ラミ・デュ・ヴァン・エフ シェフのブログ ~言葉の錬金術~

フランス料理に限らず、色んな話のブログ内容です。

魚は全て同じじゃない。その魚に合ったオートクチュールな調理法が必要だろう

2015-01-21 22:47:55 | Weblog
 雪国の冬は異常に寒く大変だ、そんな事は判っているんだ。しかし、今以上に雪が降り積もっていたと思われる昔、とりわけ、ストーブやヒーターなどが存在しない昔、例えば、1800年くらいの江戸時代あたりの山形の人たちはこの極寒の中でどのような暮らしをしていたのだろうか?どのようにして寒さを凌いでいたのだろうか?そして、何を食べて生活していたのだろうか?この寒さの中で・・・そんな事を考えて今の自分の暮らしがどれだけ恵まれているのかを想いながら朝の布団から出られないでいる今日この頃、皆様、如何お過ごしでしょうか。
 「気温的に寒いのと暑いの、どっちが好きですか?」時としてそのような質問を私に浴びせて悩ませる方がいらっしゃいますが、どれくらい寒く、どれくらい暑いのかでだいぶ答えが変わってきます。
 「肌寒い」くらいの「寒い」、「ちょっとだけ汗がにじむ」くらいの「暑い」だったら「ん~、どっちでもいいけど、ちょっとだけ汗がにじむくらいの暑さの方がいいかなぁ・・・」と答えられますが、「極寒」の「寒い」、「灼熱」の「暑い」だったらどっちもイヤです。
 「冬と夏の間に春を置きました。だから春は少しだけ中途半端なのです」とオフコースは「僕の贈り物」という曲でそのように歌いましたが、中途半端で結構、いや、中途半端がいいです、気温的には。
 しかし、中途半端ではなく、今この寒さだからこそ良い事もあるわけでして、食材なんかはそれに当てはまるわけですが、山形でしたら今の時期は「寒鱈」です。
 庄内地方では「寒鱈祭り」というウインターカーニバルがあり、そこで「山形のブイヤベース」と称される(すみません、今考えました)「寒鱈汁」が振舞われるのです。
 以前、「寒鱈祭り」を「曼荼羅祭り」と聞き間違えて「どんな祭りなのか・・・」と想いを馳せた事がありましたが、「寒鱈」を食べるお祭りであります、聞き間違いにご注意を!(お前だよ)
 そしてこの時期、鱈も良いのですが、岩礁魚も良い感じであります。岩礁魚は季節的に夏かと思っておりましたが、黒ソイやメバルなどは今が旬で魚体なども痩せておらず張りがあって美味しそうです。
 いつも魚は庄内から取り寄せているのですが、先日の箱(魚が送られてくる箱の事。魚種はお任せしているので何が入って来るか判らない)には「黒ソイ」が入ってきておりました。
 鮮度の良い黒ソイでしたから当然、刺身でも食べれるレベルでありますが、鮮度が良いと何でも「刺身」にしたがるのは日本人の悪い癖です。特にフレンチやイタリアンといった洋食系であるならば「ポワソン・クリュ」や「カルパッチョ」などのなま物に走らず、加熱してその美味しさを表現するべきでしょう。
 加熱する、となると「ポワレ」という手段が常套でありますが、黒ソイの場合、ポワレするとジュ(ジュースの事。肉汁などを指す。この場合は魚の水分)が出る傾向があり、焼き上げた時にジュが出てしまうと身が固くなるように思われます。
 しかも、黒ソイの皮は丁寧にポワレしたからといって鯛などのようにパリッと仕上がりません。ではグリエ(グリル)の場合はどうか。黒ソイの皮は加熱するとネットリとした感じになるため、グリルパン(グリエ用の鋳物の焼き台)にくっついてしまい仕上がりが汚くなってしまいます。
 今までの経験上、黒ソイの焼き方は一匹まま高温のオーブンでローストするのがベストだと思うのですが、コースで出す、つまり、切り身で調理する事を前提に考えると現実的ではありません。
 ポシェ(茹でる)や軽いブレゼ(蒸し焼き)という手も考えられますし、黒ソイの調理で言うならばそちらの調理法が美味しく仕上がる可能性がありますが、どうしても「焼き」に拘りたいではないですか、日本人なら。
 そうするとやはり「グリエ」は外せません。しかし、グリルパンではくっつくのでそこは避けたいところ。となると、グリルパンの輻射熱で加熱する、というのが良いのではないでしょうか。
 切り身にした黒ソイは焼き上げる20分ほど前に塩をして少し水分を出してふき取ってから串を打ち、皮面にオリーブオイルを薄く塗ります。



 強火で熱したグリルパンに鉄の棒を渡して一段上げて串を打った黒ソイの皮面を下にして焼き始めます。



 グリルパンは中心部が非常に熱くなっておりますが、串を外側にずらせば輻射熱が弱くなりますので加熱の強弱は串の移動で調整できます。
 皮目の焼きで8割焼き上がるイメージで焼き、裏返して余熱でゆっくり加熱します。



 ヒュメ・ド・ポワソン(魚のだし汁)をゆっくりと煮詰め、トマトコンサントレ(フレッシュトマトを煮詰めた物)と白ワインヴィネガー、ケッパーを加えて味を調え、仕上げにヴァージンオリーブオイルを加えて乳化させたものをソースとして完成です。



 このやり方は完全に日本料理の串焼きですが、魚種によってはこのやり方が合っている場合がある、と私は思いますから、こういった調理法を無視する事はできません。
 
 因みに、この方法を鶏もも肉でも実践した事がありますが、今はやっておりません。

 皮がパリッとして美味しいのですが・・・何と言いますか、焼き鳥と言いましょうか、あまりにもやり過ぎと言いましょうか・・・美味しいんですよ、物凄く。

 でも、何か一線を越えてしまうみたいで怖いんです、自分自身。(それかよ)

 タレも作りたくなるんですよ、本格的に。

 そして、最大の原因は・・・厨房に煙が充満し、客席に流れてしまうからです。

 お客様がその煙を吸ってしまったら大変じゃないですか!

 「焼き鳥ください」なんて言われてしまって・・・(それもそこかよ)














コメント (3)
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