返却してもよかったんだけど、ちょうど予約していた本の受け取りが下の階のカウンターだということで、下の階にわざわざ階段で下りて、予約本の受け取りをして、ついでに借りていた本の返却をお願いしただけだった。

ぼくは、最近読んだ平木典子さんのアサーションの本の内容を思い出した。アサーティブな表現とは「自分も相手も大切にした自己表現」であり、両者の不快感の発生を最小限にしようとする表現手法である。平木さんの本には、こうした事例はなかったように記憶するが、基本的に図書館の女性の内面には次のようなことが生起したはずである。「上に本を上げる仕事が増える」「でも、そんなこと言ったら利用者は怒るかもしれない」「利用者に負担増を強いない形で上で返却処理をさせるにはどう言ったらいいか」etc..

でも、たぶん、彼女の中では「上の本は上で返却処理をしてほしい」と言えば、利用者はきっと「役所仕事だ」と怒り始める。そう言われたと投書される、という思い(被害者意識)がとても強く働いたんではないだろうか。心を開いて言えてないことは、図書館の職員の中で使われている言葉である青い本、赤い本という言葉が彼女の口をついたことからもわかる。

もしぼくが彼女の立場だったらこう思うだろう。
「この人は予約の本を受け取りに来たので、そのついでに返却処理を頼んできた。でも、大人の人だし、上から下りてきたみたいだから、きっとまた上に戻るに違いない。だったら、予約の本の貸出処理だけをして、『ご返却の本は一般書なので、お手数ですが、上の階へ戻られるのでしたら、上の階のカウンターでお願いできますか。この階は児童書の階なので、申し訳ございませんが』と言おう」となったと思う。

ただ、この図書館は上の階がメインの入り口で、入口の前に広い駐車場があるので、親子連れなどが本を返却しに来るときは、ほとんどみんな上の階で「赤い本」も返却処理してもらっている。

アサーションの本を読んで物足りなかった部分は、何で非アサーティブな表現しかできない人がいるのか、その人たちのこころの中はどうなっているのかといったことに踏み込んでいないところだった。ただ、平木典子さんが認知や無意識について素晴らしい論文をいくつも書いておられることはよく承知している。

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