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飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

狂咲き万歳!鶴屋南北の世界16 歌舞伎「慙紅葉汗顔見勢 伊達の十役」(新橋演舞場)

2010-01-21 | 鶴屋南北

■日時:2010年1月16日(土)、16:00~
■作:鶴屋南北
■脚本・演出:奈河彰輔
■演出:市川猿之助
■出演:市川海老蔵、中村獅子童、市川右近、他

市川海老蔵が早替り・宙乗りにチャレンジした歌舞伎「慙紅葉汗顔見勢(はじもみじあせのかおみせ) 伊達の十役」を見ました。この「慙紅葉汗顔見勢」には、恥も外聞もかまわず、紅葉のように顔を真っ赤にして、大汗を流して懸命に演じるという意味があるそうです。江戸時代の文化12年(1815)、役者の数人が書中休暇を取ったので、七代目市川団十郎が伊達騒動の主な十役を一人早替りで勤めるという破天荒な企画を立てたのがその始まりで、鶴屋南北が台本を書いた。しかし、その台本は残っておらず昭和54年に市川猿之助が復活させたものであるようで。そんなエピソードのある作品です。

で、その作品の印象ですが、市川海老蔵のもう“一人舞台”っていう感じでした。これまでボクが見た早変わりが見所となって、何役も演じることが多い歌舞伎では、場面が早替りを次々に見せるというイメージに流れてしまうものが多かったのですが、今回の作品は、早替りをしてさらにその役所の台詞のしっかり喋るというメリハリの聞いたものでした。のべ4時間の長時間のお芝居を海老蔵はほとんど出ずっぱりと言っていいし、さらには男役と女役を複数演じでいるのですから、とんでもない仕事量をこなしているわけです。裏方のスタッフとの連携、段取りも大変でしょう。観客に尋常ではない演技しているんだということを意識させるだけで、もう見ている側はその術中にはまり満足しまうのではないでしょうか。さらにこの作品は、早変わりの妙だけではなく、じっくり見せるところもあり、またスペクタルで幻想的な展開もある、まさにエンターテイメント、イリュージョンとしての歌舞伎を堪能しました。

今回、海老蔵は十役を演じたのですが一番良かったのは悪役の二木弾正、カッコイイ。歌舞伎は悪の魅力が引き立つお芝居ですよね。ただ悪いだけではなく見た目に美しい、あるいは華がある。それが惹かれる要因でしょうか。また、24年ぶりの上演という最後の大喜利所作事の荒獅子男之助もメチャよかったですね。無条件にワクワクしてしまいいつもより力を込めて拍手をしてしまいました。

ところで、最近はネットが充実しているので新聞をめっきり読まなくなってきていますが、1月15日付の朝日新聞の夕刊は歌舞伎の劇評が充実していました。「5時間半、海老蔵奮闘」と題して歌舞伎研究・児玉竜一という方が、今回のお芝居について記事を投稿している。その関係している部分を下記に引用しました。

“3年連続となる市川海老蔵の正月公演。いつかは手がけるだろうと思われた「伊達の十役」が、予想より早く夜の部に登場した。市川猿之助による江戸歌舞伎復活の代表作で、伊達藩のお家騒動にからむ男女10役の早替りが眼目となる。猿之助が最後に演じてから11年ぶり。5時間半に及ぶ海老蔵渾身の奮闘である。とはいえ、猿之助と海老蔵では資質も違う。器用で万能型の理論派だった猿之助と、不器用な一芸型で肉体派の海老蔵。猿之助は作品全体が主張となるのに対し、海老蔵は部分が輝く。猿之助では段取りにみえたところが、そうならならない新鮮さもある。10役の内、実悪の二木弾正、捌き役の細川勝元、荒獅子男之助の押戻しの荒事がいいが、我流に過ぎる役もある。とくに女方の3役は無理があり、長丁場となる正岡は内向的な型を学んだのが似合わない。再演までには役の選択の再考と、演技の引き出しがさらに必要となろう。老人キラーだった猿之助には、脇にもスタッフにもベテランの知恵が集まった。海老蔵にもそれがほしい。周囲は若手中心だが、中では片岡市蔵の外記左衛門がいい。”

“”部分、2010年1月15日付朝日新聞・夕刊の記事より引用

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