僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

ハーマンは僕なんだ

2006年07月26日 | SF小説ハートマン
僕はもう大丈夫だ。夢の中で体がどんな傷ついても、化け物のような敵に囲まれても、どうすればいいのか分かるような気がする。
隠れるのか戦うのか、説得するのか。相手の心を読んで先を推理し、自分ならこうするだろうと思うことをハートマンもしているような気がするんだ。

朝、目が覚めてから息苦しいこともなくなった。何だかいい気持だ。
言われる前にお手伝いをして、ママに「ありがとう。助かったわー。」って言われた時のようなくすぐったい気持だ。

「ねえトント、僕少し分かってきた。」
「そうですか、宇宙君。貴方はとても頑張りました。この何日かでめざましい進歩です。私がしてあげられることはもう残り少なくなりました。」

「それって僕のこの腕のコンピュータが完成したってこと?」
「はい。バイオリストコンピュータは組織作りを終了しました。細胞からの拒否反応もありません。全ての神経細胞がシナプスを全開にしてネットワークで結ばれました。脳はフル稼働に入ります。全てがスタンバイ、OKです。」

それを聞いて僕は少しうれしかった。でも少し不安もあった。


「この夢は僕なんだね?トント。」

僕は感じたことをそのままトントに尋ねた。

「ねぇトント、ハートマンは本当は僕なんでしょう?」

何度も夢を見て経験するうちに、僕はハートマンを見ているんじゃなくて、僕自身がハートマンなんだ、と思うようになっていた。


トントはしばらく何も言わずに僕を見ていた。   つづく

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