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我が家の犬はいづこにゆきぬらむ

2011-11-06 13:33:23 | 編集手帳



  

  11月1日付 読売新聞編集手帳


  古文にむかし泣かされた身は、
  岩波書店の『日本古典文学大系』に長く恐れをなしてきたのだが、
  ひらいてみれば愉快な作品に出会うこともある。
  〈椀(わん)椀椀椀亦(また)椀椀/亦亦椀椀又(また)椀椀…〉
  
  愚佛(ぐぶつ)『犬の咬合(かみあい)』と題する江戸期の漢詩という
  (巻89「五山文学集 江戸漢詩集」より)。
  作者は、
  夜の闇を通して犬の鳴き声を聴いている。
  このへんてこりんな漢詩を、
  しかし、
  心からは楽しめない人もいるだろう。

  
  原発事故の警戒区域などから避難した人は犬や猫の鳴き声を耳にするたび、
  残してきたペットの身を案じて胸を詰まらせているに違いない。

  福島県の「動物救護本部」が、
  警戒区域などから保護したペットの預かり先を探している。
  ペットも保護施設での生活が長期化して疲労が目立つ。  
  飼い主の了解を得られた犬や猫は
  「温かな家庭で落ち着いて過ごさせたい」
  という。
  もっともである。

  「ワンワンワン」(1・1・1)の語呂合わせで、
  きょうは「犬の日」という。
  〈我が家の犬はいづこにゆきぬらむ今宵(こよい)も思ひいでて眠れる〉(島木赤彦)。
  懐かしいわが家で一緒に暮らせる日が、
  一日も早く来ることを。

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