雨、24度、84%
横の長さが1メーター20センチある世界地図があります。装飾されたアメリカの地図は欲しいと思っても結構なお値段でした。売られていたのは本屋さんです。その本屋さんが店仕舞いのために安売りをしている時に買いました。半額でした。広げて見ることはできません。丸めて包装されているところに小さい地図の写真がついていてそれを見て選びます。
家に帰って広げると思っていた通りの地図でした。南北アメリカが真ん中に描かれています。日本はやや左寄りに描かれていますが、まだヨーロッパの地図よりは見慣れた地図です。ヨーロッパの地図だと日本は端っこに描かれています。丸めて仕舞って置くのは勿体無と大きさは覚悟で額に仕立ててもらいました。香港はこうした額を注文で仕立ててくれる額装屋さんが街によくあります。大きさが大きさですのでガラスではなくプラスチックの板を入れて軽く仕立ててもらいました。車で行くほどでもない距離の額装屋さんからエスカレーターを使って、小さな私が家に運びました。
家の壁という壁には私が刺したデンマークのクロスステッチの額が飾られています。ただ一面ぽっかりと空いていたのが、私のベットの前の壁でした。香港の家の壁はすべてコンクリートです。コンクリートの釘を打ち、水平を確かめながらこの世界地図の額が収まった時は、急に学生時代にでも帰ったかのように意気揚々としました。以来10数年、ベットに横になれば否が応でも眼に入ってくる世界地図です。
次に送る日本への荷物は、香港に残る主人のものを除けばほとんどすべて持ち帰ります。はて、この世界地図、額を外して地図だけ持って帰ろうか、このまま額をつけて持って帰ろうか、思案します。一旦額から外してしまえば、2度と広げることがないように思います。額に入れたまま持ち帰るのがいいのかもしれません。日本の家の壁はすべて漆喰です。額を飾るためには、梁から吊るししか方法がありません。掛けるスペースはあるのですが、この大きさです、梁の太さも考えます。今度もまた、私のベットの真ん前に掛けられる事になりそうです。
日本地図がお手洗いの壁に貼られていたのは私が小学生の頃です。中学生になると世界地図が貼られていました。少しでも地図に慣れさせたかった母の気持ちでしょう。すっかりその母の策にハマって、まんまと60近くなっても地図を見るのが好きです。
香港の家の壁から額たちが少し日本の家に運ばれました。全部外された日にはきっと寂しいく思うはずです。