ラミ・デュ・ヴァン・エフ シェフのブログ ~言葉の錬金術~

フランス料理に限らず、色んな話のブログ内容です。

山形の味と言い切ってもいい「芋煮」を考えてみる。  後編

2013-09-25 03:50:42 | Weblog
 昔、横浜に住んでいる時、出身地を聞かれて「山形です」と答えたら山形県がどこにあるのか知らない人が結構いたのが印象的でした。それは20年以上も前の話ですが、もしかすると今でもそうなのではないでしょうか。
 確かに、東北の中でも印象が薄い、と言いますか、話題性に乏しい、というのは否めないところでしょう。
 青森は「ねぶた」、秋田は「秋田美人」、岩手は「あまちゃん」、宮城は「楽天イーグルス」、福島は「半分北関東」、と他の県は何らかの全国的話題がある中で、山形は「さくらんぼ」と果物系で勝負するしかありません。
 「さくらんぼ」もそうですが、他にも「ラ・フランス」「温泉」「牛肉」「米」「伴淳三郎」「あき竹城」「渡辺えりこ改め渡辺えり」「ウド鈴木」「浜田省吾の奥さん」「雨宮良の奥さん」と各界で活躍しているであろう産物や人物が存在しているのですが、それがあまり浸透していない背景には山形県の宣伝下手、というのがあるのではないでしょうか。(大げさに書いていることをご理解ください。でも一部は本当)
 その中でもっと県外に売り出してもいいのではないか、と思うのは「芋煮」であります。「日本一の芋煮会」というイベントも大盛況でありますからそれも含めて「芋煮」だろう、と思い書いているのは、昨日のブログからの流れであり、ネタ不足を少し解消されているためちょっと余裕のある書き出しで行こうかな、と思ったからです。
 さて、昨日に引き続き「芋煮」の話になりますが、昨日の「芋煮」は一般的な芋煮の作り方を紹介しました。その後、「舞茸を入れてますけど・・・」や「豆腐を入れる所があった」などのコメントをFB上で頂きました。
 一口に「山形の芋煮」と言っても庄内、最上、村山、置賜、の4地区に大別され、その作り方や材料も全く違います。例えば、庄内地方は豚肉とジャガイモで「芋煮」を作ります。
 材料的に言えば「豚汁」になると思われるのですが、庄内地方ではあまり牛肉を食べないためこの材料になったのではないか、と思われます。そこに平田牧場が絡んでいるのかは未確認ですが・・・
 しかし、それは風土や土地柄の志向でありますからそれは「アリ」なんです。川原ではなく、浜辺で豚肉、ジャガイモのそれを食べると「庄内の芋煮」となるのです。
 昨日も宣言したように今回は「高級な芋煮」を考えてみる内容ですが、何をもってして「高級な芋煮」なのか、というのが重要なポイントとなります。「高級」だけでは漠然としているのではないか、と思われる方もいらっしゃるでしょうからその辺も踏まえて考えてみましょう。
 まず、一般の「芋煮会」と違う点は、川原で行うのではなく「屋内」で、しかも、招かれた方は勿論、芋煮作りに参加する、という事もなく、出来上がりを待ち、且つ、サーブされる、という点で「高級」なのです。
 しかも、一般のお店で供されるような「小鍋仕立て」ではなく、鍋仕立てではあるがそれをお給仕してくれる人がいて、腹具合を見計らって少しづつ、しかも的確なタイミングで、的確な温度と火の通り方で出される、という至れり尽くせり型の「芋煮」が「高級」と位置付けられるのではないでしょうか。
 それには「個室」が必要です。ですから、これを実現するには「高級芋煮専門店」を立ち上げる必要があります。
 まず入口を通るとエントランスにはウェイティングスペースがあり、そこで食前酒として地物の青梅で作った「梅酒」が小さいグラスに出されます。因みに、グラスは江戸切子でお願いしたいものです。
 予約人数が集まったところで個室へ案内されますが、入口に近い席が下座でありますから、年上の方や接待ゲストの方は入口から一番遠い席、つまり、上座へ通してください。
 着席すると飲み物を聞かれ、ほどなくそれらが用意されます。乾杯の声の後、すぐに出されたのは一口サイズの「ほんのり味噌風味の庄内豚とジャガイモのコロッケ」でありました。
 「初っ端から揚げ物かよ」少し面喰いますが、それは初めにビールを飲まれる方が多い、というのを想定して。しかも、豚肉とジャガイモの組み合わせは庄内芋煮へのオマージュではありませんか。
 次に出てきたのは「舞茸と胡桃の白和え」であります。これも今回入れられる事はない置賜地方芋煮の材料である「舞茸」と「豆腐」を使用しての小鉢であります。
 それらを食べ終える頃には日本酒に移行していると思われますが、ワインもご用意しておりますから何なりとスタッフへお申し付けください。
 そして、ようやく芋煮鍋が運ばれてきました。芋煮用の鍋は特別に山形鋳物で作っていただいたもので予算が許されるのであれば鍋の周りに金の龍の模様が欲しいものですな。
 鍋の中には汁が入っていますが、これは昆布と牛スネ肉と長葱で4時間かけて取ったものに追い鰹(仕上げに鰹節を入れる事)をして濾して、味醂、酒、醤油、塩で味付けしたものです。
 そこに仲居さんが里芋とこんにゃくをゆっくりと入れます。これも勿論、事前にだし汁で煮含ませ、薄く味が染みてある「里芋」と「こんにゃく」で、煮含めてから冷まし、冷蔵庫で寝かせてあるためお客様の前で温め、そして、サーブするのです。
 汁の表面がユラユラと揺らぐ程度の火力で温めていると次にやってきたのは米沢牛ロースのスライスでありました。すると仲居さんがその牛肉を箸で持ち上げ、芋煮の汁の中で温めるではありませんか。そうです、牛肉、しかも米沢牛を堪能するには火を通しすぎてはいけません、故に、仲居さんがすべて管理するのです。
 皆さんの器に牛肉が盛られました、さあ、食べてください。次に芋煮の汁の中でたなびかせたのは松茸のスライスであります。松茸も火を通しすぎては香りが逃げてしまいます、ちょうど火が通った頃合を見計らって給仕するのですからすぐに食べてください。
 その後、仲居さんは里芋とこんにゃくを盛りつけ、これまた軽く火を通した白髪葱を上に山盛りにしてくれました、この葱だけでも十分美味しいはずです。鴨鍋とも違った美味しさがあるでしょう。
 最後は「きしめん」です。食べてみるとほんのりカレーの香りがします。そうです、仲居さんがほんのちょっとだけカレー粉を入れてくれたのでした。
 〆に出てきたのは「季節の果物」。これで終了です。

 どうですか、これが今回考えてみた「高級な芋煮」であります。

 店造りから始まりますから相当な資金力がなければ実現できませんが、山形県で都内に一軒くらいオープンしてみると話題となり山形に興味を持ってくれる方が増えるのではないでしょうか。

 ただ、問題点は夏にどのような営業をするか、というところでしょうか。

 その時は、「冷やし芋煮」という事で何とかなりませんかねぇ。



















  
 
コメント
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