6月23日 編集手帳
美しい言葉が常に人の心を弾ませるかといえば、
そうとも限らない。
寺山修司の歌がある。
〈煙草くさき国語教師が言うときに明日という語は最もかなし〉 (的場書房『歌集 空には本』)
「明日」と同じく「未来」という語も美しいが、
日韓関係で語られるときは“最もむなし”だろう。
あちらで大統領が代わるたび、
新しい人はきまって「未来志向」を匂わせるのだが、
いつも苦い失望を味わってきた。
国内経済の停滞などで政権の支持率が下がるや、
手早い人気の回復 を狙って反日世論に迎合し、
「過去志向」に逆戻りする。
李明博前大統領が竹島訪問と天皇陛下への謝罪要求発言で両国関係を急冷凍させたのは記憶に新しい。
いまの朴槿恵大統領も慰安婦問題の解決を首脳会談の条件に掲げ、
安倍首相との会談をかたくなに拒みつづけている。
国交正常化から満50年を迎えて、
前途はなお平坦ではない。
生涯を旅に生きた“最後の瞽女(ごぜ)”、
小林ハルさんの言葉を思い出す。
〈いい人と歩けば祭り。
悪い人と歩けば修業〉。
祭りの夢をあきらめず、
修業の辛抱を忘れず、
「未来」へ長い旅をつづけるしかない。





