8月26日 おはよう日本
イスラム教徒が一生に一度は行うべきとされる大巡礼「ハッジ」。
何百年も前から巡礼のかたちは変わっていない。
メッカとその周辺の巡礼地を5日間ほどかけてまわる。
予言者ムハンマドが最後の説教を行なったとされる山では
40度を超える炎天下
巡礼者たちが半日にわたって神に祈りを捧げていた。
(エジプト人巡礼者)
「この場所に来る日を何年も待ち続けていました。」
(パキスタン人巡礼者)
「なんと言ったらいいのでしょう。
本当に光栄です。」
期間中 国の内外から200万人もの巡礼者を受け入れる一大イベント。
聖地での雑踏警備や夏の熱中症対策
それに感染症対策から言葉の問題まで
課題は多岐にわたる。
巡礼希望者が増え続けるなか
サウジアラビアは安全な受け入れ対策を迫られてきた。
そこで政府は8月初め
スマートフォンのアプリなどを開発するコンテストを開いた。
3日間で課題の解決につながるシステムを競う。
世界中から招いたのは
技術者や
社会問題に取り組むグループなど約3,000人。
旅費や宿泊費はサウジアラビア側が全額負担した。
日本からも20人以上が参加。
大学1年生Hさんは国際的なプロジェクトを手掛けるサークル仲間とともに応募した。
Hさんたちが注目したのは
初めてのサウジアラビアで体験した猛烈な暑さ。
そこで思いついたのが
巡礼者に水分補給を促すアプリである。
巡礼者が歩いたルートや距離
気象条件などに基づき
身長や大樹に応じて水分補給の最適なタイミングを通知する。
「誰もができる水を飲むという小さな行動から変えられると注目しました。」
水分補給をしてボタンを押すと
木が成長し
体の状態が把握できる仕組みを作った。
主催者側に感想を求めると
「おもしろいね。」
しかし思わぬ指摘を受けた。
「使いたいと思ってもらわないとね。
ハッジの最中はそこが難しいんだよ。」
どうしたら巡礼者にアプリの必要性を理解してもらえるか。
審査ぎりぎりまで議論する。
「どんな感情を利用者に受け取ってほしいのか
考えたらいいと言われて。」
「健康にいいと言われて幸せみたいな。」
「宗教的な自分の目的に集中して
アプリが健康的な心配を除いてくれるような存在になったら
巡礼に集中できるよね。」
いよいよ審査。
(Hさん)
「健康無しに巡礼はやり遂げられません。」
結果は
「優勝は“通訳”チームの皆さん!」
優勝したのはサウジアラビアの女性チームである。
アラビア語を理解しない巡礼者が困らないように
道案内の看板などを翻訳できるアプリを開発。
賞金の3,000万円は実用化に向けた開発資金に充てられる。
Hさんたちは惜しくも入賞を逃した。
(Hさん)
「サウジアラビアは若い創造力を持つ方々に力を注いでいる印象を強く受けました。
もっとトライアウトできたらなというモチベーションに変わりました。」
千年以上も前から続くイスラム教の大巡礼。
その伝統に
若者たちの発想と先端技術が生かされようとしている。





