私にとって念願のギリシャである。何としても来たかった。
参加者は29人と予想外に多人数だったから最後まで一度も言葉を交わさずに別れた方もあった。
無論、私が最高齢であるから初対面の相手は
「お幾つですか？」「うわーお若い、お元気ですねー」といって世辞を言ってくれたが、
私はもうそれどころでなかった。
何しろ普段の在宅中でも脈拍は少し動いただけで150超、
血中酸素の値は75まで下がることが珍しくなかったから、
もし私が息も絶え絶えに階段を昇る旅に出ていると知ったら
主治医はきっとこの旅を引き留めたに違いないのである。
二日目に内陸部のカランバカという町に入り、三日目からが観光の本番である。
〈ホテル付近の眺望〉
( 2 ) につづく
昨夕はアテネから帰国してそのまま銭湯に向かった。八日ぶりの湯船
のお湯に浸かりアテネの汗を洗い流した気分だった。
久しぶりに我が家に入ってベッドに身を投げ出して「うわーつかれた」
と一声あげる。
コンビニで買ったおにぎりを二つ食べたらもう何もする気になれない。
そのまま布団を被ったのだがどうしたわけか眠れない。眠いのに眠れないのだ。
こんな筈はないのにと独り言したり、用もないのにトイレにばかり立った。
雨戸の隙間から朝日が射すのを待って雨戸を開け庭を見ると
雑草は一段と伸びて中には1mを超しているのもある。
我が家の庭は肥沃なのか雑草の成長が早い。
リュックとスーツケースの中身を部屋に拡げて旅装？を解く。
形崩れして団子状になった衣類や下着に混じって
記憶にない土産や旅の装備品が飛び出してくるから楽しい。
年寄りの私のスーツケースがこんな調子だから
荷物の多い女性のそれにはもっと色々入っているだろうな。
コインランドリーで洗濯をと洗濯物をぶら下げて玄関を見回すと、
蜘蛛がもうゴルフバッグに網を掛けている。
家主(私の事)の留守を知っての仕業に違いない。素早いものだ。
廊下の隅に埃ダマリもあるし、郵便受けも郵便物で受け膨らんでいる。
八日間、家を明けると色々溜まる。今日は一日片付けと掃除に費やそう。
こんなとき相手がいる人はいいなー。俺は一人だから帰ってからも大変なのだ。
つづく