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首都高の未来

2018-09-04 07:00:00 | 編集手帳

8月19日 編集手帳

 

 旧ソ連のSF映画「惑星ソラリス」は未来都市を描く。
ビルの谷間を縫うハイウェーは東京都心の首都高速道路の映像だ。
ロシア映画の巨匠タルコフスキー監督が1971年に撮影した。

首都高は東京五輪までの開通が至上命令だった。
用地買収の手間を省き、
河川や道路上に高架を通した。
川沿いに曲がりくねる高架の建設は、
過去にない高度な技術を要す。
行政と土木、
建築、
鉄鋼業界が総力を挙げた。

タルコフスキー監督は「建築では疑いもなく日本は最先端だ」と日記で称(たた)えている。
残念なのは、
五街道の起点、
日本橋が高架に覆われることだった。

干拓した川底に首都高を通す案は、
役所の河川担当の反対に遭う。
日本橋生まれの詩人、
高田敏子さんは〈東京という都会が美人に生まれ変わるための整形手術〉と自身に言い聞かせた(『首都高物語』青草書房)

そんな日本橋に青空が戻りそうだ。
周辺の高架を撤去し、
首都高は地下を通す案である。
国土交通省や都が、
次の東京五輪後の着工で大筋合意した。
五輪まで2年足らず。
戦後復興を象徴する五輪へ汗をかいた日本人に、
改めて思いを馳(は)せたい。


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