1月9日 編集手帳
宗教の絡んだ流血事件が起きるたびに、
やりきれない気持ちで思い出す五行歌がある。
〈問題が神ならば/人間が代わりに/闘うことはない/神同士が/闘えば済むことだ〉(山田武秋、市井社『五行歌秀歌集1』)
「神は偉大なり」と叫びながら銃を乱射したという。
フランスの政治週刊紙『シャルリー・エブド』 のパリ本社が襲撃され、
編集長など12人が殺害された。
週刊紙がイスラム教の預言者ムハンマドを風刺する漫画を掲載したことに対する“復(ふく)讐(しゅう)”ともいわれる。
動機が何であれ、
正気の沙汰とは思えぬ蛮行を心から憎む。
言論機関が脅されて書くべきことを書かずに済ませることは、
ない。
書く量が増し、
表現に鋭さが加わるだけである。
言論テロからは、
おのが信奉する神の評判を貶(おとし)める逆効果しか生じないことを襲撃者は知っていい。
朝日新聞阪神支局の襲撃事件を想起した方も多かろう。
何年か前に事件現場の支局を訪ねたとき、
壁に自由律の俳句が掲げてあったのを覚えている。
作者は詩人の小山和郎さんである。
〈明日も喋(しゃべ)ろう/弔旗が風に鳴るように〉。
その言葉を、
改めて胸に刻む。