12月2日 経済フロントライン
日本の漁獲量は下がり続けている。
全体が減っているうえに安定して獲れないという問題もある。
今年の場合は
秋サケやサンマ スルメイカが不漁。
一方でマイワシや場所によってはブリやタコが豊漁となった。
そこで注目されるのが養殖である。
10月10日 北海道釧路沖で秋サケ漁に向かう漁船。
(幌内漁業部 川原田良己代表)
「秋サケ漁はあと10日で終わりだから
出るたびに期待してるけど。」
漁を指揮する川原田良己さん。
この道30年のベテランである。
この日 漁に出るのは4日ぶり。
燃料費や人件費を節約するため漁の間隔を開けざるを得ない。
期待していた水揚げである。
しかしいつも以上に少なく
この日取れたのは63匹。
採算をとるのに必要な300匹にはまったく届かなかった。
30年の漁師人生の中でも今年の不漁は最も深刻で
廃業する人が出かねない状況だという。
(幌内漁業部 川原田良己代表)
「はっきり言って赤字だよ。
本当に魅力が亡くなっちゃった 漁師の。」
秋サケの不漁は地元経済も圧迫している。
市内にある水産加工会社。
パートも含め約100人の従業員でサケの切り身やイクラのしょうゆ漬けなどを作ってきた。
秋サケの不漁でイクラの生産量が去年の7割ほどに減少。
サケだけでは仕事にならないため
今年からイワシの加工の分量を増やした。
(阿部商店 阿部英晃社長)
「イワシとかサバとかでなんとか補おうとはしていますが
サケのマイナスをカバーできるまでは至らないと思う。」
秋サケが不漁の中で攻勢に出ている企業がある。
この日スーパーで行われていたのは“北極圏サーモン大試食大会”。
このサーモンを生産したのは大手商社三菱商事が買収したノルウェーの企業である。
現地で経営を指揮する佐藤裕会長)
ノルウェーから一時帰国し自ら先頭に立ってアピールした。
(客)
「養殖ものでもあまり気にしたことない。
おいしければいい。」
(ノルウェーの養殖会社 セルマック 佐藤裕社長)
「特に今年は不漁で天然のサーモンがない中で
安定的にノルウェーから養殖のサーモンを持ってくることで
味にも変わりはないし
皆さん喜んでいただいて非常にうれしい。」
日本の商社が大きなチャンスととらえているノルウェーのサーモン。
日本から飛行機を3度乗り継ぎ
さらに船でノルウェーでも最も北の北極の近くにある養殖場に向かう。
養殖場にある生けす。
直径は51m。
直径だけでも日本にある生けすの2倍以上の大きさである。
管理しているのは生けすのすぐ横にある施設。
サーモンを監視しているのはたった1人である。
モニターで78万匹のサーモンの様子を見続ける。
コントローラーを使って生けすの水中カメラを操り
サーモンが泳ぐ水深をチェックする。
餌を求めて水面近くに上がってきたら
餌をまくアイコンをクリック。
魚が餌を欲しがるときにすばやく与えることで効率の良い成長が可能となる。
(餌やり担当者)
「ここで毎日 餌やりを監視している。
魚が毎日満腹になることが一番重要だ。」
水揚げは網ではなく巨大なパイプを使う。
生きたまま船に吸い上げる。
画像認識の技術を使って魚の数や大きさを計測。
どのサイズの魚がどれだけ肥えたのか分かるので
顧客への売り込みもスムーズにできるという。
加工の作業も省力化が進められている。
たとえば選別作業。
1箱22キロに自動でまとめられていく。
加工場に搬入してから2時間後には日本やヨーロッパなど世界に向けて出荷されていく。
さらに常に計画的に魚が取れるようにと
この会社では去年70億円を投資した。
淡水で稚魚を養殖する最新鋭の施設。
水温などをコンピューターで管理することで強い稚魚を生産できると言う。
安定した生産のためには卵から稚魚へと上部に育てる必要がある。
成長に最も適した環境を24時間制御。
水温は0,1度単位で一定に保つことができる。
「水温が低ければ魚の成長が遅くなり
高ければ健康に育ちません。
元気に成長しないで死ぬ魚が増えるのです。」
この会社では来年さらに新たな施設を作り
切り身の加工も計画している。
(セルマック 佐藤裕会長)
「サーモンに対する需要がさまざまに広がっていて
それに応えるべく
なおかつ安心安全でサステイナブル(持続可能)な商品の需要に応えるべく施設を作って
要望に応えていこうというのが私たちの考え方。」