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【cinema】『127時間』(試写会)

2011-06-20 23:32:18 | cinema
'11.06.09 『127時間』(試写会)@よみうりホール

観たかった! 試写会探してたら、お友達のともやさんの当選tweet発見! ちゃっかり便乗してしまった(笑) だってダニー・ボイルだからね! 『スラムドッグ$ミリオネア』大好き♪


*詳細は避けますが、ネタバレありです!

「金曜の夜、ブルー・ジョン・キャニオンでのロック・クライミングに出発したアーロン。翌朝、渓谷で道に迷った女子2人組と出会い、しばし楽しい時を過ごす。2人と別れた後、クライミングを始めるが、手をかけた岩とともに落下、右腕を挟まれてしまう…」という話。これはおもしろかった! 94分と短いこともあるけど、一気に見てしまった。スピード感があって、演出が上手い。あざといと感じる人もいるかもしれないけど、個人的には好き。

アルピニストとして活躍するアーロン・ラルストンの実体験に基づく原作「127時間」の映画化。このあらすじで、原作ありで、尚且つ著者が現在アルピニストなのであれば、ネタバレもなにもないけど(笑) でも、同行のともやさんがおっしゃってたように、事件モノを紹介するバラエティー番組なら、15分くらいの再現VTRで済んでしまう話を、94分に膨らませたのはスゴイ。一言で言ってしまえば、事故に遭ったクライマーが生還する話なので、遭難してしまえば、後はひたすら救助を待つか、自力で脱出するか。でも、それだと、せいぜい30分くらいじゃないと、見ている側が辛い… ということで様々な工夫がされている。

冒頭の出発準備シーンから伏線を貼りまくる。スイス製アーミーナイフを置いて行ってしまうのは、とっても分かりやすいけれど、電話に出ず留守電に相手させている感じは、後に彼が悔やむことと、生きたいと願う伏線となっている。見ている時には、電話に出ないアーロンを特別ヒドイ人とも思わないし、むしろ楽しみを優先してしまう感じは共感できる。ただ、やっぱりクライミングに慣れていて、自信があるが故の過信が感じられなくもない。でも、それはアーロンと一緒に「もし、あの時」と思うからで、見ている間は気にならない。

アーロンがどの辺りに住んでいて、事故に遭ったブルー・ジョン・キャニオンがどこにあるのかサッパリ分からないのだけど、彼の家から車で向かい、目的地付近で車中泊、翌朝マウンテン・バイク&徒歩で現地入り。多分、自然保護のため車は立ち入れないからだと思うけど、後の会話でマウンテン・バイクで32km走ったと言ってたような… さらに結構歩いてたから、それこそ昼間でも人が来ない。そもそもアーロンのような人が行くような所は、普通の人は行かないのかも…

自宅でバタバタと荷造りしているところから、ウキウキ車を走らせる姿や、翌朝マウンテン・バイクで疾走する映像はスピード感がある。アーロンの胸の高鳴りが感じられて楽しいけど、ずいぶんムチャするなと思っていると派手に転倒(涙) 見ている側はアーロンが転落事故に遭うことは知ってるわけだから、いつなのかドキドキしているので、そこでこの転倒シーンを入れて一瞬ドキリとさせつつ、アーロンが調子に乗りやすく、ムチャをしがちな人物であることの伏線にもなっている。そういうのが上手い。



実際のアーロンも遭難する前に女子2人組と出会ったのか不明だけど、この2人とのエピソードが後に生きてくる。普通の映画であれば、主人公の生活を描くことで、その人物の人となりを紹介することができるけれど、冒頭からいきなり出発してしまっているので、いかんせん弱い。でも、あまりダラダラと前置きをされてもダレてしまう。この2人とのシーンは、アーロンの性格の一部を紹介することに役立っている。自分のクライミングの腕にも、自分の容姿にも自信がある。もちろんそれは悪いことではないし、明るく物おじしないので親しみやすい人ではある。でも、それが過信となって、ムチャをする感じに説得力を持たせている。

保守的なのが正しいというわけではないし、ちょっとムチャをしたからこそ、ドームへの素敵な入り方もできたわけで、同じ物事も見方を変えれば、違う感動があったりする。だから、多少のムチャは全然OK。確かに、彼女達のセリフにもあるとおり、「こんな所連れて来てくるなんて(怒)」とも思うけど、それを乗り越えてこその絶景とも言える。人間の好奇心や冒険心が、様々な発見をしてきたわけだから、多少のリスクを負わないと、という側面は確かにある。ただ、リスクを越えた先にあるであろうモノばかりに気を取られて、リスクそのものを軽視してしまう部分はあるのかなと思う。ドームの映像が神秘的で美しく、3人がとても楽しそうだったので、見ている間はそんなに深く考えてたわけではないけれど… 文句言ってたわりに、何度も繰り返してたから、大丈夫なのかも? まぁ、初心者は真似しないで下さい(笑)

このシーンが少し呆れるくらいのはしゃぎっぷりだったことが、この後起きる事故との落差を引き立てている。そして、その高揚感のまま、クライミングを開始したことが注意力を欠き、事故に繋がったのかもしれないと思ったりする。実際の事故がどんなだったのかは不明だけど… 事故のシーンの迫力はスゴイ。クライミングのことがサッパリ分からないので、アーロンが何をしようとして、壁の両脇に足をかけた状態で、岩に手をかけたのか不明なのだけど、かなり大きな岩に手をかけた瞬間、もろとも落下してしまう。あっという間の出来事。ほとんど傷はなかったのに、運悪く右腕を挟まれてしまう。ここから127時間アーロンの闘いが始まる。

あんまり詳しく書いてしまうと、面白くないので、なるべくネタバレしないように書こうと思うけど、どうかな…(笑) アーロンはあんなにバタバタと荷造りして、ちょっと軽い感じに見えていたけど、さすがの装備。初めこそ取り乱していたけど、直ぐに冷静さを取り戻す。127時間だから5日以上閉じ込められていたわけで、もちろんそこまで耐える食料も水もない。アーロンが落ちた所はかろうじて立てるけど、底ではないらしい。何かは分からないけど、ハーネスのようなものを装着して、何度も失敗を繰り返した後、岩に引っ掛けて体を吊すことに成功。眠ることができるようになったりする。ある程度の知識があって、装備も持っているならば、誰でもそうするのかもしれないけれど、素人から見ると、さすがだなと感心。そのサバイバル能力に驚いたりする。もちろん、片腕の自由を奪われて、ほとんど身動き取れないわけだから、出来ることは限られているのだけど… 水が底を尽きてしまうと、ある方法で貯水袋(?)に水分を確保するのだけど、これはスゴイ!

水の表現がよかったと思う! 冒頭の荷造りシーン、水はボトルから溢れ出ていた。ドームにも水は豊富にあって楽しい時間をもたらしてくれた。閉じ込められて直ぐに、アーロンが心配したのは水が無くなること。アーロンが水を飲む度、水が沸き上がってくるような映像が映し出される。それが、水のありがたさを表現しているとともに、緩急にもなっている。渓谷に雨が降りそそぐ描写がスゴイ! 水が尽きかけているので、恵みの雨だけど、それが命を奪うこともある。これにはオチがあるけど、アーロンが改めて、自然に対して恐怖を感じるところ。そういう事を押し付けがましくなく見せるのがいい。全然詳しくないので分からないけど、自然という予測不可能なものを相手にしている人達こそ、自然に対して恐怖感を持ってないとダメなんだと思う!

狭い谷底で、アーロンは自分自身を見つめ直すことになる。向き合うものが自分しかないから誰でもこうなると思う。だからとってもリアル。回想シーンも妄想シーンも、作り物っぽい感じで描いているのが逆にリアルでいい。さんざんムチャをするとか、調子に乗りやすいとか書いてきたけど、アーロンは別に嫌な人ではない。家族にも友人にも今回の行き先を伝える機会があったのに、何も言わずに来てしまったことは、救出が遅れることだけでなく、自分が心を開いて来なかったことの後悔にも繋がっていく。確かにそういう側面はあったと思うけど、だからといってダメな人じゃない。だからすごく身につまされてしまう。親の愚痴とか相談って、つい面倒で聞き流してしまったりするとこってある。それは甘えなんだけど(笑)友達にいちいち今日どこに行くとかは普通言わない気もするけど… まぁとにかく、普段何気なくしていることだから、無意識のうちにコンタクトを断ってる。だけど、それが実はとっても大切なんだってことが、ホントによく分かる。『ヤコブへの手紙』によれば、それこそが"生かされてる"ってことだし(笑) 現に、アーロンが頑張れたのは、家族や友達にもう一度会いたいと思ったから。もちろん、それだけではないけど大きな要素。一人で生きているのではないことの証。それは後のアーロンのセリフにも現れている。



5日以上閉じ込められているわけだから、とにかく精神状態も様々。もちろん、どんどん衰弱してしまうから、辛い感じになって行くけど、そこまでの過程の描き方が見事! 初めのうちはまだ元気があるので、テレビ番組をパロった自虐ネタ動画を、自分撮りしてみたりする余裕すらある。って、多分こんなことしてないとやってられないんだろうな。その気持ちは分かる。ちなみにこの場面で客席の外人が大爆笑してた。似てたのか?(笑) そして、人間の三大欲 食欲、性欲、睡眠欲もサラリと盛り込まれている。ドームで遊んだ時の映像が意外な使われ方をしたりするけど、女子としては複雑(笑) そして、思いは自分に向かっていく。家族や友人達との関係はもちろん、別れた恋人とのエピソードもアーロンという人の別の一面を表している。そして、彼女に言われた一言が身に染みている感じが、とっても分かる気がした。恋愛に限らず、人との関係が壊れてしまうのは、様々な理由があるけど、自分がわがままだった部分も含めて、思いや気持ちを上手く伝えられなかったり、相手に心を開放できなかったのは、とっても悲しいことで、傷になるけど、それはどうしようもないことなんだよね… でも、だからこそ次は上手くできるようになるんじゃないだろうか。

だから、アーロンはもう一度生きたいと思った。その思いが彼に衝撃の決断をさせる。それについての明言は避けるけど、そうするしかないと思うし、つらつら書いてるとおり、その決意に至る経緯がきちんと描かれているので、決断自体にビックリはしない。その方法がちょっと… 個人的には直視出来ず(笑) でも、この後に続くシーンは感動! ここでも水が重要アイテム。そして…

以下、ネタバレあり!

アーロンは人の姿を見つけて助けを求める。何度か叫ぶそれは日本語に訳すと全て「助けて」だけど、最後にアーロンは「I need your help!」と叫ぶ。もしかしたら、普通の言い回しなのかもしれないけれど、人に自分を委ねられなかったアーロンが「あなたの助けが必要です」と言うのはグッときた。そして、アーロンを救うため懸命な人々の姿に感動! ヘリでMAX(涙)

ジェームズ・フランコ良かった! 今までの役はイケメンだけど、どこか頼りない感じが多かった気がするけど、この役合ってたと思う。ちょっと調子に乗りやすく、人懐っこいけど、深く踏み込まれたくないと思っている。でも、根は素直で真面目な感じ… まぁ、ご本人の事はよく知らないけど(笑) ほぼ一人芝居を飽きさせず、全てのシーンに説得力を持たせていた。この演技は良かった! 本心はどうなんだろう?と思わせる、笑ってるけど笑ってない目が効果的。褒めてます(笑)

とにかく、冒頭の疾走感から、ほんわり終わるラストまで、見せ方が上手い! アーロン撮影という設定の映像や、回想、夢、妄想シーンなどが入り混じり、時には3分割画面になったりと、かなり冒険的。合わない人もいるかもしれないけど、それが悲壮感漂いがちで、しかも単調になりがちな展開にテンポと緩急を与えている。伝えたいのは"生かされている"という事なので、重要なのは脱出後。ここをあえてスローで見せるのも良かった。ラストのちょっとファンタジーな感じも好き。さすがダニー・ボイル!

ブルー・ジョン・キャニオンの映像がスゴイ! 渓谷からガーッと引くと、見渡す限りの岩と土… ドームの美しさや、ドレープのような地層もスゴイ! 『スター・ウォーズ』みたい(笑) とにかく、映像と音楽がカッコイイ! かなり痛いシーンもあるけどオススメ! ジェームズ・フランコ ファンならぜひ!

アーロンとデジカメ同じっぽい♪ 2003年の話だからスゴイ古いってこと(笑) ちなみにCyber Shot


『127時間』Official site


コメント (18)
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