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森林の恩恵

2018-01-25 07:00:00 | 編集手帳

1月7日 編集手帳

 

 正月の縁起物に、
「喜ぶ」に通じる昆布がある。
おせち料理の昆布巻きに舌鼓を打った人は多いだろう。

北海道・襟裳岬産の日高昆布は人気の銘柄である。
かの地の昆布漁は苦難の歴史を持つ。
明治以降、
岬一帯は木々の乱伐で地表がむき出しになり、
「えりも砂漠」と呼ばれるようになった。
土砂が海に流出し、
それまで採れていた上質の昆布が育たない。

戦後、
昆布の再生を懸けて漁業者らがクロマツを植え始める。
生え揃(そろ)ってきたのは1980年代頃からだ。
すると、
腐葉土の栄養素が海に溶け出し、
豊富なミネラルを吸収した昆布が復活した。
濃厚な味わいは森の恵みでもある。

手入れの行き届かぬ森林は、
今や全国に広がる。
政府は整備費に充てる森林環境税を2024年度に創設する方針だ。
全ての住民税納税者から年1000円を集める。
森林面積に応じて自治体に配り、
間伐や植栽を行う。
山間部から離れた都市部の住民にとっては、
無駄遣いだけは避けてほしいところだ。

襟裳の人々は「山が荒れれば海が荒れる」との思いで植林に励んだという。
森林が社会にもたらす恩恵は何か。
改めて考えたい。


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