6月24日 国際報道2019
いま世界ではしかが猛威を振るっている。
はしかは極めて強い感染力を持ち
38℃前後の高熱と発心が特徴である。
WHO世界保健機関によると
去年の患者数は前年より30%増えて死者は約13万6千人にものぼる。
はしかはかつて日本でも毎年数十万人が感染する病気だったが
ワクチンが普及したことで年間数百人程度にまで減少していた。
世界でいま患者数が増えているのは
国境を越えての移動が活発になったことに加え
先進国で科学的でない情報に基づいてワクチンの接種を拒否するという動きが広がっていることもある。
5月にニューヨーク州の議会前で開かれた集会。
参加者が掲げるプラカードにはワクチンの接種を真っ向から否定する言葉が描かれていた。
“ワクチンを強制するな”
“ワクチンは安全ではない 効果もない”
熱狂的な支持者に迎えられたのは
ケネディ元大統領のおいで
反ワクチン運動の中心人物 ロバート・ケネディ・ジュニア氏である。
(ロバート・ケネディ・ジュニア氏)
「国家機関や国際機関が言えばワクチンは安全なのか?
子どもたちを国を民主主義を取り戻そう!」
(参加者)
「今後は子どもにはワクチンを接種させない。」
「安全ではないからね。」
アメリカで今年に入って確認された患者は1,000人を超え
過去20年で最も深刻な事態となっている。
流行を拡大した理由の1つとして指摘されるのが
ワクチンの接種を拒否する運動の存在である。
(米 疾病対策センター 医師)
「誤った情報によりワクチン接種率が下がり
はしか流行が深刻化している。」
ネット上にはワクチンの危険性を強調する情報があふれている。
こうした情報がSNSによって拡散されているのである。
ワクチン拒否の運動に参加するウィニンガムさん。
2人の娘を育てるなか
子どもがワクチンで被害を受けたと主張する女性のSNSを見たことが
ワクチンの拒否するきっかけになった。
(ウィニンガムさん)
「“ワクチン被害は100万人に1人”なんておかしいわ。
世界中を探してもそんな安全なものは水くらいよ。
こういうリンクページに自己免疫性疾患の話が掲載されているわ。
大勢の人が彼女に共感して参考にしているの。」
はしかのワクチンによって自閉症が引き起こされる
ワクチンに含まれる金属が病気の原因になる
子育て世代の親たちを中心にインターネットの情報を信じる人が増えている。
しかしワクチンの専門家は
こうした情報の多くは医学的な根拠がなくウソの情報だと指摘している。
(ワクチンの専門家 ピーター・ホッテズ教授)
「親がワクチンについて医学的な情報を得ようとすると
ほぼ確実にフェイクニュースと呼ばれる間違った情報を手にしてしまう。」
ワクチンを拒否する運動の拡大は子どもたちの学校生活にも影響している。
今年に入って約80人がはしかに感染し非常事態宣言が発令された西部のワシントン州。
流行の原因はワクチンの接種率の低下である。
流行を防ぐには90%以上の接種率が必要とされているが
一部の学校では40%程度にまで低下。
危険にさらされたのは健康上の理由でワクチンを受けない子どもたちだった。
(小学5年生 リリーさん)
「友だちにも先生にも会えないのがさみしい。」
生後間もなくから心臓の病気で手術を繰り返してきたリリーさん。
ワクチンの接種が受けられないため学校の始まった1月から学校を休んでいる。
こうした子どもはリリーさんの地元だけで約500にんにのぼる。
(リリーさんの父親)
「皆が予防接種をしかるべき時に受けていればこんな会話などしません。」
(地元保険局 メルニック医師)
「はしかは人を殺しうる病気。
子どもが安全に過ごせるようにすべきだ。」
ワクチンの接種する動きは今アメリカの人々の健康や命をも脅かし始めている。