トントは突然ぼくにこう問いかけた。
「宇宙君、生命って何だと思いますか?」
僕は以前トントから教えてもらっていたDNAのことを思い出して
「自己複製のシステムを持っていること、でもウイルスみたいなヤツは違う。」
と答えた。
「そうですね、ウイルスは他人の細胞に入り込んで無理やり複製を作らせるシステムなので生命があるとは言えないですね。
でももう少し別の見方もあるんですよ。」
「そうなの?別の見方もあるの?生命って、生きてるってどうゆう事なの?」
トントは僕に玩具を見せながら言った。
直径が2㎝くらいのステンレス球が6個ブランコのようにフレームからぶら下がっている卓上の玩具だ。
オシャレなオフィスの家具コーナーでよく見かけるアレだ。
「今玉は全部止まっていますね、それじゃ宇宙君一番右にある球を1個だけ揺らして残りの球にぶつけてみてください。」
カチッカチッと球のぶつかる音がして、ブランコは左右に揺れる。
正確には揺れているように見える右の球が隣の球にぶつかった時、一番左の球が弾かれて左に飛び出す。
左の球が戻った時、今度は右の球が弾かれる。その繰り返しがしばらく続く。
真ん中にある4個の球は全く動かない。不思議な感じがする魅力的な玩具だが、物理の原則をはっきりとそこに示している。
「2個揺らすと反対側も2個揺れるんだよね、トント。」
「そうなります、楽しいですね。」
「何度やっても面白いけど、ねぇトントそれが生命とどんな関係があるの?」
僕はもどかしくなってトントに尋ねた。
「1個揺らした時、目の前にある動かない球はいくつですか?」
「4個だよ。」
「いつもですか?」
「いつもだよ。違う球になるけどね。」
「宇宙君、それです。」
トントは玩具から離れて、体を構成している細胞の話とルドルフ・シェーンハイマーという科学者が行った実験のことを話し始めた。
彼は食べ物に含まれる窒素に特殊な方法で印を付けた。
その後その食べ物が消化されどうなるか成熟したネズミに3日間だけ餌として与え実験してみたのだ。
原子の直径はおよそ百億分の1メートル(オングストローム)生きている細胞も原子で出来ているが、その直径は大体30万~40万オングストローム、もちろんどちらも肉眼では見ることができない。
そんな小さな物が集まって人間の体も草も石ころも全てのものが構成されている。
この手も足も爪も涙さえも小さなつぶつぶの集合体だ。
ところでその食べ物はどうなったか。
もちろん体内で消化されたのだが、排泄された糞も尿も血液も内臓も全てを顕微鏡で詳細に調べてみたところ、驚くべき事が分かった。
当初窒素は栄養素として体内に吸収された後エネルギーとして使われ、燃えかすとなって尿中に排出されると考えられていたのだが、実際は排出された窒素は与えられた量の30%にもならずほとんどが体内に蓄積された。
しかもその場所は脂肪ではなく、体の臓器全てに入り込んでいたのだ。
その間ネズミの体重には全く変化がなかった。
つまり食べた食物の原子は体の一部になり、いままでそこにあった体の原子は体内に捨てられたということだ。
全ての物質は空気さえもそうだが、原子というつぶつぶで出来ている。
生物は食物を体外から取り入れ、そのつぶつぶを今まで使っていたつぶつぶと入れ替えているのである。
砂丘の砂粒に似ているかも知れない。
砂丘にある砂は風により毎日移動してその姿を変えるが、全体としての砂丘は依然としてそこにある。
ただ砂丘が生命活動と決定的に違うところは、全体としての姿を全く変えずにその中身だけを毎日取り替えているというところだ。
シェーンハイマーはそのことを「ダイナミックスタイル=生命の動的な状態」と呼んだ。
「宇宙君、生命って何だと思いますか?」
僕は以前トントから教えてもらっていたDNAのことを思い出して
「自己複製のシステムを持っていること、でもウイルスみたいなヤツは違う。」
と答えた。
「そうですね、ウイルスは他人の細胞に入り込んで無理やり複製を作らせるシステムなので生命があるとは言えないですね。
でももう少し別の見方もあるんですよ。」
「そうなの?別の見方もあるの?生命って、生きてるってどうゆう事なの?」
トントは僕に玩具を見せながら言った。
直径が2㎝くらいのステンレス球が6個ブランコのようにフレームからぶら下がっている卓上の玩具だ。
オシャレなオフィスの家具コーナーでよく見かけるアレだ。
「今玉は全部止まっていますね、それじゃ宇宙君一番右にある球を1個だけ揺らして残りの球にぶつけてみてください。」
カチッカチッと球のぶつかる音がして、ブランコは左右に揺れる。
正確には揺れているように見える右の球が隣の球にぶつかった時、一番左の球が弾かれて左に飛び出す。
左の球が戻った時、今度は右の球が弾かれる。その繰り返しがしばらく続く。
真ん中にある4個の球は全く動かない。不思議な感じがする魅力的な玩具だが、物理の原則をはっきりとそこに示している。
「2個揺らすと反対側も2個揺れるんだよね、トント。」
「そうなります、楽しいですね。」
「何度やっても面白いけど、ねぇトントそれが生命とどんな関係があるの?」
僕はもどかしくなってトントに尋ねた。
「1個揺らした時、目の前にある動かない球はいくつですか?」
「4個だよ。」
「いつもですか?」
「いつもだよ。違う球になるけどね。」
「宇宙君、それです。」
トントは玩具から離れて、体を構成している細胞の話とルドルフ・シェーンハイマーという科学者が行った実験のことを話し始めた。
彼は食べ物に含まれる窒素に特殊な方法で印を付けた。
その後その食べ物が消化されどうなるか成熟したネズミに3日間だけ餌として与え実験してみたのだ。
原子の直径はおよそ百億分の1メートル(オングストローム)生きている細胞も原子で出来ているが、その直径は大体30万~40万オングストローム、もちろんどちらも肉眼では見ることができない。
そんな小さな物が集まって人間の体も草も石ころも全てのものが構成されている。
この手も足も爪も涙さえも小さなつぶつぶの集合体だ。
ところでその食べ物はどうなったか。
もちろん体内で消化されたのだが、排泄された糞も尿も血液も内臓も全てを顕微鏡で詳細に調べてみたところ、驚くべき事が分かった。
当初窒素は栄養素として体内に吸収された後エネルギーとして使われ、燃えかすとなって尿中に排出されると考えられていたのだが、実際は排出された窒素は与えられた量の30%にもならずほとんどが体内に蓄積された。
しかもその場所は脂肪ではなく、体の臓器全てに入り込んでいたのだ。
その間ネズミの体重には全く変化がなかった。
つまり食べた食物の原子は体の一部になり、いままでそこにあった体の原子は体内に捨てられたということだ。
全ての物質は空気さえもそうだが、原子というつぶつぶで出来ている。
生物は食物を体外から取り入れ、そのつぶつぶを今まで使っていたつぶつぶと入れ替えているのである。
砂丘の砂粒に似ているかも知れない。
砂丘にある砂は風により毎日移動してその姿を変えるが、全体としての砂丘は依然としてそこにある。
ただ砂丘が生命活動と決定的に違うところは、全体としての姿を全く変えずにその中身だけを毎日取り替えているというところだ。
シェーンハイマーはそのことを「ダイナミックスタイル=生命の動的な状態」と呼んだ。