■製作年:1976年
■監督:ジョン・カサヴェテス
■出演:ベン・ギャザラ、ティモシー・アゴレア・キャレイ、シーモア・カッセル、ロバート・フェイリップス、他
ジョン・カサベヴェスの「チャイニーズ・ブッキーを殺した男」を見ました。主人公はL.A郊外で女性のヌードを売り物にするバーレスク・ダンスを見せる一見ショーパブのような風俗店を経営しているコズモと呼ばれる男であります。演じているのはカサヴェテス映画の常連ベン・ギャザラ、彼が見せるコズモという男は全く欲望渦巻く世界に生きてきたという風格を漂わせています。彼を主人公に据えたことにより、この映画はどことなく「オープニング・ナイト」で行方をくらますジーナ・ローランズ演じる女優と対になっている作品のように感じました。人前に立ち自分をさらけ出し演ずる女優とヌードを売り物にするショーパブのオーナーと、いずれも堅気の生活とはちょっと違う側面を持った職業に従事する女であり男であるということです。
ところで、オーナーであるコズモにとって自身のお店は唯一無二のものなんだろうか?たとえ腹部に銃を打ち込まれ弾が体に入っていようと店に電話してダンサーの出勤や段取りなどを確認する、たとえその弾のせいで激痛が走ろうともダンサーのオーディションをする、たとえ傷口から血が流れ出ようとも夜の街に店の前に立って煙草を吹かすという強靭さ。それが彼にとってヌードを売り物にする欲望の砦のオーナーであるというプライドなのだろうか?俺はここに立つという男としての本能のようなもの?それが荒くれ者が客で来ようとも、我が儘なダンサーが楽屋で騒ごうとも、オーナーであることのアイデンティティとでも言いたげな…。私は特に強い意志を持つわけでもないものの、どこか持ち場を維持する、死守するという男の習性のようなものをそこに感じてしまいます。
この映画の特徴としてとりとめのないような話が展開していくものの、音楽が最高にイカシているのも魅力のひとつでした。
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