僕らはみんな生きている♪

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SF小説「ハートマン」 本当のトント

2009年04月20日 | SF小説ハートマン
「あなたが本当のトントなんですね。」

宇宙は老人を抱きしめたまま尋ねた。

「いや宇宙君、それは違う。」

老人はママが昔そうしたように宇宙の背中を優しくなでながら言った。

「私は自分の分身としてトントを作った。だからトントは私だ。だが私は君のトントではない。本当のトントは君の中にいるトントだ。」

「僕の中にいるトント?」

「トントは宇宙君、君と生活を共にした。そして君のバイオリストコンピュータを作った。バイオリストコンピュータはもう完全に君そのものだ。そしてその中にトントはいる。」

「思い出ということですか?」

「いつか君のトントは言わなかったかな?トントは君が必要と思う時に現れる。思い出ではない。君と共に生き、共に考える。私が作ったのはプログラムだが、君と共にいるトントはもうプログラムではないのだ。」

「DNAのようにですか?」

「発生した種のDNAを途中で作り変えることはできない。トントのDNAは君のDNAとは別のものだ、だがお互いに干渉し合うようにプログラムされているはずだ。」


口調は違ったが響いてくる声はトントそのものだった。
公園でフウセンカズラの種を集めた日々、小川のほとりで聞いたトントの授業、地球で過ごしたかけがえのない時間が思い出され、宇宙は背中に回した手に力を入れて老人を抱きしめた。
そうすると、声は耳からではなく直接心に響いてくるような気がしたのだ。


宇宙は深い信頼と安心感に包まれて心ゆくまで老人との会話を楽しんでいた。















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