僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

SF小説「ハートマン」 consutructed

2009年05月25日 | SF小説ハートマン
体温は40度近くに上がっているが、アドレナリンの放出により毛細血管は収縮し手足は逆に冷たくなっている。
ヒスタミン、ドーパミン、ステロイド、インスリン、脳の異常を感じてあらゆる免疫反応が活性化し体を守る為の防衛機能を働かせ始めたからだ。

バイオリストコンピュータは貪欲にカイラとの融合作業を進め一体化しつつあった。


ミリンダは宇宙に何が起きているのか知っていた。

シートにもたれたままぐったりとした宇宙の手を取り、汗を拭き、頬をなでながら待った。

地上では敵の攻撃はなおも激しさを増し、今や格納庫はがれきの山と化していた。スペースギアはその下敷きになりすっかり埋もれたしまっていた。
格納庫への攻撃で何度かは直接被弾もしたが、アレナックとイノソンのハイブリッド合金にかすり傷ひとつ付けることはできなかった。


宇宙(ひろし)がこの船を見た時、「そんなに厚い装甲では相当重いんでしょうね」とミリンダに尋ねたことがあった。「案外重量は軽いのよ」と答えたが、海にいる「うに」の殻のようにステレオム構造になっている事を話してなかったわ、と思った。
宇宙が目覚めた時、彼のバイオリストコンピュータとカイラスはそんなことまで共通理解しているのかしら、試してみようかしらと思った。


宇宙は産みの苦しみを続けていた。

何もできないと分かっていても、いま隣のシートでうなされ続ける宇宙を見ているのは辛かった。少しでも楽にしてあげたいと思った。


コックピットに就いて2日目の朝、タオルを握りしめたまま眠っているミリンダの隣で宇宙は目を開けた。

発熱の汗もすっかり引いている。モニターは「 constructed」の文字を控えめに表示している。
宇宙は大きな伸びをするとミリンダをのぞき込み。起こさないように小声で言った。


「カイラス、外の様子はどうなっている?」









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