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価値ある存在-吉本隆明74語より(7)

2005-09-24 11:36:45 | 価値ある存在
勢古浩爾さんの「生きていくのに大切な言葉 吉本隆明74語」からの、「価値ある存在」今日は7回目です。青字は、吉本隆明の文章。赤字は勢古さんの文章。黒字は筆者の感想。

「どんな豊富な思想の表現も、いったん行為事実に還元されれば、ありふれたものとならざるをえない。」(「思想的弁護論」)

「思想はいつも壮大であるが、それを実現する現実の後景はいつも貧弱である。」(「情況」)

これらの言葉と、「いいことを照れもせずにいう奴は、みんな疑った方がいいぞ」(「遺書」) とは、どこか通底するところがあることはお分かりの通りです。

勢古さんが卑近な例として挙げているように、オウム真理教の「思想」が現実に起こした「行為事実」や、夢にまで見た楽しいはずの結婚生活が、いがみあった果ての離婚に至る「行為事実」を考えれば、なるほどと思ってしまいます。

「思想(思考)は現実的に必ず頽廃する。思想(思考)を実現しようとするものが、矛盾のかたまりである人間だからである。」

このように、勢古さんは言います。人間が矛盾のかたまりであるのは、それはその通りですが、だからといって、思想(思考)が現実に触れたときに必ず頽廃するものでもないでしょう。

分かりやすく、楽しい結婚生活がなぜいがみ合って離婚に至るのか、その例で考えてみます。結婚すればそこに待ち受けているのは日々の日常生活です。それは吉本も言うように極めて「ありふれたもの」ですが、それを長年にわたって続けることが如何に大変なことか、そうした市井に生きる無数の人物を、千年に一度しかこの世にあらわれない人物の価値とまったくおなじである、と言い切る吉本の思想を併置してみると、現実から思想を汲み取り、その思想から現実へとまた下りていく、という親鸞から得た「往還」の考えを見ることが出来ます。それが生きていくための現実の「知恵」だと筆者は解釈しております。

問題は、その「知恵」がどこから得られるかということです。それについて、「いいことを照れもせずにいう奴はみんな疑った方がいいぞ」と吉本は言います。全くその通りです。結婚生活で、相棒からいいこと、つまり「正論」(思想)を押しつけられてばかりでは、どんな聖人君子も身が持ちませんが、どうしてもその相棒の「素の部分」は、繰り返し繰り返し出てくるものです。この「素の部分」は、良い点も悪い点も含めてその人間のすべてです。しかも、時間が経てば、環境が変化すれば、変貌します。これは、まさしく日々の生活において生じる矛盾そのものです。しかし、そこで「頽廃」していては、一貫の終わりですね。筆者の場合は、その「素の部分」を、自らの生きる意味のようなところに結びつけて考えました。つまり、その嵐のような相棒の「素の部分」からの攻撃を、正面から引き受けていったのです。引き受けることがあたかも自分の人生であるかのように。改めて考えてみれば、結婚する気になったのも若気の至りの部分もありますが、そうした「素の部分」全体に惹きつけられたためでした。気がつくと、そうした年月の繰り返しそのものが、自分の人生と一体化しておりました。そして、ありふれた日常のなかにこそ生きる糧があると思うようになっていました。

今日は、自分の結婚観まで吐露することになろうとは、夢にも思いませんでしたが、これが書き言葉を唯一持ってこの世に生きている人類の面白いところですね。チンパンジーのパン君なら、ここまで悩むこともありますまい。
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1 コメント

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2005-09-25 01:19:23
吉本隆明読書会もいよいよ佳境に入ってきた観がありますね。

>いったん行為事実に還元されればありふれたもの

という言葉は、ぼくなりに言い直せば

「思想は無限の可能性を秘めているが

一人の個人がその時その時になしうるのは極めて限定された一行為にすぎず、

そうした一行為が彼の思想全体を体現することはできない」

とでもなるでしょうか。

ぼくは全共闘世代には属しませんが、

1970年代後半、第4インターが建設中の成田空港の管制塔を占拠した時分に

新左翼運動の最後の熾き火のような学園紛争を経験したことがあります。

実は、その当時のことを昨夜から別ブログ(http://ameblo.jp/episode/)に

小説として書き始めました。

よかったら、こちらにもお立ち寄りください。

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