■製作年:1962年
■監督:ロマン・ポランスキー
■出演:レオン・ニェムチック、ヨランタ・ウメッカ、ズィグムント・マラノウィッチ
ロマン・ポランスキー監督の処女作にして出世作。この作品によってポランスキーは一躍、名監督の仲間入りをはたした。映像はモノクロ、けだるいJAZZが流れ、映画は始まる。車を運転する中年の夫婦、どうやら仲があまりよろしくなさそう。道中で若者を拾う、19歳であった。この中年の夫婦は社会的に成功したらしくヨットを持っていて、クルージングにその若者を誘う。中年の男は船の上で、操縦技術もあることもさておいて、社会的な立場や年齢的なものからこの若者を子供扱いする。何のために彼をヨットに誘ったのか?
登場人物は後にも先にもこの3人しか出てこない。映画の舞台はそのほとんどがヨットの上である。だからそこは密室劇ならぬ背景に湖も広がる<密船劇>なのだ。よくもまあヨットの上だけで90分もの映像を展開させたものだと見終えると感心させられる。が、途中、変化がないので少し弛緩する部分もあった。ただ、そうはいってもヨットの上だけで映像を展開させるポランスキーの演出力は相当なものだと感じるし、何よりも画面の構図が素晴らしい。どのカットもアート作品としての品格を備えている映像であると言える。ここまでアングルにこだわった映像はそうは見ることができないだろう。そして、船の上の出来事を撮っているのによく画面が揺れないなあと、カメラがどうやって固定され揺れずに撮影したのだろうとそれが不思議でもあった。
青年が溺れた、溺れないの事故的な部分もあったが、おそらくそうしたことは、この映画ではあまり関係ないのであろう。主題を見つけるのが難しい。どこかカフカの小説のような感覚を持った映画である。不条理さ、まったく映画は解決をみせることなく終わってしまう。はたして、この後、三人はどうなっていくのか?それを問うのも不毛に感じる映画だった。
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