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チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

映画「怒り」を観る。

2016年11月13日 | 映画

曇り、23度、85%

 日本映画「怒り」を昨日観てきました。2時間20分、すっかり映画の世界に没入してしまいました。久しぶりに観るいい日本映画でした。

 日本ではふた月ほど前に公開されていたはずです。高い評価を得ていましたが、ポスターを見ても私がわかる俳優は、渡辺謙と宮崎あおいだけです。吉田修一の原作、李相日監督の映画は「悪人」も観ています。

 「怒り」は東京、千葉、沖縄3カ所別々の話が、最後には一つの殺人事件に結びつく同時進行型の映画です。ポスターに名前を連ねる俳優さんはみなさんそれぞれに良い演技をしています。少し演技が前に出てしまう渡辺謙もぐっと控えめな演技です。殺人事件に結びつきますからミステリーなのですが、ミステリーとは感じさせない映画です。

 3カ所の話を同時に繋いでいくその手法が、車のクラクションで場面が切り替わったり、宮前あおいが渡辺謙に「これが私の好きな東方神起の曲よ。」とイヤホーンを渡しそれを渡辺謙が耳にした途端に東京のゲイパーティーの会場のざわめきに切り替わります。その切り替わりのうまさに話の流れが邪魔されません。映像が澄み切って見えるのも沖縄の青い海ばかりではありません。音楽も静かに流れています。最後のクレジットで坂本龍一の作曲だと知ります。

 日本映画は期待して見に行ってもどこかで物足りなさを感じて帰ってきます。これぐらいなら香港映画の方がもっと迫力あるなあと思っていました。飛行機の中でも日本映画は飽きてしまって別の映画に切り替えることしばしばです。俳優の誰それ目当てで行く映画もありますが、映画って話の筋立ても含めてたくさんの人で作られる集合作品です。この映画を見て思いました、この映画を強いて代表するのは、監督の李相日です。一度だけ何かのインタビューでご本人を見たことがあります。まだお若い監督です。日本の俳優さんってねえ、と思っていた私がこの映画の帰り「日本の俳優さんの層も厚いわね。」などとうそぶきます。いい映画を見終えると疲れます。幾度もいいシーンを反芻します。小さな一コマ、宮崎あおいが家を出て、松山ケンイチと一緒に暮らすため家から荷物を運び出します。小型トラックの裸の荷台に本が積まれています。その本の中に、ミヒャエル エンデの「モモ」が載っていました。この「モモ」の本は、原作に書かれていたのでしょうか。宮崎あおい演ずる「愛子」の夢見るようなおっとりした様子をあの一冊の本に見た気がします。もしかしたら監督李相日のアイディアかもしれません。

 1日経った今もこの映画を繰り返し考えています。いい映画を観た後の疲れはなんともいいものです。