2月10日 NHKBS1「国際報道2020」
水の都ベネチア。
街のシンボルである運河でパレードが行われ
行きかうボートの上で繰り広げられる派手な演出が詰めかけた観客を魅了する。
伝統のカーニバルの幕開け。
カーニバルでは人々が思い思いの仮面をつけて参加するのが中世からの習わし。
ふだんとは違うひと時を楽しめると観光客に人気である。
「仮面をかぶると恥ずかしさや怖さがなくなります。
ベネチアとカーニバルが大好きです。」
しかし今年はこのカーニバルに異変が起きている。
(ゴンドラの漕ぎ手)
「いつもと比べるとはるかに人が少ないよ。」
初日に訪れた観光客の数は去年より40%以上減った。
毎年この時期満室が当たり前のホテル業界では
(ベネチアのホテル協会 副会長)
「キャンセルどころか予約も入りません。
最大のかき入れ時なのに。」
空室が全体の30%にのぼり
価格を下げざるを得なくなったという。
原因は去年11月の記録的な高潮である。
潮位が過去50年で最も高い187センチに達し
水に浸かったベネチアのイメージは世界中に広がった。
街を象徴する教会 サンマルコ大聖堂も内部まで浸水。
床の貴重なモザイクが傷つくなど
前例のない被害に見舞われた。
(サンマルコ大聖堂 技術責任者)
「窓を割って
川のように水が流れ込みました。
この高さまで水が来たんです。」
ベネチアで30年以上仮面づくりをしてきたセディジィさん(62)も
大きな影響を受けた1人である。
伝統の職人技を受け継ぎ
豪華な装飾の仮面など工夫を凝らした作品を多く作ってきた。
しかし
(セディジィさん)
「道具や材料が全部水浸しになってしまったんだ。」
さらに新型コロナウィルスの影響で中国人観光客も大幅に減少し
服や仮面のレンタルの予約はほとんどキャンセルされた。
(セディジィさん)
「観光客が激減して仕事がなくなった。
まったくひどいものだよ。」
地元自治体も危機感を強めている。
ベネチア市はカーニバルに合わせて外国メディアを招待。
“暮らしはもとどおりになっている”と強調した。
特別に案内したのが
高潮への切り札とされ
いま進められている防潮堤の建設現場である。
ふだんは海底に沈んでいるが
高潮が発生すると空気で浮き上がる仕組みになっている。
完成予定は来年末としているが
ベネチアのブルニャーロ市長は
防潮堤が今年夏にも緊急時には稼働できると見通しを明らかにして
懸念の払しょくに努めた。
(ベネチア ブルニャーロ市長)
「巨大な高潮が発生した場合この防潮堤で防ぐ。
街は安全だと約束できる。」
苦難医直面するベネチア。
仮面の裏側に笑顔が戻るのはいつになるだろうか。