2021年2月12日 NHK「おはよう日本」
5万回斬られた男。
東映京都撮影所の俳優 福本清三さん(77)。
数多くの時代劇に“斬られ役“として出演。
名前もセリフもない役がほとんどだったが
全力で演じ続ける姿は人々の心をとらえ
ハリウッド映画にも出演した。
亡くなって1か月余。
その生き方に励まされた人たちが追悼の思いを寄せている。
1月下旬
京都市で福本さんが出演した映画の追悼上映が行われた。
「太秦ライムライト」。
映画は
時代劇の斬られ役を描いた
福本さんの人生と重なるストーリー。
70歳を過ぎて初めて主演を務めた。
(観客)
「時代劇が当たり前の家庭で
いつの間にかファンにという感じ。
頭に残りますね 強烈に。」
「斬られるところ
すべてが美しい。
どんなつまらないようなことでも一生懸命やるってことですよね。」
15歳の時に東映京都撮影所に入所した福本さん。
時代劇を陰で支える大部屋俳優として
斬られ役や通行人など
無名の役を50年以上にわたって演じてきた。
主役の強さを引き立てるため
大きくのけぞりながら倒れる独特の斬られ方。
その演技にはひとつの思いがあったと語っていた。
(「UZUMASAの火花」より 2014年NHK放送 福本清三さん)
「日本中で1人でいいから俺を見てくれるひとがいるように自分でしよう。
どこかで誰かが見てくれることを何かしないといけない。
だからこそやらないといけないんだと
ぼくは何かのときに感じたんですよ。」
どこかで誰かが見ていてくれる
その思いを胸に撮影所にある道場で黙々と稽古にうち込んできた。
40年近く交流があった殺陣師の清家三彦さん。
日々の努力は画面に存在感として現れていたと振り返る。
(殺陣師 清家三彦さん)
「妙に道場が騒がしいなと思ってそっとのぞいたら
1人でなぎなた振ってたり。
あそこに福本さんいるなっていうくらい
メインの動きでなくても全力でやられている。」
福本さんの役との向き合い方は
時代劇に出演する俳優のお手本にもなっている。
東映太秦映画村で行われているチャンバラショー。
この日出演した50代のベテラン俳優には
今でも忘れられない撮影現場での福本さんの姿があるという。
(俳優 松永吉訓さん)
「福本さんはその時代の人になり切る。
みなさん寒かったら足袋履かれるんですけど
素足にわらじとか
そういうのを守っておられました。
ぼくも役者やっていく以上は受け継ごうと思っています。」
小さい頃にショーで見た福本さんの立ち回りに憧れて入所した若手俳優もいた。
(俳優 岡内学さん)
「たとえ端っこの方の見えない役でも
絶対誰かは見ていてくれる。
自分ももっと頑張って
ぼくらが時代劇を引っ張って行ければ。」
スポットライトはあたらなくてもどんな役でも全力で挑む。
福本さんの積み重ねたその思いは
次の世代へと受け継がれている。