9月1日 おはよう日本
バングラデシュの首都ダッカの町で目を引く
若者の顔写真を載せた看板は
予備校がPRする大学の合格者たちである。
ダッカではこの10年ほどで 新たに100を超える予備校が開校した。
大学への進学希望者は年々増えている。
その一方で人口の7割が暮らす農村部では
都市部との教育の格差が問題となっている。
農村部の高校では教員不足のため
1人の教師が200人もの生徒を教えている。
公立の高校では教員が不足し
教室はいつも過密状態である。
学費が安い国立大学は倍率が高く
高校卒業後に予備校で受験勉強をするのが一般的だが
農村部ではその予備校もない。
今年高校を卒業したモジャメルさん(18)は大学進学を希望している。
しかし実家の収入は日本円で月3,000円ほど。
ひと月の授業料が2,000円ちかくかかる都市部の予備校に通う余裕はない。
6人兄弟の長男のモジャメルさんは
将来はエンジニアになって家族を支えたいと自宅で1人勉強に励む。
「大学に行ってよい仕事について家族を助けたいのです。」
この村で
貧しい家庭の若者にも大学進学の機会を与えようという試みが進められている。
教師が画面の中で授業を行うDVD予備校は
授業料は無料で
都市部の予備校と変わらない授業を農村部でも再現する。
DVD予備校を始めたのは
日本とバングラデシュの学生たちである。
日本の学生ボランティアの税所篤快さん(23)が
予備校時代の経験から発案した。
予備校の講師と務めるのは
国内最高峰のダッカ大学に
これまで4,000人の合格者を送り込んだカリスマ講師である。
税所さんは何度も足を運んで協力をこぎつけた。
こうして収録した授業はこれまでに5教科約100時間分。
いずれも受験生に人気のある授業。
2年前に始まったこの取り組みで
これまでに受講した47人のうち33人が大学に合格した。
今年は教室が増えて合わせて160人が学んでいる。
教室にはモジャメルさんの姿もあった。
貧しい農村の若者に将来への希望を与えようという無料の予備校。
経済成長の陰で広がる養育の格差を埋められるか
期待が集まる。
今年5月の高校を卒業したモジャンメルさんは
このDVD予備校で勉強を続け
9月下旬に学費の比較的安い国立大学の入学試験に臨む。
税所さんたちはインターネットで日本の人々に募金を呼びかけながら
この取り組みをさらに多くの国に広めていきたいと考えている。