ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

Google Desktopの終了とデスクトップ検索の未来

2011年09月07日 | 検索・ポータル
残念なお知らせ。「Google Desktop」が終了とのこと。あぁ、決してデスクトップ検索の分野は十分な品質を提供できているとはいえないのに…

Google、終了予定サービスを発表 「Google Desktop」や「Web Security」も - ITmedia エンタープライズ

Googleデスクトップが切り開いた世界は、「ファイルなんてフォルダで区分けして整理する必要なんてないんだよ!」ということ。それまでの僕らは、あるいは今でもそうかもしれないけれど、Wordの文書やPPTの資料を作成した場合、それをどこかに整理して保存しなければならない。何でもかんでもデスクトップに 置いていたのでは、散らかり放題、それこそどこに何を置いたのかわからなくなってしまう。

そのために案件毎であったり、お客さん毎であったり、ファイルの内容毎であったり、フォルダを作り「階層的」に分類して保存する。しかし実際のところこんなにきれいに分類できるとは限らないし、1つだけのファイルだと分類する手間の方が大変だったりする。

しかも複数人で利用している共有フォルダに保存する場合など、それぞれで分類のポリシーが違ったりする。どこに何があるのかわからなくなる。

そもそも「分類」とは暴力的な行為だ。例えば40人の学級があったとして、「男子」だ「女子」だ、「あいうえお」順だ、「身長」順だ、「成績」順だとというのは、1つの特性に基づいて強制的に「秩序」を作り出しているだけであって、決してその個人の「個性」全体を評価しているわけではない。僕らが体系的に物事を捉えるために、その個性を無視して、特定の視点で切り取っただけに過ぎない。「分類」とは本来的に無秩序な存在のものを、特定の軸に基づいて「秩序」立て、「理解」「把握」しようとするものであって、それは「支配」しようという行為と不可分のものなのだ。

そんなときにGoogleが提供したのが「Google Desktop」だ。ローカルにインデックスファイルを持つことで、どこにどんなファイルが保存されていようと、その文書に即座にアクセスすることを可能にした。インターネット検索と関連する単語やファイルの拡張子を入れて検索すれば、候補となるようなファイルの一覧を表示してくれる。極端に言えば、どこか1つのフォルダに全てのファイルを放り込んでおいても、すぐに必要なファイルにアクセス出来るのだ。

僕らは「分類」という作業から解放されたのだ。

その時はそう思った。しかしそうは簡単にいかない。確かにGoogleが提供したデスクトップ検索はそれまでのマイクロソフトが提供していたファイル検索に比べれば、雲泥の差があった。しかし、今のインターネット検索がそうであるように、検索対象が膨大になったときには必ずしも満足いく検索結果が帰ってくるわけではない。

否、この言い方は正しくない。僕らが探しているファイルに対して、僕らが思い浮かべられる「言葉」では十分な絞り込みができないのだ。これはこの「デスクトップ検索」というツールを使う僕らの問題だということもできるし、当然、それをサポートするテクノロジーの問題でもある。少なくともテクノロジーの発展を是としない限り、現代社会は成り立たないのだから。

そう考えると、このデスクトップ検索の登場というのは素晴らしい成果を残した反面、未だ不十分であり未完成の技術なのだ。

もちろんGoogleに触発されるようにマイクロソフトもデスクトップ検索の精度を高めたし、会社では個人的に使っていたりもする。しかし膨大に増え続けるメールやファイルの量を考えたとき、今のままのデスクトップ検索のアーキテクチュアでは不十分なのだ。

デスクトップ検索を使う側の状況を想像し、関連するワードを利用者が意識しないままフォローして検索できるような仕組み、あるいは同じ検索でもちいた「言葉」とその開いたファイルの「結果」との因果関係を理解し、次の検索の際にそれを加味するようなアルゴリズム、そういった更なる改善・改革が求められるのだ。しかしそんな矢先、Googleは「Google Desktop」から撤退するという…

まぁ、結局、この分野でのビジネスモデルが描けなかったというところが最大のポイントなんだろう。MSの場合、デスクトップ検索の精度の向上がそのままOSの品質の向上につながり、Winsowsへのロイヤリティの向上、ビジネス向けの新しい商材の発掘というところに繋がるのであればともかく、Googleの場合、無料でツールを提供しているという段階から抜け出すことはできなかった。ライバルがいなくなったMSが今後、この分野に力と資本を入れるとはとても思えず、そういう意味じゃ、「デスクトップ検索」というものは低迷期に入るのかもしれない。


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