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ロンドンから徒然に

ブルー・ジャスミン

2013-10-08 | 映画・演劇
 ピカソの絵を見ると、その創作日が何年何月何日まで記されていることがよくあります。通常の画家ならばせいぜい「年」に留まるんでしょうが、如何にピカソが多作でなおかつ創作が早いかということが分かると思います。
 多分もう溢れ出る創作意欲が止められないんでしょうね。これが死の直前まで続くんですからアーティストというのは本当に凄い。

 同じ芸術でも映画となるとさすがに自分だけで完結することが出来るわけではなく、いくら才能があろうとも一作を制作するのに(もちろん構想の時間も入れてですが)何年もかかるのが普通でしょう。
 それなのにウッディ・アレン、この40年以上ほぼ1年に1作リリースしているんです。もうすぐ78歳という年齢を考えても、このペースはこれまた凄いっ!
 しかも近年だけを見ても、2008年の「Vicky Cristina Barcelona(邦題:それでも恋するバルセロナ)」はゴールデン・グローブ賞の作品賞を取っているし、2011年の「Midnight in Paris」はアカデミー賞の脚本賞を受賞している、といった具合に世間的にも高く評価されています。

 うん、この2本は確かに面白かったです。でも僕としては昔のようにNYを舞台に、ぴりりと皮肉の効いた小作品を観たい気分が続いていました。
 そこに聞こえてきた新作の噂。今度はケイト・ブランシェットが主役でNYに住んでいる裕福な主婦を演じるらしいとのこと。期待しないわけがないです。



 さてさて場面は飛行機の中から始まります。これがNYからサンフランシスコに向かう便という設定。実はそもそもこの最初のシーンからして何やら怪しげな雰囲気が漂います。そこからはNY(過去)とサンフランシスコ(現在)での場面が交互に挿入されていくのですが、彼女のその時々のシチュエーションはというと……

 いやぁ、面白かったですよ。ケイト・ブランシェットはきっとこれでアカデミー賞にノミネートされるでしょうね。やり過ぎの感はなくもないですが、それがむしろ映画というより良質の舞台を観ているような気分にさえなって密度の高い時間でした。サリー・ホーキンス他、脇を固める役者も良かったですしね。
 本当かどうか、ウッディ・アレンの映画に出る俳優は主役であろうと脇役であろうと同額の(おそらくはそれほど高額でない)ギャラなんだそうです。それでも出演したいとう役者が絶えないのは分かるような気がします。

 それにしても、ひとつひとつの会話では笑いながら、段々恐怖感を覚えるくらいシリアスな気分になって行く……何なんだろう。このやけにリアルな感覚は。
 きっと虚構の上に成り立っている今の時代は、誰でも簡単に転落してしまう危険をはらんでいて、その緊張感なのかな。
 すみません、ストーリー書くわけにいかないので、何言ってるか分かりませんよね。観てのお楽しみということで。

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