飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

映画「衝撃 パフォーマンス」(監督:若松孝二)

2012-07-24 | Weblog

■製作年:1985年
■監督:若松孝二
■主演:松居一代、岡竜也、他

この映画は、どってことない映画、それがどうしたの?といいたくなるような作品と感じる人が多いと思うが、私はそうは思えなかった。確かにテイストは古いし話の展開もない、演出も今見りゃダサい?しかし、こう胸に突き刺さるようなものがあったのだ。人のやるせない部分を刺激する。そして忘れていた感覚を呼び戻すことさえある、そう感じたのだ。不意打ちの映画だった。

 

この映画の主演をはった松居一代といえば私らの世代では伝説の深夜番組「11PM」の司会を勤めた女性となる。その彼女がヌードになって映画に主演…、っていう話は昔そんなことあったかな、という記憶なのだが、やはり、今はさておき、当時はファッショナブルで素敵な憧れのお姉さんで、ヌードになるとはインパクトがある。だから、ビデオのパッケージは古い記憶のなかで見覚えがある、と記憶がうっすらと蘇ってくるということになる。この歳になって、その彼女をみると意外と古風なタイプだったんだ、顔は大きいし胸は小さく下半身が太い、今の子と比べると体形が違うな~と。私はそこに時代というものを感じてしまうわけだ。そして、その時代感がいい。記憶の中で11PMの素敵なお姉さんと思っていた人が、かなりハードな、つまり思いっきりのいい脱ぎっぷりで、まさに女の情念を過激な演技でもって臨んでいたのもびっくりしたが、拍手を送りたい気分にもなった。

 

話は、若松監督が高校をやめて家出したという17歳の高校生が、あろうことに女教師と駆け落ちしたというもの。松居一代はその女教師を演じている。で、そんな話、昔、女の事件簿などで取り上げるようなエピソード、映画は実話を元にしていたはずじゃなかったか?それはどうでもいいけど、映画はこの女教師と生徒が駆け落ちする理由や原因は全然描いていない。駆け落ちしてしまったところから描いている。過程を省いているのです。一つ屋根の下、別々の布団で寝る男女。つまりまだ男女の関係はない。男はそれこそ17歳なので性的なエネルギーたるや絶頂の時であり、悶々と夜を迎えるしかない。女は年上で、そんな男の様子を不憫に感じながらも自らは行動はしない。男と女の寝屋には、カーテンで仕切られており、それがベルリンの壁のように重く塞がっている。毎夜毎夜、男は女の夢を見る。寝言で女の名前を呼ぶ男。たまりかねた女は裸になり、男の上にのしかかる。ついに関係が結ばれた…。

 

女教師と生徒の駆け落ち、これはタブーである。タブーを侵して結ばれた男と女。男はまだ17歳、エネルギーに満ち溢れている。当然、夜となく昼となくやりまくる。食っちゃエッチして、食っちゃエッチしてという感じだ。ああ、この果てしない欲望の処理、エッチを覚え相手がいればそうなることは必然で、その感覚が蘇る。私にもそんなことがあったと。あれもしてみたい、これもしてみたい、女がそれを受け入れればそうなるに決まっている。挙げ句、男は女のおしっこも飲もうとする場面も。この直線的すぎる幼なき行為に誰に罪があろうか?好きになれば求め合い、若ければ場所を選ばずやりたくなる。これ本能なのだから。若気の至り。松居一代はこの果てしない幼き感性のセックス・シーンをそれこそ体当たりで演じていた。当時でいえばこれはポルノ映画のジャンルになるのだろう。綺麗なラヴシーンというレベルではない。女が上になり腰を淫らに振り、その一振りが想いと若さと禁を侵してしまった情念がこもった映画なのだ。フランスの思想家・ジョルジュ・バタイユが言うように侵犯こそが強烈なエロティシズムを生むのだ。ところで、興味深いなと思ったのが、童貞だった男が夢の中で女と交わる体位がバックで、これは女を支配したいという無意識の状態がでていた。現実に結ばれた時の、体位は何れも騎乗位で女がリードしている。その対比が、その2人の精神的な関係を表しているともいえるだろう。

 

映画には、さすらう2人に対して当時流行った柳ジョージの歌「プリズナー」がながれる。柳ジョージ!私はさらに彼のブルース魂を聞き、この映画に思い入れてしまうことになった。誰が見てもほんとたわいもない映画なんだけど、柳ジョージの歌が何故か若松監督が作りだす映像とともに私の心に響く。いつもより長くなった私文章、そこに妙な自分の心の響きをみてとってしまう。今から柳ジョージのCDを買いに行こうかな…と思う。

 

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